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syNchronIcity-tHe It's Lost-prIoriTY  作者: Vanargand
死神の依頼編
4/5

報告3.俺を見る目





「戦うにはまず武器かな…」


 化け物が前足を天に掲げ、俺に向かって素早く振り下ろした。常人ならば一瞬の事であるそれは、地面にあった雪を獣の足の形どころかクレーターを造り、更にそれによって吹かなかった風は吹き荒れ、それによって粉雪は舞う。

 俺は強化された動体視力と脚力で大きく右に避けた。


…考えてたのとは避ける距離が長かった気がするが…どうでも良い。


 戦う手段は有る。それは【存在】の消す力を使い、一気に決着をつける事。


 だから、他の方法を考えた。

 その方法はとても面白くない。


 それは生前使っていた武器を再び使うことだ。


 使う事には異論は無い。ただ人に見られていないか心配だ。


 オーバーテクノロジーかもしれない。過ぎた物は意味を成さない。


 化け物がその白い体躯を翼も無しに宙に浮かせ、8階建てのビルと同じ位に上昇した。


「ちょっ!それは反則だろ!」


 翼も無しに空を飛ぶとは彼の元居た世界では無理だし、この世界でも変わりは無いだろう。


 だが、その理を化け物はそれを無視した。


「どうなってやがる…」


 化け物は俺を上から頭を下げながら見る。あの目は狩る目だ。

 長年培った経験がそう告げる。


俺を食う気か!?


 化け物は俺に向かって急降下を始めた。


「クソッ!」


 白く積もった雪原を生前より速いスピードで駆け抜ける。

 だが、それでも化け物にとっては遅かった様だ。


 振り返ったときには既に、大きく開いた口が眼前にあった。


「チッ!」


 頭を下げその攻撃を避ける。

 翼の無い化け物はまた上昇した。今度はビル5階分だ。

 攻撃するなら今準備するしかない。


 そう思い背中へ手を伸ばし、慣れた手つきでFN FALを取り出した。こいつは昔某国の任務を成功させた時に報酬の一部としてもらった物だ。ただ、俺がやっていた任務には邪魔な存在だった。死ぬ直前までやっていた任務は新兵の訓練、前線での戦闘という内容だった為、必要だった。…結局使わなかったが。子供の前だったし。

 思い出した。今こんな事を考えてどうする。


 そんな感情を振り切り、照準を定め、発砲した。


当たったな。


 射撃には自慢では無いが自信がある。その証拠に化け物に向かって行った光の弾が見えた。


 どうやら本当に当たったらしい。化け物が体勢を前のめりにそのまま落ちてきた。


「ここに落ちて来なくて良い!!」


 俺に向かってまた急降下。狙ったかのように落ちてきた。


「おおぉぉぉぉおぉ!!」


 走ってそこから逃げる。影は太陽の光を遮った。


……ひらり


 化け物が上昇を始めた。


 影は俺にかかり思わず振り向いた。


「あっ、生きてましたか」


 ひやりと汗が流れる。


まずった!


 FN FALから再度弾を発射する。


 敵に向かって行った弾は確実に当たり、化け物を刺す様にすり抜けて行った。


「あっそうか…こいつ反則なんだ」


まったく。これでは一方的に殺されるのを待った方が早い。


だけど、そうは思ったけど殺されたくないので倒すのを選択するとしよう。目には目を、反則には反則を、だ。


「んじゃ【存在】(俺)の力、お披露目するぜ?化け物」


 化け物は何かを感じたようだ。後ずさる。

 【存在】が化け物を黒々しい闇で覆う。

 化け物は闇から抜け出そうとするが、もがけず闇が覆った直後の体勢だ。

 俺は一気に優位に立てた事に興奮したが、そんなのは一時のものだった。

 感情が流れ落ち、無表情になった時、宣告した。


「そのまま潰れろ。化け物」


 闇が収束を始め、一瞬の内に点になり消滅。実体の無い化け物が姿を消した。

「……戦闘終了だな…」

「そうだ…化け物の事なんて言ってなかったぞ。創造神アイツ…」


 PDAを取り出し、文句をつける為通話機能を呼び出しそう。と思っていた矢先に、『You Get Mail』とPDAが震えた。


「ん?メール?」


 訳の分からないまま画面にタッチする。


 メールの内容はこうだった。創造神の野郎からだ。


『魔物の事言うの忘れてたww(´・ω・)スマソ』


 PDAが軋む音で冷静さを取り戻したのはその数秒後だった。


……

………



 あの後、直ぐに通話機能を呼び出した。通話機能が神のいる世界と俺がいる世界の壁を飛び越え奴に繋がる。

 AutoMagⅤcustomを取り出し、一発撃った。

 この銃は義父から貰った。よくジャムったみたいで呆れた俺が改良した銃だ。だが、ジャムる確率は高いだろうな。

 銃声が辺りに響き渡り、森から鳥が羽ばたく音が聞こえた。


『おわあぁぁぁぁあぁ!!!』

「ふっ…心底驚いてくれてありがとう」


楽しい。これから起こる事は不可解なものだらけだ。




………

……

……

………




「あいつ…なんなの?」

 私が居るのは雪が降りしきる森の木の上だ。太い枝が私を支えている。


 召喚獣を闇と共に消え去った。


「召喚獣に干渉できる魔物…?厄介ね…」

 あいつと言うのは目線の先に居る化け物。人に見えるが違う。この大陸の魔物は色つきが多く、その多くが黒いのだ。

 魔物は世界で唯一従えることができない生き物。

 それにこの世の理を無視した別次元の獣…召喚獣に干渉できる魔物は世界にとっては無視できない存在だ。

 だから、例え人の形をしてようと油断はしてはならない。なぜなら、全身黒い。絶対に怪しい。


「直接叩くしかなさそうね…」

 そう呟いた私は黒い頭をした人型に気配を殺して近づいたその時だった。


 バァン!


 聞きなれない音がしてバサバサと鳥が音を立てて森から飛び立つ。

人型が何かしたな。


そういえば似たような物も私の召喚獣のときも使っていたな…


 私は人型…姿から見て男か…が持っている長い物…殴られたら痛そうだ。剣かもしれない…と手に持っている物…こちらは短刀よりは大きいかもしれないが切り難そうだ…に注意を向けた。というか剣なのか?些か疑問が残る。


 私は警戒しながら私“だけ”が扱える得物を手に召喚した。


「よく見れば…魔物じゃない…!」


 東国(ジパング)の者かもしれないと思いつつ、めんどくせぇと言って倒れた男に一気に近づいた。


………

……

……

………



 俺はPDAをコートの右ポケットに入れると思案を開始した。


「ん~、どうしようかな~行く当てすらないじゃないか…ってか地図ぐらい持たせろよ…めんどくせぇ…」


 その場にバサッと倒れ込み、空を見上げて更に思案しようとした。


影?


 ジャキンッと音が鳴り、首に何か熱い物が触れる。


「答えろ、何者だ」


 淡々と語る女。彼女は誰だ?だが、そんな質問をしたら痛い目を見そうだな…


「……ふん…レン・ミラーだ」


「それでここで何をしていた」


「なんだ?ここに居ちゃいけなかったのか?」


「質問に答えろ!」


 彼女が何をしたのか知らないが不意に周りの温度が上がり、雪が解け始めた。


これが魔力か?それも火系の魔法か?


「…そう怒るなって…てか…なんだ?その剣」


 目線の先には彼女の持つ大剣が火を噴出している。彼女の怒りが正に具現化されていると思った。


「と…すると…それ魔法か?」


「そうだとしか言えん。さっさと私の質問に答えろ」


「嫌だ…て言ったらどうするつもりだ?」


「焼き殺す」

「魔法で?」


「そうだ。だからさっさと私の質問に…!?」


 俺は右手を大剣に近づけた。熱いがあの拷問の比ではない。


「お前は馬鹿か!?」


あーあ、逃げちゃった…


「なんで死に急ぐ!?」

「はぁ!?」


別に死に急いでる訳でもない。ただ周りがそう見るだけだ。


「この剣に一瞬でも触れてみろ…死ぬぞ」


触ったぐらいで吸収の体質はその魔力を吸うから、結果的に俺は死なない。しかも、その剣を人に振ったことがあるのか。彼女は…。


「で?」


 俺は立ち上がった。


「今明らかに分はこちらにある」


 そう言って俺はAutoMagⅤcustomを胸ポケットから取り出し、彼女の頭に狙いを定めた。命の取引は俺が握る。


「剣では無いのか?」


「ん?…答えろって言うのか?」


 生き残るには銃を向けろ。そして、撃て。


「んじゃそんな訳で」


 躊躇無く撃った。


……

………
























「次は外さない。名乗れ」


 男は異常なまでの殺気を放つ。いままで感じたことの無い位の殺気だ。身体が震える。


 震える身体を強く抱きしめ、気持ちを落ち着かせる。






「…ジナイーダ・エルツォン=アルカディア、だ」






 偽りを名乗った。

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