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8 無理は禁物

しかし、慣れって怖いな。

あんな事があったのに、ここの世界の会議に参加しているんだから。


「美咲様?何か策はありますか?」

「ごめん、私じゃ役に立たないや」

対面するように円卓に座っていたグレイルにそう言った。

今日帰ったら図書館で経済学の本でも借りてこようかな。

いろんな事勉強して理解しないと、会議に出ても役に立たないもん。


「そうですか……私達もお手上げなので、これは魔王様行きですね。では、今日の会議はこれで終わりにしましょう。皆、御苦労さまでした。次回の会議は後日改めて連絡いたします」

グレイルの声に皆、席を立ち始める。

どうしようかな~。今日バイトないし。

左腕を見ると、時計の針は五時半を指していた。





忙しいよね……

例の女神様が置いていった負の置き土産山積みだもん。

それプラス、今まで魔王が引きこもっていた分。

私はため息を吐きだしながら執務室の扉を見る。

時間があったので魔王の執務室まで来ていた。


魔王が引きこもりを辞めて一ヶ月。

私もこっちの世界とあっちの世界を行き来する生活に慣れていた。

アパートは残すか迷ったんだけど、魔王に解約して浮いた家賃を貯金に回したり、自分に使えばいいと促されたので解約した。

そのおかげで、だいぶ助かっている。

前みたいにキツキツにシフト入れたり、バイトの掛け持ちしたりしないで済むから。

その分学校の勉強とかに時間を回せるしね。

そのため食事も就寝もすべて生活の基盤をこっちに移し、大学とバイトにこの世界から行くという形式になっている。

行き来するのはものすごく簡単だし。


私は鞄を開け、中をのぞく。

そこには、携帯や手帳それから鍵の束などが入っている。

鍵の束は自転車の鍵に、大学のロッカーの鍵、それから魔王に貰った空間の鍵の三つ。

この空間の鍵はどんな形のドアにも対応するように形を変える。

その鍵をドアにさし回せば、あっちの世界とこっちの世界へと通じる空間が出来るのだ。


「みちゃきさま。はいらないんでしゅか?」

「ルル」

ばさばさと何処から飛んできたのか、ルルが私の右肩に着地した。

「ん~。忙しそうだから辞めておこうかなって思ったんだ」

「まおうちゃま、ずっとおしごとばっかり。ぼく、しんぱいです」

「ルル……」

うな垂れたルルの頭を撫でる。


たしかに魔王はずっと仕事ばかりだ。食事もあまりとらないらしい。

部屋に寝に返って来ないで、執務室で仮眠取ってるみたいだし。

何度もベットでちゃんと寝る様に言ったんだけど、ベットだと起きれなくなるから執務室の机で寝ると言って言う事を聞いてくれない。


そりゃあ、魔王が職務放棄していた責任はあるよ。

でも、休む時は休まないと体に悪いと思う。

やっぱ今日こそはちゃんと休んでもらわないと……


「魔王~?」

ノックをして部屋の中へと入る。

すると書類に埋もれている魔王の姿が書類と書類の隙間から見えた。

やっぱすごい量。書類が机にのりきれず、下の方まで束が続いている。


「ねぇ、魔王」

「まおうちゃま?」

私とルルが呼んでるのに返事をしない。

なるべく書類の束を倒さないように魔王の元へと近づく。

しばらくぶりに見る魔王の顔色は悪く、頬も少しこけているように感じだ。

充血した目で書類を追いながら、ペンを走らせている。


「魔王ってば!!」

耳元で叫ぶと、魔王の体が大きくビクつく。

「み、美咲……?」

「ねぇ、少し休もう。お茶と軽食用意して貰うから。そして、食べたら少し仮眠取ろう」

「余の事を心配してくれるのか?ありがとう。でも、心配無用だ」

魔王はそう言うと、またペンを走らせる。

ほんと強情。

仕方ない。こうなったら、強硬手段だ。






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