1 はじまり
私が経済学部とかだったら、こういうのなんとかできたのかな?
私はかれこれ数分間、書類と睨みあっていた。
たけどこのマイナスの数字をプラスもしくは、前と同じにする方法なんて思いつかない。
手にしている財源表の数字はここ半年で急激に減っていた。
これをどうにか出来るなら、きっとこの会議室にいる連中がとっくにしているはず。
なんせ彼らは会計のプロフェッショナルだから。
……まぁ、魔界限定だけど。
「美咲様。何かよい策は浮かびましたか?」
対面するように円卓に座っていた人物に声をかけられる。
その人は青い髪のおかっぱ姿で、ずれた丸眼鏡を手で直していた。
彼の恰好はTシャツにデニムという良く見かけられる格好ではなく、
まるで中世のヨーロッパの貴族のような格好をしている。
彼だけじゃない。円卓に座る人達は全てそのような格好だ。
しかも円卓を囲む顔ぶれは、かなりのイケメン達。
私の世界だときっと持てはやされるはずの容姿だが、この世界ではこういう人達が多い。
もちろん城で見るメイドさんや女中も美人ぞろいだ。
だから私、『田中 美咲』はこの世界だと浮く。かなり。
一応自分でフォローしておくが、私は良くも悪くもない平凡だ。
ここにいる人達が無駄に顔が良すぎるから、浮いてしまうだけ。
容姿だけじゃない。服なんかもそうだけど、私の全てがここでは異質な存在。
だってこの世界は私の世界じゃない。
一週間前に私は、ここ魔界に異世界召喚されてきたのだから。
しかも普通異世界召喚って言ったら、妃候補や女神とかの逆ハー溺愛コースって思うじゃん?
それなのに私の場合――