1-5 細剣-rapier-
「ね、ね、もし女性とか非力な人が剣を使うとしたら何がいいの?」
マールが不思議そうな顔で尋ねる。王都から少し離れた
片田舎に住んでいたのである。マールが武器のことについて
無知でも当然だった。
「そうねぇ・・用途にもよるけど、細剣-rapier-とか刺突用の
フルーレ-fleuret-、エストック-Estoc-とかも使われるかな。
エストックの大きいものは男性も使うけど」
「へええええ」
「細剣は小剣と同じように薄い両刃の剣がついてて、少し実戦
向きにはなってるかな。動きの素早い剣士に使わせると優雅
でいて恐ろしい凶器にもなるよ。フルーレはリングメイルなど
のような鎖で出来た鎧にとても有効で、鋼で出来たエストック
だと安い甲冑鎧も貫くことが出来るからね」
「こわああああ」
「でも、高価なのよ。鉄で作るんでもいいんだけど、普通は鋼で
作りたいわね。刀身が細くて、敵に力任せに斧とか振り下ろさ
れたら、そのままポッキリ折れてしまうかも知れないからね。
安価に作ろうと思えば作れないことはないけど、冒険者向きに
安価で作るような剣じゃないしね・・」
「ふぅぅぅん」
「ただ、手入れは簡単よ。何せ細いし、研ぐ面も少ないしね。
冒険用に作るのなら鋼で高価に作るんだけど、軍隊が使うなら
安価にも出来るから、戦場で見かけることもあるしね」
「でも、僕にはちょっと違うよね・・?」
「あなたが細剣とか振り回してたら、女の子と
勘違いされちゃうわよ?いいの?」
「う・・それは><」
「ふふ。そういうこと」
午後のうららかな陽だまりが店の中を照らしている。
ファン=ファーレンのお店も少しずつ整理が進んでいた。