表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/25

5-5 クリス-Kris-

 ひょんなことからレドリックとマールは2人で王都の南の

沼地に現れるという大アリゲーターの退治に向かうことになった。

いきさつはこうだ。


「知っているか?王都の南に大きなトカゲに似た生物が現れ

 何人もの被害が出ているらしい」


―ここはいつもの穏やかな陽気に包まれたファンの店。

そこに黒尽くめの衣服を纏った男と歩兵隊隊長アリュールが

マールと3人で話をしている。


「ほう・・それは。退治しなければならないのではないか?」

レドリックがアリュールに尋ねる。この2人はどうやら知り合い

同士らしい。


「うむ。これ以上の被害はさすがに出せないからな」

「報奨金が出るならば退治に行っても良いぞ?」

レドリックがアリュールに向かって言う。どうやらレドリックは

怪物退治を生業としているようだ。


「ほう。お主が行ってくれるならば心強い。報奨金については

 わしから王に直接かけあってみよう。ただ1人ではつらいかも

 知れぬゆえ、わしの部下で腕の立つものでもつけようかの」


「それには及ばんよ。マール、お前確か冒険者志望だったな。

 どうだ?俺と一緒に大トカゲ退治とやらに行ってみんか?」


いきなり話を振られるマール。目を輝かせながら横で話を聞いて

いたのだが、いきなりの展開に目を丸くした。

「行きます行きます!!」

「よし決まったな。とりあえずは偵察がてら行ってみて、

 人数が必要だったら再度アリュール殿に報告するとしよう」

「うむ。わかった。もう、すぐに出発するのか?」

「ファン!マールを少し借りていいか?」

「・・・はい」

ファンはあれ以来ずっと複雑な思いに駆られている。

今も何かしら考え事をしているようだったが、レドリックの

問いかけに生返事を返していた。


「よし、ではすぐに行こう。マール、準備するものを言うから

 それをすぐに準備してくれ」

「はい!」

「おっと・・マール、これをそなたに授けよう。どこかで役立つ

 かも知れぬ。」


やけに柄の短い短剣。いや、短剣というよりは小さめの小剣の

ように見える。そして最も奇異なのは、その刀身が炎のように

波打っていることだ。

「フランベルグ-Flamberg-・・ですか?」

「いや、それはクリスだ。その刃で斬られたものは刀傷が治り

 にくい上、傷から毒素を取り込んで病になると言われておる。

 人間相手に使うのは気が引けるが、怪物相手なら良いだろう。

 お主にはそれを前報酬としてやろう。もちろん倒したならば

 さらにちゃんとした報酬も用意しておく」

「もったいない・・ありがとうございます」


 フランベルグに似たこの短剣クリスはなんと硬鋼で出来ている

ようだ。硬鋼でこのように刀身を波打たせるのは至難の業だろう。

少なくともその辺にある長剣20本以上の価値があるに違いない。


「さて、行くか」

準備が出来たマールを見届けてレドリックが声をかける。

「無理はするな。いざとなればすぐに帰ってこい」

アリュールが2人に声をかける。あくまで最初は偵察だ。

無理をして2人に何かあってもいけない。


 ファンはそんな様子を見ながら、だんだんと不安になって

いっていた。レドリックがいるから大丈夫だろうが、マールに

とってはほぼ初めての冒険だろう。心底、心配でたまらなくなる。


「そんな顔をするな。大丈夫だ。俺がついているからな」

そんなファンの心を察したのだろう。レドリックが笑いながら

ファンの顔を見る。

「お前の大切な旦那はちゃんと無事に帰らせるさ」


そう言われてはっとする。夫婦だと思われているようだ。


「さて、いくぞ!」

2頭の馬が南に向かって駆けていく。あっという間に2人の姿が

見えなくなっていた。


「心配しなくても良い。レドリックに任せておけば大丈夫だ」

アリュールが心配そうに2人の後を見つめるファンに声をかける。


 ただ無事に帰ってきて欲しい。そう願うファンであった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ