本心を知って前へ進め!!
足の力が抜け、地面に座り込む。
たった今、目の前で翼が殺された。大好きなのに強く当たって、素直になれないまま時間を潰してしまった事を今になって後悔する。しかし、それはもう遅い。今になって後悔したところで翼は返っては来ない。
もう、全て遅い。
「夢だよね?こんなの夢に決まってるよね?」
美雪は呆然と一点を見つめて動かなくなった。
「そ、そん....な。そんな...こ、ことって........嘘よ。全部嘘よ!!!」
『嘘だよ』
え?
突然部屋の明かりがシャットダウンされる。
あまりにも訳が分からず慌てふためいていると、再び明が私達を照らす。
『後ろを向くのだ』
この声は山垣。何とも言えない怒りが血液を沸騰させる。
あいつらに黙って殺されるくらいなら、私は少しでも翼のために復讐をしてやる!
「山垣!私はあんたを許さなっ.........へ?」
そこには、大きなプラカードを背負った山垣さんと、申し訳なさそうにこちらを見つめる翼の姿があった。もう頭の回転が回らないです。何が起こって何がドッキリか分からない。ん?ドッキリ?は?
一回落ち着け私。目の前にはドッキリと書かれたプラカードを持つ忌まわしきクズの翼殺しの山垣さん。そしてその隣には殺されたはずの翼。すっごい元気そうでなによりです。
「......って何よりな訳あるかぁぁぁあああい!!!」
「ごめんなさい由香殿と美雪殿!!ドッキリを手伝わないと本当に部を権力を使って潰すって言われて!!しかたなく....」
「山垣さん!どう言うつもりですか!!!!」
さすがに美雪も黙ってはいなかった。滅茶苦茶なドッキリに付き合わされて、本当に怒っているのだろう。なんたって美雪も翼の事が大好きだから。
映像が途切れた瞬間の美雪の顔は本当に忘れられない。この世の終わりの様な絶望の顔だった。もちろん私もショックでへたり込んでしまったけど。
取りあえず今は山垣さんから理由を聞いて説明をしてもらわないと。
「何故、こんな事をしたんですか!?」
「それはだな...俺がこの部活を乗っ取ろうとした時の出来事だった」
ん?今こいつ何て言った?
「俺は、琴岸君と高舘君と篠山さんがアニメ研究部に居ると言う情報を聞き、急いで部室に向かっていたんだ。すると帰宅途中の運動部を見て涙を流している菊地君の姿を見たんだ。当然優しい俺は見捨てる事が出来ず話しかけたんだ。『どうしたんだい?』ってね。するとどうだい!?菊地君は俺にこう言ったんだ!『痩せるにはどうしたらいいんですか?』ってね。当然訳が分からないから相談に乗ってやったんだよ。何故必死に痩せたがっているかね....理由は君たちも痛いほど分かっているだろう?君たちに優しくしてほしい一心で.....君たちと笑い合いたい一心で!だろ?菊地君」
「ごめん.....拙者の事嫌いなのかと思って。山垣殿の考えたドッキリでお二人の本当の気持ちを知りたかったんでござる。最初は、ドッキリがバレたらお二人に今度こそ嫌われると思って断ったんでござるが、どうしてもって言って」
つまり山垣さんは、話を聞いた時から分かってたんだ。私達は翼の事が嫌いじゃないって。だから、その事を知ってほしくて、脅してでもドッキリに無理矢理参加させたんだ。私達の本心を引き出して、知ってもらうために。
「知られたからには.....素直にならなくちゃね。ね?由香」
「うん。今までごめんなさい。罵倒したり強く当たって」
「いいでござるよ。弱い拙者自身のせいでもあるから......一応痩せる事は決定したでござる」
翼の痩せた姿を想像してみると一瞬吹きだしそうになったが、初めて強い意志が見れた気がする。私達はダイエットを全力で応援するつもりだ。
「よーし!そうとなったらダイエット開始でござるよーーーー!!!」
「「おーーーーーーーーーー!!!!」」
あんな楽しそうな彼らを見ていると、部室を乗っ取るなんて野蛮な事できる訳ないじゃないか。部屋は新たに探して作るしかないな。山垣家と琴岸ファンクラブ69番の名に懸けて!!




