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おまけ

本編完結後 魔王視点。

ブログより転載です。

「魔王様、この書類もお願い致します」

「あぁ」

せっかくさっき書類を一束片付けてあいた机のスペースに、シリウスが持ってきた書類が一束置かれた。これでまた左右と前方の視界がゼロにまってしまった。

書類の束は、未だ床にまで続いている。


またこれだ。

ひと山片付けたかと思えば、またひと山書類の束がやってくる。

終わりの見えない膨大な仕事量に時々発狂しそうになるが、これも自業自得の上職務なので無理やりでも書類を片付けなければならない。


「後どれぐらいあるのだ?」

一呼吸を入れ、目を手で覆いながら天を仰ぐ。

書類ばかり見ていたせいか、目がそろそろ限界に近い。


「――聞くとやる気が失せるぐらいの量です」

「……。」

聞かねばよかった。

そう思った時には、すでに遅い時ばかりだ。


――なんだか、そう聞くと急速に疲れが増えた気がするな。


「少し休憩されてはいかがです?今日はまだお休みになられてないですわよね。また美咲に怒られてしまいますわよ」

「そうだな」

仁王立ちしてガミガミ怒鳴っている美咲が頭の中に浮かびあがって、思わず噴き出してしまった。


「美咲は今、なにしておるのだろう? 」

ふいに口から出た言葉に、シリウスが目を大きく見開く。

そしてクスクスと笑い始めてしまった。


「魔王様は、ほんと美咲の事がお気に入りですわね」

「美咲はおもしろいからの。見ていて飽きない」

喜怒哀楽が激しい彼女は、本当に見ていて飽きがこない。

余が勝手に作った婚約者の掟を信じ込む純粋な面を見せたかと思うと、余の体を心配して泣きそうな表情を見せたり。

まぁ、大半は「お前ら魔族は本当に失礼だっ!!」と怒鳴っている事の方が多いかもしれないが。


たとえばこの間、美咲がルルに本を持ってきた時があった。

それは美咲達の世界にいる動物の図鑑だったんだが、その中に『ナマケモノ』という動物がいた。

余が一目見てそれを愛らしいと思い、「美咲はナマケモノみたいだな」と言ったらものすごい勢いで怒られてしまったのだ。

あの時は、しばらく口聞いて貰えなかった。


なぜ怒られたのか、余は未だにわからない。

だが眉を吊り上げて怒鳴り散らす美咲を、余はおもしろくてしょうがない。

美咲が感情をぶつけてくれるのが嬉しくてしょうがないのだ。

グレイルとシリウス以外、今まで周りの者達は余の事を気にしすぎて腫れものを触るような感じだったからな。

そんな美咲だから、余も傍に置いておきたいと思ったのかもしれない。


「入れ」

突然ノックの音が聞こえたので、入室を促した。

扉を開けて入ってきたのは、美咲だった。

美咲はポットとカップ、それに小さいお菓子の入った籠がのった銀のトレイを持っている。


「美咲。どうしたのだ?」

「そろそろ休憩の時間かなって思ったの。今、ちょうど三時だから」

あぁ、もうそんな時間か。

時間が経つのは早いな。


「もしかして取り込み中?」

「いいえ、大丈夫よ。書類置きに来ただけだから。それでは、魔王様失礼いたしますわ」

「シリウスもお茶飲んで行けばいいじゃん」

「今回は遠慮しておく。またね、美咲」

シリウスはそう言うとこちらに向かって一礼し、扉へと消えて行った。


「ねぇ、こっちで飲むよね?そっち置く場所ないし、書類汚れちゃうと悪いし」

美咲は応接用に置いてあるテーブルに、カップなどを並べていく。

カップ一つか。

転送魔法を使い、もうひとつカップをテーブルにのせる。


「え?誰か来るの?」

急に現れたカップを見て、美咲が首を傾げた。

「美咲の分だ。美咲も一緒にお茶しよう」

「うん。でも邪魔にならない?」

「ならん」

「うん。じゃあ、私もここで一緒にお茶させてもらうね」

仕事が忙しくずっとすれ違い生活で、ここ最近ほとんど美咲の寝顔しか見れてない。

声が聞きたいし話がしたいが、眠っている美咲を起こすのは可哀想なので、おとなしく美咲を抱きしめて毎日眠っている。

こんなせっかくの機会だ。

美咲とお茶をしながら、ゆっくりしゃべりたいではないか。


あの女がいる時が、こんな穏やかな生活が来るなんて思いもしなかった。

もちろん、あの忌まわしき日々が消えることはない。

だから余計、美咲とのこの些細な日常を守って行きたいと思ったのだ。

ゆっくり、余と美咲の距離を縮めながら――








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