タイムリミット
段ボールを開けると、中には目隠しをされ拘束されている琴岸君が詰まっていた。
息苦しそうに猿轡の隙間から息が漏れている。何これ、新しい性癖に目覚めそう。
「だ、大丈夫!?今助けるからね!」
我に返り、口から滴り落ちるよだれを拭う。
何かの犯罪に巻き込まれてしまったのかもしれない。だとすれば早目に助けて事情を聞かねばいけない。いや、もしかするとこの部屋に犯人が....!?
『電話だよ~ん♪早く出ないと怒っちゃうにょ~ん♪』
私のスマホから珍しく着信が入る。
「もしもし。誰ですか?」
ノイズが乗る中から聞いたことのある声が聞こえる。この声は....
「助けて!助けて欲しいでござる!!」
全身に悪寒が走る。
「翼!?どうしたの?何があったの!?」
「や、山垣殿が!やま...」
そこで音声が途絶え、再びノイズが走る。
一人ではどうにもできない。美雪に今の状況を説明すると、最悪な事態が起きてもおかしくないと告げられた。全身の力が抜けるのが分かる。足に力が入らない。
どうして翼がこんな目に?一体山垣とは誰なのか?
記憶の奥底を漁り、山垣が誰かを思い出す。出てきそうで出ないむず痒さがイライラを増幅させる。
「山垣....山垣.....!!思い出した。生徒会長!!」
『♪~♪~』
今度はスカイプゥから着信が入る。しかし、今度はビデオ通話で相手側の姿が映っている。
人数は三人。目隠しをされた翼を取り囲むように、紙袋を顔に被った奴らが佇み笑っている。
「何をする気なの!?山垣さんは学校一の優しいイケメン金持ちボーイでしょ!?....っ!」
よく見ると、奴らの手には何かが握られている。
「菊地翼と琴岸奏汰を救いたければ、条件がある!!もし、その条件を断ったら手に持っている片刃バイトで皮膚を掻っ切るか、センタードリルで顔面にセンター穴開けんぞゴラァ!!」
凄まじい気迫を漂わせるもう一人の男と女。本当に今すぐにでも翼に危害を加えそうだ。
しかし、この男の声はどこかで聞いたことがあるような?
「今から条件を言う。お前らの所属しているアニメ研究部を俺達に譲れ!もう一つ。お前らも俺達の新たな部活に入部しろ!それだけだ」
「な、何を勝手な事をっ...」
「いいのか?お前の大好きな翼君が血を流すことになるぞぉ?」
首筋に片刃バイトを当て、挑発をしてくる。でも、そんな挑発には乗ってはいけない。私達がどれだけ必死になってこの部活を作り上げたか。奴らには分からないだろう。
だけど、条件を断ると翼に危害を加えられる。相手は山垣家、これくらいの犯罪くらい揉み消せるだろう。
「由香殿....」
小さな声が微かに聞こえる。
「由香殿....拙者の事はもういいでござる。由香殿が傷つくくらいなら拙者が代わりに傷つくでござるよ。美雪殿も、皆笑顔でござるよ」
弱弱しい声でそんな事言われたって笑顔になれる訳ないじゃない!
「時間だ。やれ」
冷めきったトーンで山垣はタイムリミットを宣告する。
「待って!!時間とか聞いてないわよ!分かったから.....譲るから翼を傷つけないで!!」
「三....二.........一!!」
片刃バイトを振りかざし、首筋に振り下ろした所で映像は途切れた。




