3-1 衛士槍-Spear-
「さてさて~今日はお城にお出かけだねぃ♪」
珍しく上機嫌なファン。それもそうだろう。いきなりお城から衛士槍-Spear-の
大量注文を受けたのである。
「これだけ売れたら、結構になるね~♪ね、マール♪・・・っていないし」
マールがいない。いつの間にか外で1人の騎士と話をしていた。
「マール?どなたかしら?その騎士さま・・・」
「あ、この店のオーナーであるファン=ファーレン様です」
さ、ま?
「こちらは王城歩兵隊の隊長のアリュール=ワグナー様です。ファン様」
さ、ま?
「ご用命だった武器は間違いなく夕刻までに納入させて頂きますゆえ、ご安心を」
ゴアンシンヲ
「うむ。お主は若造だと思っていたが、さてはて。なかなかの商売上手じゃの」
ショウバイジョウズジャノ
「いえいえ。またご贔屓になさってください。それでは後ほど」
ゴヒイキニナサッテクダサイ
騎士が馬に跨って颯爽と王城に向かう。いったいどうなっているのだろう?
「ちょっとちょっと!どういうこと?あの騎士は誰?」
ファンがマールに詰め寄る。
「ほら、以前海賊をやっつけた騎士様だよ」
「ああ、あの」
「あの後、あの騎士様に武器を買いに来たって忠告しに行ったんだ」
い、いつの間に・・・
「そしたら、お主は武器屋か?ちょうどよいってことになって・・・」
・・・ってことはなに?この衛士槍を売ったのはマールのおかげってこと?
「じー・・・・・」
「ど、どうしたの?ファン」
「あんた・・商売上手よねぇ・・・」
「そ、そうかな?」
「うん・・・」
「それより衛士用槍って数あるのかな?20本だけど・・」
「あ、それなら大丈夫♪歩兵槍と違って在庫大量だし♪」
「歩兵槍も矛も揃えておいたほうがいいかも・・・」
「売れるかな?売れるといいな♪」
衛士槍と歩兵槍とでは見た目が似ているものの刃先の材質が異なる。
衛士槍の刃先は一般に鋼だが歩兵槍のそれは鉄で、柄の後端部分には
固定用の金具がついている。
「ちょっと仕入れに行ってきます」
馬に飛び乗って疾風のようにいなくなる。
あの子はいつか大商人になるだろう・・そのときに傍にいられたらいいな
ふとファンは思うのだった。