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4 魔王もやっぱり失礼な奴

ここかぁ。

ルルが連れて来てくれたのは、赤い扉の前だった。

細かい彫刻の彫られた赤い扉には、ゴールドの取手が付いている。


一応ノックとかしないといけないよね?

私は掌を軽くグーにし、ドアをコンコンと叩く。

すると中から、「誰だ!!」という声がきこえてきた。


「あの~、初めまして。田中美咲って言います。異世界から来ました」

「いっ、異世界だと!?」

自己紹介に裏返った声が返ってきた。

あ~。例の女神様も異世界からきたんだっけ。


「あの~、開けてくれない?」

「かっ、帰れ!!」

「それが帰れないんだってば」

「おぬし一体どうやってここまで来たのだ!?余の結界が張ってあるはず」

「――お前、それ聞くか?」

声が尖ってしまうのもしょうがない。

この世界に来てからずっとバカにされている気がしてしょうがないのだ。

魔界のやつらは失礼な奴ばっかり多すぎる。


「……なぜそなたは怒っておるのだ?」

「怒るに決まってるでしょうが!!あんた達は人をバカにしすぎなのよ!!

大体、普通で悪いか?何事も平凡がいいでしょ!?」

「ちょっと待て。よくわからん」

「よくわかんないのは、私の方!!いきなり異世界召喚とかされても迷惑。そもそも元はと言えばあんたが悪いのよ!!大体、何よ。顔が整っている奴を入れなくする結界って!!入れた私は何なのよ!!」

「――整ってなかったんじゃないのか?余の結界は完璧だ。例外はないぞ」

「まおうちゃま!!」

ルルが魔王を咎めてくれたが、魔王はわかってないらしく「どうした?ルル」と暢気に言った。


あれか?魔界の奴は、空気が読めないのか?

そうだよな。思えば最初っから失礼な奴ばかりだったもんね。

思いだしたら、血管が切れそうなぐらい血が昇ってきた。


「開けろ、魔王」

ガンガンと扉を蹴り続ける。

もう壊れても知らない。

「や、辞めるのだ!!扉が壊れてしまうだろう!!」

「知るか。どうせ魔法とかで直せるんでしょ」

「直せるが、わざわざ壊す事もないと思わないか」

「思わない。この扉ぶっ壊して、あんた引きずりだして元の世界に帰ってやる」

こんな言いあいが、何分が続いたかわからない。

だが根負けしたのか、魔王が白旗を掲げた。


「……わかった。開ける!!開けるから蹴らないでくれ!!」

魔王の声に少し遅れて扉が開く。

するとそこには黒いマントを羽織った長身の男が立っていた。

長い漆黒の髪は邪魔にならないように束ねられ、毛穴なんてあるの?ってぐらいキメが整っている肌、そしてあのイケメン軍団に負けないぐらいのその容姿。

もしこの魔王が薔薇の花束を持ち、キザな台詞を吐いたとしても違和感なんてないだろう。


これが魔王様……?

身長高っ。180?いや、190以上はあるはず。

しかも、何か良い香りがするし。


「そなたは――」

魔王の大きい目が開かれ、紫の瞳に私が映し出された。

えっ。何?これって、もしかして――

一目ぼれされるパターン?


「あぁ。これだ。これなのだ。余が求めていたのは。この街を歩いても背景に溶け込むような顔立ち」

「あんた、バカにしてんの?」

この失礼な魔王より、まさか一目ぼれ?なんて思った自分を殴りたい。

いやむしろ、立てなくなるまで殴り倒したい。


「バカになどしておらん。この地味な顔立ち落ち着くではないか」

「お前、顔が良いからって調子にのんなよ」

なんかここにいると、段々口悪くなってくる。


「何を怒っておるのだ?さ、中へと入るがよい。お茶を出そう」

私はそう言われ、扉の中へと招かれた。

せっかくのお誘いに、私はなんの躊躇いもなく入室した。







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