表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/25

5-3 投げナイフ-Throwing Knife-

 「ち・・・思ったより数がいやがる」


独り言を呟く。コボルドの集団を尾行して巣である洞窟

を突き止めた。最近、近くの村に出没してるという

コボルドたちだろう。

日中から活動しているのは珍しいことだが

数さえいなければどうにでもなる相手ではある。


 報酬は十分もらっている。家畜の豚や鶏、ときには

赤子をもさらうというこの小鬼どもを野放しにはできない。


 巣に戻ったところを一網打尽にする予定だった。


しかし巣に戻ったコボルドたちは予想と反して興奮している

ように見える。奇声をあげて、洞窟の中に入って行った。


「どういうことだ・・?」


黒尽くめの男―レドリックはコボルドたちの不可思議な様子に

首をひねりながら後をつける。


コボルドたちは明らかに何かに警戒・・そして歓喜していた。


自分たちの帰還に歓喜している、というのは変だろう。

そして巣に戻ったというのに背後に警戒がほとんどなく

自分たちの巣に向かって警戒しているのだ。


何かがある。そしてその何かが何かは分からないが

コボルドたちは完全に背後への警戒を怠っている。


「チャンスだな」


レドリックは一瞬だけほくそ笑んで独り言を呟く。

そうして、コボルドたちとの距離を詰めていった。


 全く警戒されずにコボルドたちの背後に忍び寄る。


右手に長剣、左手にソードブレイカー。

数さえ注意すれば取るに足らない相手のはずだ。


背後に警戒のない最後方のコボルド2匹に長剣を振るう。


長剣の斬れ味はコボルドを屠るのに十分だった。


コボルドの甲高い鳴き声が辺りに響く。奇襲に近い形で

背後から攻撃できたのは幸運だった。


 コボルドの注意がこちらに向いて態勢を立て直そうとしているが

レドリックは構わず剣を振るっていく。


ソードブレイカーでコボルドの錆びた剣を受け止め、

1匹、また1匹と長剣がコボルドを打ち倒していく。



そのときだった。


不意に奥から人影が現れる。


まだ20歳前後だろう若い女性。


レドリックはすぐに状況を飲み込む。この女性がなんらかの

事情でこの洞窟に迷いこみ、コボルドがそれを察知して

警戒をしていたのだと。


女性は手に短剣を握り締めてどうするか決めかねているようだ。


「退け!この場は任せろ!」

レドリックは女性に向かって叫ぶと同時に近くにいたコボルドを

血祭りにあげる。


 コボルドは完全に混乱していた。

なにせ黒尽くめの男が次々と味方に襲いかかり、

14,5匹はいた仲間はもう5,6匹しか生き残っていない。

いつの間にか背後にいて、奇襲を受け、混乱に乗じて

次々と倒されていったのである。

死神のような黒尽くめの男に。


 男に向かっていくのは不利だと悟ったのだろう。

コボルドの1匹がファンに奇声を上げながら向かっていく。

ファンの目の前まで迫ろうとしたその瞬間、

コボルドの後頭部にはナイフ-Throwing Knife-が突き刺さっていた。


「ふぅ・・」

村人からの依頼を完了したレドリックは小さく息を吐いた。

14匹のコボルドは屍となって洞窟に転がっている。

数がいたから少し時間がかかったものの、

奇襲が出来た時点でほぼ依頼は完了したも同然だった。


「あの・・ありがとうございます」

女性が声をかけてくる。

「ああ、無事か?どうしてこんなところに?」

「つい・・入り込んでしまって」

「まぁ無事ならよかった。家まで送ろう」

「はい。ありがとうございます」


ファンとレドリックは王都への道に向かう。

これが2人の最初の出会いとなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ