不安と安心
今日は一日中男子達に声をかけられ、ろくに居眠りとゆっくりお昼ご飯も食べれなかった。
でも、何だか幸せだ。多分今までの学校生活の中で喋りかけられたのは数回しかないからだと思う。これでぼっちを抜け出すことができるかもしれない!
まぁ...そんな訳ないのは俺が一番良く知っている。どうせ俺を男として見ていないから。物珍しさに見に来て茶化しに来ただけかもしれない。
「帰らないの?」
不意に後ろから篠山さんが声をかけて来る。
「疲れちゃってさ。今日の事できっと女子達に嫌われちゃったかもね」
これでも俺は男だ。女子に嫌われるのはかなり痛い。
「本当に...何でこんな見た目に生まれたんでしょうね。だから..だから今も昔も皆から嫌われて...」
最後に一人になるんだ。そう言おうと思った時には目から涙が頬に伝っていた。
中学の時、高舘が居なくなってから始まった女子からのイジメ。今でも鮮明に思い出せる。でも女子ばかりの方がまだマシだと思い、このビジネス科を選んだ。共学ならまず真っ先にアウト、男子校だと何をされるか分からない。女子高なんて入れる訳が無い。つまりイジメが一番マシなここを選んだ。イジメが一番マシだと言うのもおかしい話だが、俺にはこれ以外に手はなかった。
「大丈夫...」
篠山さんはそう言うと、ふわりと俺の体を包み込んだ。
女の子特有の柔らかい体に、シャンプーの良い香り。そして優しい力加減。止まらない涙にさらに涙がプラスされた。
「もしクラスであんたをイジメる奴がいたら私が守ってあげるから。今は気が済むまで泣いて良いんだよ?」
最初の印象とは全く違う優しい篠山。キレイな篠山。そんな彼女に向かって俺は過去最高クラスに泣いた。
憂鬱になりながらも制服に着替え、家を出る。きっと今日も男子達に囲まれて無駄な一日を過ごすのだろう。
「私が守ってあげる.....か」
昨日の出来事を思い出し少し恥ずかしくなる。きっと何人かに俺の泣き声は聞こえていただろう。
学校に着き下駄箱を開ける。すると中からラブレターがどさどさと雪崩れてきた。そして、それを見たクラスの女子達が嫌な顔で俺を睨みドスンドスンと音を立てながら立ち去っていく。
朝から気分が悪い。でもラブレターは全部カバンに突っ込んだ。彼らの気持ちを捨てる訳にはいかない。
「ハァ....」
溜息を漏らしつつ教室の前まで行くと地面に昨日の男子達が倒れている。
「何だよこれ!?」
視線を別の所に移すと、俺の机の傍で仁王立ちしている篠山さんの姿があった。
「もしかして?」
「貴方は私が守る」キリッ
どうしてこうなった。