報告0.ある従業員の死
黒々とした空に浮かぶ黒雲は雪に成りきれず堕ちてくる雫を地上に落とした―――
走るしかない。
とにかく走って走って、走り続けなければ。
死ぬ…
冠城 蓮。冠城はカブラギと読む事を記載する――
まだ着かない…あの子の元へ…動け、俺の足!
彼はまたの名をレン・ミラー――
アメリカ海軍所属のシロウ・ミラーの養子である。
くっそッ!もっと早く動け!
「お兄ちゃん…」
18歳。右利き。日本出身、アメリカに在籍。私生児で、児童養護施設に居た。先天性白皮症である――
「クッ来るなッ!」
先天性白皮症だが――目は右目2.0以上。左目2.0以上。眼球振盪、斜視、乱視、近視、遠視共に無し――色は一見すると赤色である――
極めて珍しい症状である――
手!――届け――足!――もっと動け!
「うあぁぁあぁぁ!!!」
必死に手を伸ばす。目標はこの村に来て良くしてくれた小さい少女。
邪魔な物は全て排除するッ!
5歳の時に情緒障害を患う。原因は施設の子供による虐めである。10歳にはシロウ氏の教育により影すら見せない程、完治する――
邪魔だ…
俺は銃を邪魔する物に向かって撃つ。それだけで物は赤く汚い物を散らせながらその動きを止める。
「グレネード!」
グレネード!?混乱に乗じて俺ごと殺す気か!
少女を突き飛ばし屋外に出す。外は敵だらけだが俺が教えた通りの道を進めばこの残虐な包囲網は突破できるだろう。
…あの子を最後まで守れないのが心残りだ――
俺の感覚は爆発の音、痛さを届け、死んだ。
意識はまだ死んではいない。
「ターゲットを発見しました隊長!」
見つかったか…
俺の神を引っ張り悪者顔でこちらを見る。
「あの契約は嘘だったのか?」
冷えた目で彼を見る。
「嘘…吐いてねぇ…」
嘘は吐いていない。俺自体が嘘だからな。
「じゃあ、死ね」
言葉(宣告)が終わる。銃を向けられる。
「さっさと…しろ!」
IMI Galilの音が一回だけ鳴り響いた。それは訓練してくれたレンへの手向けだった。
白い鴉と呼ばれたレン・ミラーは今年の秋、中東の軍部に潜入。その際の脱出の為のヘリが撃墜され、脱出不可能になった。そして、その最中、裏切り行為がばれ、XXXX年、秋、作戦中、一発の凶弾により死亡。我が国に献身した一生だった。
報告なんて書いてありますが報告なんかしてません。なんとなくです。
(´・д・)y-~