高級創作料理店
落ち着きを取り戻した先輩は、お詫びの印として普段は入れないような高級店に招待してくれた。
店の門構えは素晴らしく、扉の横には『一見様お断り』の表札が立てられており、ただならぬ雰囲気を放っている。
恐る恐る敷地内へ入っていく姿を先輩に笑われたりしたが、一般人の庶民たちは絶対こうなるって!住む世界が違い過ぎる。
「先輩、本当にいいんですか?値段の所が全て時価になってるんですけど」
「気にする事ない。俺を誰だと思ってるんだ?」
ですよね...あれだけ大きな家に住んでたら、これくらい平気かもね。
完全個室だけの風情のある風景に和室という最高の場所で、最高の料理を食べれるとは思ってもいなかったため、気分が上がっている。
二人っきりの個室。完全に何かが起こる。アニメや漫画なら何かが起こり発展する。
先輩なら何かしそうだとか頭の隅で考えたりするが、ここまで良い事をしてくれているんだ。そんな邪念捨てよう。
「さぁさぁ、食べたい物があったら言って。俺がこのボタン押すから」
いざ食べたい物を探してみると、意味が分からない食べ物ばかりだ。「アワビの山岳風焼き」や「キャビアの爆盛りチョチョレーゼ」など。チョチョレーゼって一体何だ!?山岳風って何だ!?使われる材料が全く分からない。しかも、やたら品数が多い。どれを頼めばいいのだろうか。
「早く決めてね。お腹空いてるからさ。早く、早く決めてね。決めたらボタン押すから。俺がボタン押すから」
そんなに急かされても決めれない!どれだ...美味そうな食べ物はどれだ...
「あ、我慢できない」
先輩は勢いよくボタンを手に取り連打する。その快感に浸っているのか、満面の笑みを浮かべている。
「もしかして先輩って∞プチプチとか好きですか?」
「懐かしいな。すっごい好きだよ。色違い全部持ってるからね」
一時期流行ったけど、ここまで好きな人がいるなんてな。
ガラッ
「すいません。迷惑行為になりますので止めてください」
丁寧に、浴衣を着た従業員に怒られテンションが一気に下がった先輩は、小さい声で「鮪のボチョムキン炒め」を頼み、震える手でコップを掴み水を口に含んだ。
「じゃぁ...小金鶏のボイル焼きで」
「かしこまりました」
一礼をし、従業員が立ち去ったことで再び二人だけの空間ができる。
どうしよう。何か話題をふった方が良いのだろうか?そう思った時、頭に先輩についての疑問が浮かび上がった。
「先輩ってどうして工業科に入ったんですか?」