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2 何気に失礼な人達

私が魔界に初めて来たときは、突然だった。

自分の部屋で寝ていたのに、なぜか起きたら見ず知らずの場所に居たのだ。

しかもなぜか見ず知らずのイケメン達に囲まれて。

最初彼らを見た時、古い外国の夢でも見ているのかと思った。

だって、「ここ、中世のヨーロッパか何処か?」と思うような貴族の服や鎧を着た人達がいたし、

私がいる場所もゲームでみるようなお城の一室のような感じだったから。


何、夢……?しかも、この人達カッコイイ。

っていうか、私だけこれ!?夢ならせめてドレスとか着せて!!

彼らの格好と自分の格好を見て、とっさにジャージ姿である事を悔やんでいた。

しかもこれいつも寝るときに着るジャージじゃん。しかも、そろそろ寿命のやつ。

急に自分の格好がみずほらしく思えてきた。

そんな私のちょっとした乙女心を気にすることなく、その人達は私の前にしゃがみこみ、私の顔を覗きこむ。

そして、「良かった。この顔なら魔王様も大丈夫だろう」と口ぐちに言った。


「魔王?」

私の呟きに、七・八人いたイケメンのうち青いおかっぱの丸メガネの男が口を開く。

「あぁ、貴方はまだ知らないんですよね。魔王様は、この魔界を統べている尊きお方でございます。貴方には魔王様を部屋から連れて来て頂きたいのです」

「は?そんな事自分でやればいいじゃない」

夢ならもっと良い夢みせてよ。

部屋にいる人呼んでくるとかじゃなくてさ~。


「それが出来れば苦労なんかしねぇんだよ」

いかにも「あんた職業騎士でしょ?」って感じの鎧を着た男が、腕を組んでこっちを見下ろしてため息を吐きだした。

腰にさしている剣が大きく、この男の力の強さが気になる。


「リフ、そんな言い方はよくありません。私どももそうしたいのは山々なんです。ですが、魔王様はとある理由により部屋から出なくなってしまったのです」

「は?何で?」

「この魔界では、魔王様の花嫁は異世界より召喚した選ばれし女神と決まっているのです。我が王にも半年前に女神が召喚されました。それはそれはこの世の者とは思えない美貌で、魔王様にも負けぬような方です」

へ~。この人達もそうとうレベル高いと思うけどな~。

私は、ぐるりとあたりを見渡してそう思った。

たまに耳が尖っている人もいるけど、夢だし魔界だしと気にもとめない。


「実はその女神が、今回の原因を作りだしたのです」

「あ~、わかった。その女神に夢中で、魔王様は部屋から出てこないって事でしょ?」

あきれた。職務放棄で女とイチャついているなんて。


「いえ。女神はこちらの世界の人間界にいます。ありがたい事に、エラベラという大国の王子が女神を見染められたのです。恋は盲目ですね。もし姫を渡さないなら、争いをするとまでおっしゃって。人間と魔族なんて戦うまでもないぐらい力の差があるのに。実に愚かな者です」

「え?渡していいの?女神なんでしょ?」

「いいんだよ」

さっきの見るからに騎士が、口を挟む。


「あの女は女神だというのを良い事に、金を湯水のように使ってたからな。しかも、我儘言い放題。まぁ、女神だからっていう理由で好き放題させていた俺らも悪いが」

「女神のせいで国家財源の三分の一が消えました。たった半年で。その上、気にいらない者を次々に城から追い出したり……。他にも悪事を働き、魔界をかきまわしました。ほんとこの半年さんざんでしたね」

うわ~。悪女だったんだ。

思わず同情の目を向けてしまう。


「幸いな事に女神も魔界があきたのか、王子と人間界にあっさりと行きました。魔王様はその隙に、女神が二度と魔界に戻って来れないようにと魔界と人間界の門を閉じ、国交を断絶してしまったのです」

「え?行ったり来たり出来るの?」

「えぇ。安全上の都合、人間がこちらに来る事はできません。ほら、魔獣に食べられたら大変でしょ」

ふ~ん。魔王って勇者に倒されるイメージとかあったから意外。

でも行き成り断絶って不味くない?

事前通告してくれてるならともかく。

絶対、困る人もいるよね。


「それで、魔王様はどうして部屋から出ないの?せったく追い出したのに」

「美形嫌いになってしまったのです。女神が美しかったので、美人や美形が怖くなってしまったらしく、我々も畏怖の対象になってしまいました。この魔界はやたら顔が整っている者が多いんです。……まったく、ご自分の方が整ってらっしゃるのに」

自分達が顔が良いってこの人達、自覚あるんだ。


「たしかに、貴方達はかなり容姿良いと思うよ。でもそれと私、なんの関係があ……――」

言いかけて頭によぎった。

ちょっと待て。

この人達、私の顔見て『良かった。この顔なら魔王様も大丈夫だろう』って言わなかった?


――それって!!


「あんた達、夢だからって人バカにすんのもいいかげんにしてよね!!」

大声でそう怒鳴った時だった。

窓もない部屋の唯一のドアが開けられ、これまた綺麗なお姉さんが姿を現した。

黒のロング丈のベアワンピースにスリットが入れられ、網タイツに覆われた美脚。

やばい。つい衣装と胸に目がいってしまう。

だって、体のラインが出るドレスにあの巨乳だよ!?

見るなっていう方が無理でしょ!!

あぁ。あの胸、半分別けて欲しい……


「バカになどしてませんわ。私の予言は外れる事はありませんの。貴方なら、魔王様をあの部屋から出して頂けると出ております。そのために、私が貴方を召喚したんですもの。それと言っておきますけど、これは夢ではありませんわよ」

え。夢じゃない?

んなわけない。こんな美形や美人ばっかりの世界なんてあるわけない。


「初めまして、美咲。私、シリウスと申します。見ての通り魔女ですわ」

いや、わかんないだろ!!というツッコミは私だけか?

「シリウス。魔王様の結界の方は?」

「やはり私の力では破る事など不可能ですわ、グレイル。あの方は、この世で一番の力を持つお方ですもの」

「そうですか……。我々だけで魔王様の仕事をフォローするのはそろそろ限界に近いんですが」

グレイルと呼ばれた、眼鏡をかけた青い髪のおかっぱはうな垂れた。


「あら、大丈夫ですわ。美咲がいるじゃありませんか。ちゃんと魔王様を私たちの元へ連れてきてくれるわよね?」

いや、同意を求められても。

わけのわからなくなっていく状況に、頭の片隅で早く目覚める事を望んだ。






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