5.あの日の後悔は、響いていた。
僕の中で"何か"が響いている。
何かは分からない。
でもこれだけは分かる。
きっと、良くないものだ。
今日、僕たちは冒険者ギルドへ来ていた。
「あら、皆さんお揃いで、今日は何のクエストを受けますか?」
受付さんがいつものように優しく僕たちに聞いた。
だが…
「…最上級クエスト〈魔王討伐〉を、」
僕のその言葉に、ギルド中全ての人が静まり、空気が凍りついた…
全ての動きが止まったようだ。
「…とうとう、行かれるのですね。」
受付さんが口を開ける。
「最後のクエストになるかもしれません。ですが…」
「最高の結果を…残してみせます。」
僕は言い切った。
そして、受付さんの後ろから、ギルドマスターが出てきた。
「後悔はするなよ…」
ギルマスが言った。
「ありがとうございます。」
僕たちはそれだけ言って、ギルドを後にした。
「待ってくれ!」
僕たちが街を出ようと歩いていると、聞き覚えのある声が聞こえた…
15年間、毎日のように聞き続けた声だ。
「おっちゃん…」
そこに立っていたのは、肉屋の店主だった。
「最後なんだろ…」
「…」
しばらく沈黙が続き、
「…コロッケ、食ってかないか?」
おっちゃんが言った。
あの日の記憶が流れ込む。
「よぉ、兄ちゃん!今日もボロボロだな。魔王討伐のクエストどうだった。」
おっちゃんの声に僕は黙り込んでいた。
「そういや嬢ちゃんはどうした?いつも真っ先に来てたじゃねぇか。」
僕が口を開くと、
「…シオンが、僕たちだけ帰したんだ。」
おっちゃんが少し驚いたが、すぐに言った。
「…そうか、でも、2つやるよ。」
おっちゃんは、なぜかコロッケを2つくれた。
「嬢ちゃんに、あげさせてくれ…」
おっちゃんの腕は、震えていた…
「お代は要らねぇ。うるせぇオヤジのわがまま…聞いてやくれねえか。」
「分かったよ。」
おっちゃんが寂しそうに言うもんだから、僕たちは断れなかった。
「へへ、ありがとよ。」
僕たちはコロッケを食べ、再び歩き始めた。
この物語の全てが始まった。
あの地へと…
僕たちが森を駆け、魔王城へ向かっていると、
魔物が出てき、それと同時に5人の冒険の思い出が頭をよぎる。
初めて5人で連携を取れた、あの日…
負けそうになりながらも勝利を手にした、あの日…
新しい魔法を見せ合った、あの日…
楽しく笑顔を見せ合った、あの日…
全ての思い出を背に、僕たちは今まで歩いてきた。
「幹部…暴者とも戦うことになるだろう。きっと、ゼルカインにも…」
クエンが言いかけると、
「分かってる…そのときは、」
ロアンが言った。
「私に殺らせて…」
ロアンの声は震えていたが覚悟ができていた。
そう感じた…
さらに森を進むと、急に辺りが荒地へと変わった。
魔王の領域に近づいてきた…
近づくにつれ、魔王の魔力が大きく、重くのしかかる…
だけど僕たちは止まらない。
その重さを感じさせない速度で魔王城に向かった。
「……とうとう来てしまったな。」
風の音すら聞こえない。黒雲の下、巨大な城だけが異様な存在感を放っている。雲が低いのか、城が高いのか、それもわからない。
あの日と同じだった。
今日、歴代最悪の魔王[ティミルヌ・ニアル]がいる魔王城[アビサルフォート]の前に僕たちは立っている。
「 」
隣にシオンはいなかった。
だけど、それでも僕たちは止まらない…
「終わらせるんだ。この戦いを…」
僕たちは、アビサルフォートに歩みを進めた。
そのとき、キランと音がした。
転移魔法だ。
「…みんな!」
僕が声を出したときには、もう誰もいなかった。
僕も、知らない場所にいた。
《どこだここ?》
今の状況に驚いていると、足音が聞こえた。
「…ようこそ。"勇者"レイン。」
誰かの声がした。
聞き覚えのある、いつも元気で、うるさかった"彼女の声"が…
僕が振り返ると、そこには立っているはずのない"彼女"が立っていた…
「…シオン?」
思わず声に出た。
シオンだった。
紛れもないその声、あの日から変わらないその風格。
「なぜ私の名を知っている…」
「…愚族が。」
シオンなのか?
シオンはそんなことを言うはずがない…
シオンが…
「魔王軍新幹部、シオン・フォアバー。」
「あなた達の言う、暴者だ。」
僕は絶望した。
嗚咽が漏れる。自分にしか聞こえないほどの声量の…
僕の中で響き続けていた"何か"が分かった。
僕の中で、
あの日の後悔は、響いていた。
「おうおう魔族!お前らを全滅させに来たぞ!」
そう言いながら、次々と魔族を切って回るザウン。
「流石、"炎の双剣士"ザウンね…」
誰かが声をかける。
「誰だ?お前?」
ザウンが聞いた。
「魔王軍幹部"炎魔の双剣士"イフリードだ。」
これからの戦いがどうなるのか…
誰にも分からない。
ノイフスが負けるかもしれない。
でも、それでも彼らは戦い続ける。
魔王[ティミルヌ・ニアル]がいる限り…
5話まで来ました。
読んでくださった皆さん、ありがとうございます。
これからこの話がどうなるのか…
できれば週1で投稿したいと思います。




