表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

3◆青いワンピースの女

あるマンションの14階に住む男。彼は、ベランダに出てタバコを吸いながら缶ビールを飲むのが習慣だった。その日も、ひとり星空を眺めながらタバコを吸っていたのだが… ◆サイトからの転載です。


とある1DKマンション。

その14階に住む男がいた。



『ごめんね。

貴方が運命の人だと

思ってたけど


もっと好きになれる人が

他に居たの…』





はぁ…。


せっかく指輪の注文

してきたのによ。



あんだけ『好きだ好きだ』

言ってきてたくせに

ソレはねぇよな…。


思わず本気になる

ところだったぜ。

俺としたことが。



…いや、指輪注文しようと

思った時点で

もう本気だったな、俺…。




元気なく帰ってきた男は


部屋の壁ぎわにある

二人掛けソファーの

真ん中に座ったまま

灯りもつけずに

放心していた。



しばらくして

切れていたスイッチが

突然入ったかのように

立ち上がり


冷蔵庫から缶ビールを

取り出し

煙草と灰皿を持って

ベランダに出る。



そっか…。もう、中で

ガンガン吸ったって

『部屋が臭くなる』って

文句言われることも

ないんだな…。


この景色見ながら

タバコ吸うのも

嫌いじゃなかったけどな…。



ビールを開け、タバコの煙を燻らしながら


遠くの星空を眺めたり


少し離れた向かい側にある

オフィスビルを

見るともなしに見て

いたりした。




もう、真っ黒なシルエット

にしか見えない

灯りの消えたビル。



非常灯だろうか

各階の同じ位置に

小さく光る

青緑色のランプが


そのビルの大きさ、

そして夜の暗さを

より強調している。





ふっ…、と

ビルの上のほうを見ると

屋上に、人らしき影。



青いワンピースを着た

若い女が、

所在なげに屋上の柵の

外側に立っているのが


少し距離があるにも

関わらず

この夜の闇の中、何故か

ハッキリと見える。





おいおい…。

ヤベェとこに

立ってんじゃねぇよ。



飛び降りとか、頼むから

やめてくれよな。


ただでさえ俺今、

小さなハートが

傷ついてんだからよ。



だが、嫌な予感は当たり


一瞬後、女は

ためらいもなく

そこから飛び降りた!



「ぅわっ!ちょっ

マジかよ!」


驚き、思わず目をつむり

顔を反らす。



次に聞こえてくるであろう

聞きたくない「音」に

耳を塞ぎ、身構えていたが




「・・・・・・?」




いつまで待っても

何の音もしない。



おそるおそる

ベランダの柵から顔を出し

向かいのビルの下の方を

見てみるが



いくつかの低い街灯が立ち

そこそこ照らされている

にも関わらず


その地面には、

死体どころか

女の影形すら見えない。





あれ…。



何だったんだ?

俺の見間違いか?


いやしかし、

あんなにハッキリ

青色のワンピースとか…。





そう思いながら

もう一度さっきの

屋上を見上げると



そこには、ふたたび

青いワンピースの女が

立っている!



そしてまたも

その足場の端から

舞うように飛び降りた!!






…が、今度は


その体は空中で留まり



そして その顔を

クッとこちらに向け


男の目を見つめたまま

真っ直ぐこちらに向かって

猛スピードで飛んでくる!




「ぅわあああ!来んな!

来んなよ!」




驚いて、思わず

あとずさる男。



しかし、女の体は

もう少しでベランダの

柵に届くというあたりで

ピタッっと止まり




男の顔を見つめたまま

真っ逆さまに、

下へと落ちていった。






ド サ ッ !





今度は

周り中に響くような

大きな落下音が聞こえ


驚いて出てきた

近隣住民によって

発見される、

血だらけの体。


悲鳴とざわめきの中

救急車が到着するが






…その「男」は

もう息を引き取っていた。




そして、

14階のベランダからは



青いワンピースの女が

ニッタリと笑いながら



その光景を、見下ろしていた…。








†††

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ