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6 それは最初から決まっていたこと

王座の間。

そこの上座には数段の階段あがり、その上に一つのイスがポツンと置かれている。

茶色のベルベットに銀の細工のフレームのイス。

そのイスは久方ぶりに自分の主に座って貰っていた。


「長い間迷惑かけて済まない、皆の者」

膝まづいているシリウス達に対して、魔王は深く頭を下げた。

私も階段下に行って膝まづいた方がいいのかな?

私が立っているのは魔王のイスの傍。

魔王に連れられここに来ちゃったんだけど、いまいち自分の立場が把握できない。

魔王って一番偉いんだから、やっぱ私って下なのかも。庶民だし。

そう思い階段を降りようとしたら、魔王に呼ばれてしまう。


「美咲、どこへ行く?」

「どこってシリウス達のところだけど」

「なぜ?」

なぜって……

私、上にいた方がいいのかな?

首を傾げ魔王を見る。

すると、羽も生えてないのに体が勝手に浮いてしまった。

何っ!?空中浮遊っ!?

ほんの数秒ほどの空中散歩は、魔王の膝の上で終わりを迎える。


「気付かずにすまぬ。立ちっぱなしだったな」

はいっ!?

なぜか、魔王は私が疲れたから下に行くのだと思ったらしい。

たしかに下には左右の壁に数個ずつイスの背がつくように並べられているイスがある。

でも、もし仮に私がイスを探していると思ったのなら、膝の上に座らせるんじゃなく、イスをさっきの魔法でここまで運んでほしい。


「魔王。あのね……――」

「おお!!そうだな」

すいません。私まだ何も言ってないんですけど?

また何か思い違いをしているのは確実に理解できる。


「皆の者。紹介が遅れてすまぬ。余の妻・美咲だ」

魔王の発表に、下にいたシリウス達の歓声が聞こえてくる。

やっぱり……

思わず頭を抱えてしまう。

私はただ、膝からおろして欲しかっただけなのに。


「おめでとうございます。魔王様、美咲様」

「うむ。あの者と違い、美咲なら良き余の伴侶になると思う。皆、美咲に手を貸してほしい」

「おおせのままに」

えっ?そんな簡単にいいの?私、女神じゃないよ。


「美咲、何かあったらすぐにこの者たちに言うのだ。そなたの手足となりこの者達が動くであろう」

「え……」

この時、私は自分が無責任に約束してしまった事を後悔した。

膝をついているこの数百人が私の手足となる。

まさか、そんな大ごとになるなんて。


「美咲、おめでとう。まさかこうなるなんて、私には予言出来なかったわ。魔界の事いろいろ教えるてあげる。さっそく、明日城下でも散策行きましょう。美咲に見せたい場所があるの」

「ありがとう」

シリウスの言葉に無理やり笑みを浮かべる。

ほんの短時間しかこの世界にはいなかった。

失礼な奴らだけど、彼らの事は嫌いではない。


でも――私は帰りたい。

せっかく入りたかった大学に奨学金を借りて通っているのだ。卒業したい。

祝福ムードのみんなには悪いけど……


「ねぇ、約束覚えてる?結婚したら元の世界に返して貰えるんでしょ?大学行きたいに戻りたいの」

「ん?美咲は大学に行っておるのか」

「そう。入ったばかり。家の事情で生活費は全部バイト代から出してるから、バイトも休めないし」

「そうか。約束は約束だ。余は守る」

「ありがとう」

「良い良い。美咲のためだ」

よしっ。

見事に心の中でガッツポーズが決まった。


「では、さっそく行くとするか」

「えっ!?もう」

「もう少し後にするか?」

「ううん。今すぐ戻りたい」

結婚してないんだけど、戻してくれるの?って聞こうと思ったんだけど、まぁ、いいや。


「では、シリウス。封鎖していた妃の間の改装を頼む」

「はい、かしこまりました」

部屋の改装をなんでシリウスに頼むのかが気になった。

見た目によらず、シリウスってそういう作業得意なのかな?


「美咲。美咲は部屋どういうのがいい?出来れば絵に書いてくれたり、資料くれたりして欲しいんだけど」

「部屋って?」

「美咲の部屋に決まってるじゃないの」

「……え。私、自分の世界に戻るんだよ」

「そうよ。荷物を取りにね」

ちょっと待って。

なんか、雲行きおかしくなってきた。


「荷物って何?」

「美咲の荷物に決まってるだろう。ちなみに、妃の間は余の部屋の隣だ」

「え?」

「もしかして、余と同じ部屋が良いのか?」

「違う!!話おかしいよ。私を元の世界に戻してくれるんでしょ!?」

「さっきも言ったぞ。余は約束を守ると」

「だったら、なんで荷物取りに行くの?まるでここに私が住むみたいじゃん」

「みたいじゃなくて住むのだぞ。ここを生活のベースとし、ここから大学とバイトに通うのだからな」

「もしかして、行ったり来たりって可能なの?」

「余は魔王だからな」

想定外だ。

まさか、そんな事が出来るなんて――











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