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海月に毒が無かったら  作者: 海月
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1,君と僕が出会わなければ

あの時、自分が違う行動をしたらどうなっていたのだろう?

そう思ったことはないだろうか。

あの時あの子に告白しておけば良かった。

あの人にもっと会っておけば良かった。


だが、やらない後悔よりやって後悔した方が良いという言葉は存在するが、

果たしてそうだろうか?

知らなければ大切な友情が壊れることはなかった。

知らなければあの人の秘密を知ることはなかった。


果たして知らないで後悔する事と、知って後悔するのでは

どちらが良いのだろうね


君と僕が出会わなければ、どんなに楽だったのだろうか。



あの日、君と出会わなければ

僕は何も知らずに生きられたのだろうか。



今日はいつもよりも暑くて、太陽が僕の肌を焦がしていた。

ジリジリと焼き付ける太陽を鬱陶しく思いながら学校に向かっている最中、波の音が静寂な間を埋めるかのように鳴っている。波の音にすら憎悪を抱く。静かに苛立ちが立つのも暑いからなのだろうか。

僕は、僕は暑さのせいにして、現実から逃げている卑怯者なんだ。

周りから嫌われていることも、親不孝者な事も、全部分かっているんだ。分かっているけど、認めたくなかった。認めたら負けだと、そう思ったから。殴られても、虐げられても、僕が悪いから。僕が悪い子だからそうなるんだ。


「ねえ、逃咲くん。今日までのプリント出してないよね?」


其の言葉に僕の心臓を刺された。プリントというのは進路相談という内容だったから。親に伝えられる訳もなく、カッターで切り刻んでしまったから。


「先生にまた怒られちゃうよ?」


怒られるのは叩かれるより嫌いだった。泣きたくても泣けず、逃げたくても逃げられないから。ただ言葉で圧倒されて、虐げられて、心がズタズタに溢れてしまう光景を見たくなかったから。眼に焼き付けてしまいそうになったから。叩かれれば其の場からは逃げることが出来る。楽なんだ。どんなに血が出ても、どんなに苦しくても一瞬で終わるから。


「ねえ、聞いているの?」


聞いていると言われれば聞いているし、聞いていないと言われれば聞いていない。逃げているから正確には聞いていないという言葉が正しいのだろうか。右から左へと言葉が流れてしまう。止まることのない言葉が僕の耳を圧倒してしまっていた。

昔から聞くという事は苦手だった。理解して返答までしなければ為らないことが苦痛なんだ。時間制限という鎖までセットで付いてきてしまうだろう?あの感覚に不快感を覚えないかい?僕は不快感を覚えて、ずっと逃げてきたんだ。あの異音からずっと、ずっと。


「…早く出してね」


其の呆れた顔も、声も、表情も。全てがくだらなく醜い。僕に向けられているというのならば尚更滑稽に思えてきてしまう。感情すら止まることのない時計の針の様に進んでいく。僕の感情は異常者と同じだ。コロコロ変わって行く。口調や感情すら変わってしまう。眼を瞑っても尚頭に出てくる言葉と単語と声に惑わされながら生き続ける。其れも一生をかけて欺き続ける。


「…ごめん、ありがとう」


其の言葉しか思いつかなかった。謝罪と感謝と。静寂と間を埋めるためだけの変哲もない言葉。感情すらこもっていないロボットのような会話。会話のキャッチボールが成立しないのも僕のせいだ。


消えてなくなってしまえば良いのにと

僕は一生思い続けるのだろうな。

続編をお待ちくださいませ。

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