4-4 戦槌-War Hammer-
王都の一画にある教会。
白い薄絹のドレスに身をまとった新婦。
その表情は新しい門出に対する期待と喜びでほころんでいる。
「きれい・・・・」
ファンはうっとりして新婦を見つめる。
薄絹のレースが風に舞ってひらひらとたなびき
新婦の美しさをさらに映えさせていた。
わたしもこんなドレス着てみたい・・・ファンは自分もいつか
こんな素敵な結婚式をして素敵な新婦になりたいと願いながら
ちらと横のマールを見た。
「ね、マール。きれいだよね」
「うーん・・・」
マールは歯切れが悪い。
「新婦さん、きれいじゃなかった?」
「いや・・シンプさんのほうが・・・」
「??新婦さんがどうしたの?」
「どうして、あんな大きい戦槌を結婚式の最中なのに持っているんだろうって」
「???」
「ほら、あのシンプさん・・片手に書物を片手に戦槌を持ってる」
「ああ・・神父さんね」
語韻が同じだから紛らわしい。
「あれは、結婚生活を阻む者を左手の聖なる書で追い払い、
右手の武器で打ちのめす、という意味があるらしいよ」
「へ~~」
「戦槌ってところが刃物を嫌う教会らしいよね」
「そうだね・・ファンならさしずめ、左手で短剣、右手で戦斧を
持ってそうだもんね!」
「・・・・どういう意味かしら?マール」
マールは強い殺気を感じる。ちょっとした冗談だったんだけど・・・
「ちょっと無事に帰れるなんて思わないでよ?」
聞くが早いか、マールは脱兎の如く走り出す。
「こらあああああああ!まてえええええええ!」
怒りに燃えた瞳で追いかけてくるファン。
このあとマールがどんな目に遭ったのか、想像に難くない。