1-2 片刃剣・刀-Blade-
「こっちは『片刃剣』ね」
続けてファンが見たこともないような剣を見せる。
きれいな刀身がキラリと光っていた。
「これは片刃剣-Blade-。片方だけに刃がついていて、いわゆる
よく斬れる包丁みたいな感じね。柄と刀身が異なる材質で
出来ているものが多くて、柄頭って分かるかな?柄の端、
グリップエンドが普通は無いものが多いの。日本刀とかがそうね」
「へ~すごい・・よく切れそうだね」
「ん~でも欠点も多くて、いわゆる金属甲冑や鱗状鎧の敵を斬ろう
としても、刃が立たないわ。達人になれば金属の継ぎ目を狙って
斬ることが出来るらしいけど、マールには無理ね」
ファンが意地悪そうな笑みを浮かべる。
「しょんぼり・・・」
「あはは。材質は刀身が鉄~鋼で、柄は木製であることが多いわね。
鉄だと錆びやすいデメリットが大きすぎて手入れが大変。
鋼だとまだマシだけど、それでも人や怪物を『斬る』ことを目的と
しているから、両刃剣に比べたら入念な手入れが必要だからね!」
「はーい!」
「片刃剣を置いてる店はうちくらいじゃないかな・・ほとんど
売れないし。冒険者向きじゃないのは手入れが大変なのと、
海賊や蛮族のように甲冑を着ていない敵や装甲の薄い怪物相手
じゃないと役に立たないからね。
その代わり、そういう敵相手だとほとんど一撃で致命傷を
負わせることが出来るし体重の軽い女性や子供でも敵を倒すこと
も可能だわね」
「へぇ~大変なんだね」
「刀身が錆びないように、鞘とセットにしてあるのが普通ね」
ファンは笑みを浮かべながら、鞘に片刃剣をしまう。
「これで良し・・・と。まぁ売れないからこれは奥に
置いておきましょうかね」
ファンがぱたぱたと奥へ向かう。包丁の代わりに使いそうな気が
するとは口が裂けても言えないマールだった。