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2.あの日の思い出は、幸せだった。

シオン・フォアバー


享年:18歳


職業:賢者セージ

元職:剣士ソードマン




薄紫髪ロング。身長165cm。

優雅で繊細な薄紫色の瞳。


勇者パーティ〈ノイフス〉の元賢者(セージ)。その圧倒的な回復・補助で、敵を翻弄していた。


パーティの都合で賢者(セージ)になったが、元は大剣を扱う剣士(ソードマン)だった。


とにかく元気で、パーティのムードメーカーだった。


最後の戦い、彼女は後悔していた…

約束を守れなかったことを…

彼から光が消えたことを…

人は皆、心のどこかに"闇"を抱えているという。

けれど僕は、ずっと実感がなく、信じることはなかった。

だがあの日、初めて"闇"に触れた瞬間、僕は恐怖と同時に、そのなかで燃える憎悪に触れた。

僕がまだ、あの"闇"に触れるなんて、

あの頃の僕は、想像もしていなかった。


あの日の思い出は、幸せだった。






「これが街か…」

石畳を踏むとコツコツと響く音も、立ち並ぶ華やかな店も、行き交う人の多さも、

うちの村とは何もかもが違っていた。


10年前。

僕とシオンは鍛練を重ね、冒険者ギルドに登録するため、近くの街まで来ていた。


「あっ!あったよ。レイン!」

シオンがギルドを見つけたようだ。


「…そんなに焦らないでよ。」

シオンは大剣を背負っているのも感じさせない速度でギルドに向かった。


「ほら、はやくはやく!」

シオンが興奮を抑えられず、僕が着く前にギルドの扉を開けた。

ギギィ、と鈍い音とともに隙間から中が少し見えた。


「わあぁ…!」

僕たちはその光景に圧倒されていた。

ガタイのいい戦士。大きな杖を持っている魔術師。強そうな冒険者がたくさんいた…


「早く登録しようよ!」

シオンが急かすように言った。

「わかった…わかったから…」

僕は息を切らしながら返事をした。


それから僕たちは受付へ向かった。


「10歳で…冒険者登録ですか…?」

受付の人が驚いていた。それもそうだ。僕たちは10歳で登録をしに来たのだから。


冒険者は10歳から登録できる。

でも実際に来るのは、だいたい15歳くらいらしい。

親が止めるし、命がけの仕事だから当然だ。


だが、僕らは村の誰もが反対できないほどの実力を身に着けていた。

小柄な体で大剣を振り回してしまうほどの力があったから、村の誰も心配していなかった。

実際には、誰も止められないからだけど…


「大丈夫、私、強いですから!」

「あはは…」

シオンの言葉に受付の人は苦笑いした。

当たり前だ。それが正しい反応なのだから。


「それでは、登録のための筆記試験を行います。実技の方は3日後、また来てください。」



そう言われた僕たちは、これから泊まる宿へと向かった。


「わあ!広ーい!」

シオンが部屋を見渡すとすぐさまベッドに飛び込んだ。


「あと3日あるし、街を見てまわろうか。」

「うん。行く!」

僕が聞くと間髪入れずにシオンがこたえた。



街に出ると見知らぬ店がたくさんあった。

「見て見てレイン!コロッケあるよ!」

シオンがお店を指差して言った。

「ん?」

指していた先にあったのは肉屋だった。

看板には〔コロッケ〕の文字がでかでかと書かれている。

もはや肉屋なのかコロッケ屋なのかわからない。


そんなことを考えているとすでにシオンは店の列に並んでいた…



「ねぇちゃんたち、見ねぇ顔だなぁ冒険者か?」

コロッケ屋…じゃなかった。肉屋のおじさんが聞いてきた。


「はい!そうです!」

「違うよ。試験3日後だよ。」

調子に乗ったシオンを僕は止めた。

まだなってないし、なれるかもわかんないし。


「そうかぁ、頑張れよ!」



僕たちはコロッケを買って、近くのベンチに座っていた。

「私、コロッケは厳しいわよ。」

シオンがドヤりながら言った。


「…流石、じゃがいも農家の、娘だね…これ、おいしい。」

僕は先にコロッケを食べながらテキトーに流した。


「もう、少しくらい反応してよ…」

シオンが少し寂しそうだったけど僕は気にもしなかった。


「それじゃ、いただきます…おいしいわねこれ、常連決定だわ。」

「何が『コロッケは厳しい』だ…あ、」

反応してしまった。シオンがニヤリとしたのがわかった。やられた…


「冗談よ。でも本当においしい。冒険者になったら依頼の帰りに寄りたいな。」

「なれるといいな。」

シオンは強いから絶対なれるだろう。僕はどうだろう…


「たくさん頑張ったもん!私たちならやれるよ!」


…私たちか。

少し胸の奥が熱くなった。


僕は本当になれるだろうか…

少し心配にもなったが、それは3日後に取っておこう。僕はそう思った。



3日後。

僕たちは再びギルドを訪れていた…


「試験、受けに来ました!」

シオンが早速受付にいった。


「わかりました。それでは準備をしますので、少々お待ちください。」


その間、僕たちは筆記試験の結果を見ていた。

結果、僕は合格した。

シオンはというと…ギリギリ合格だった。こいつは本当に冒険者になる気があったのだろうか…

そんなことを考えていると、


「それでは、準備ができましたので、こちらへどうぞ。」

ようやく呼ばれたので、僕たちは試験会場へ向かった。


「じゃあレイン。またあとでね。」

シオンは主に剣を扱う剣士(ソードマン)、僕は弓などを扱う弓士(アーチャー)になるため、それぞれの試験を受ける必要があった。

筆記試験は済んでいたため、後は実技試験だけだ。


シオンが先に試験を受け、僕はその後受ける。

正直試験官が心配ではあった。が、相手もプロだ。多分大丈夫だろう。



「シオン・フォアバーだな。俺はザイニア・イグニスだ。」

「はい!よろしくお願いします!」

試験官相手に大声でシオンが返事をした。


「はは!元気がいいな。元気がいいのはいいことだ!」

声の大きな人だ。正直僕は苦手だ。

そろそろ試験が始まる頃かな?


「それでは、試験開始!」


刹那…

それまで騒いでいた会場のざわめきが、スッと消えた。


試験が始まると同時に両者が踏み込む。

…速い!

目で追うことはできるが、それだけだ。明らかに初心者の動きではない。


地面が割れ、会場中の全員が見とれていた。


激闘の末、結果は…


「…試験終了。シオン・フォアバー…合格。」

相手が本気でなかったといえど、シオンはその圧倒的な実力で合格した…


「はは!これはまいった。嬢ちゃん、これから頑張れよ!」

やっぱり声がでかいな。でもシオンを応援してくれたことはわかった。よかった…

そんなことを考えていると、シオンがこちらを向いた。


「次は、レインだよ!」

「う、うん…」


この後僕なの…?


今更心配になってきた。手のひらが汗でにじむ。頭も痛くなってきた。


怖い…


でも、僕は絶対に合格する。シオンと並んで、いつかシオンを守れるように。

僕は1人で心に誓った。



数分後。準備が整い、

「射撃試験。開始。」


「レイン、すごー!」

僕は用意された的を次々と射抜いていった。


全ての矢が、風を切り、音が遅れる。

その矢が的の中心を貫いた。


弓は唯一僕が扱うことのできた武器だ。逆に弓しか使えないのだが…そして…


「試験終了!レイン・アンリミト、合格!」

…!!

…合格!今、合格って…言われたよね!?

僕が1人で興奮していると…


シオンが僕よりも喜んでいるのが見えた。

誰よりも嬉しそうに、

誰よりも誇らしそうに、

誰よりも大きな笑顔を、僕に向けていた。



「それでは、レインさんはWランク、シオンさんはVランクからのスタートになります。」

しばらくして、僕たちは冒険者としての最初のランクを言い渡された。


「すごいですね。ほとんどの冒険者がZ…高くてもXが限界なのに…」


冒険者にはA〜Zまでの26ランクに分けられ、

Aに近づくほど高くなる。

ほとんどの冒険者がO〜Mランクまで上げてから活動するのが一般的だ。


そうして僕たちはコンビを組んで活動することになった。



数週間。

2人で活動して、

「そろそろきついな…」

コンビは基本、剣士(ソードマン)魔法使い(メイジ)で組むものだ。

それなのに僕たちは剣士(ソードマン)弓士(アーチャー)、どう考えても合っているはずがない。

だが、僕は弓士(アーチャー)が使う矢与魔法(しよまほう)しか上手く扱えない…

それでも…


「私はAランクになる!」

シオンが止まるはずもなかった。


でも、僕たちの目的は魔王を倒すこと…

やっぱり最初の目標は、Aランク…

そのためにはパーティを組んだり…


僕が思考を巡らせていると、


「すげぇな、あんたら。」


誰かが話しかけてきた。


その目は、まっすぐな視線を僕たちに向けていた。

この出会いが、僕たちの運命を大きく動かすとは、このときにはまだ知る由もなかった…

2話も読んでくださったんですか!?

どうも、ありがとうございます!!

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