初顔合わせ
周りの女子からの目が怖い。皆も出会ってまだ数時間と言ったところだ。それなのに俺以外の生徒(男子)以外は全員団結して、俺を取り囲んでいる。早速イジメられてしまうのか?また、前のようになってしまうのか!?それだけは・・・耐えなきゃ・・・
気の強そうな女子が俺の机に勢いよく手を置き、顔を覗き込んでくる。まじまじと舐めまわすように、ゆっくりと。
「ねぇ。名前教えてよ。私は篠山 詩緒。宜しく」
「・・・琴岸 奏汰。宜しく」
自己紹介が終わったと同時に、地獄の沈黙時間がクラスの緊張感の漂う中に、さらにのしかかる。冷汗が頬を伝い地面に落ちる。
周りを取り囲む女子達も固まったまま動かない。誰か助けてくれ、この状況を打破するような何かが起こってくれ!
「・・・か」
篠山さんが口を開く。
「・・・・・・・か、っか・・かか」
壊れたロボットの様に震えだす。どうしてしまったんだ。もしかして、いきなり怒って殴り出すとか!?女子は男子より怖いと聞くし、女子の生態なんて俺に分かるはずも無い。今思ったら、未知の生態が周りを取り囲んでいるのだ。怖くない訳がない。
「かかかかかか・・・・・・・可愛いいいいいぃぃぃぃぃい!!」
うわっと声を出してしまった俺は、なされるがままに篠山さんに抱きしめられる。微かに感じる胸の感触が、体に走り回りむず痒くなる。
はたから見れば女子同士いちゃついてる様に見えるだろうが、俺は男だ。女の子大好き人間だ。体の火照りと興奮が尋常じゃない位押し寄せている。
「あ、あの。俺一応男なんで!離れた方がいいですよ!」
無理矢理体から引き剥がし、落ち着いてもらう事にした。しかし、あまりにも興奮し過ぎて周りが見えていない。気が強そうなキツイ人かと思ったけど、案外こんな人だったんだ・・・ゴフゥ!!!
「駄目!こんな可愛い子初めて見たわ!!私の奴隷になってくれる!?勿論、貴方が望むなら私を奴隷にしてもいいのよ!?」
やべぇよ。この女ネジが取れてやがるよ。何されるか分かったもんじゃ無い!
ガラッ
「ハーイ席に着けー。一回目のホームルームの始まりですよ~」
良かった、先生が来てくれた。この状況を打破してくれるのは、不良か先生くらいだもんな!
皆はぞろぞろと席に着くが、笹山さんは俺から離れる気配がしない。
「おい、篠山。席に着けー」
「はいはーい」
良かった、物分りはよさそうだ。
「早速だが、名前を呼んでいくから返事をするように。俺も担任をもったのが初めてだから、緊張して名前を間違えるかもしれない。まぁご愛嬌に」
中々ハンサムな顔をした先生だ。見た目から予想すると20代半ば位だろう。ややこしい先生じゃなくて一安心と言ったところか。
名前を呼ばれると生徒は小さい声で返事をしていく。やはり初対面の面々ばかりだから恥ずかしいのだろう。
「えー、琴岸」
「はい」
「篠山」
「はい」
!?
後ろから声が聞こえたぞ。まさかすぐ後ろだったりして。
振り返ると奴がいるのか!?恐る恐る振り返るとニッコリ笑った篠山さんが俺の靴下らしき物を噛んでいた。