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40話 The sun sets, but the moon rises.

「ザ・キングス・テスタメント」を間近に控え、チームの準備は着々と進んでいた。シェリーやアマネたちの訓練は日を追うごとに密度を増し、ナツメもその練習相手として全力を尽くす。


合同チームとして戦うのは初めてだったが、互いの手の内をある程度知る者同士、その仕上がりは上々だった。特にナツメの目から見ても、シェリーとアマネの集団戦での立ち回りは目を見張るものがあり、大いに期待できるものだった。正直に言って、ナツメ自身は今まで「ワンマンアーミー」として戦うことが多かったため、自身が参戦するよりも今のチームの方が良い結果を残せるかもしれないと思うほどだった。


ナツメが務める「立会人」に関しても、詳しい説明がなされた。開会宣言や優勝トロフィーの授与に携わる予定になっており、想像していたよりもずっと大役だ。この立ち位置は、運営側とイノベイターが幾度も交渉を重ねた末の結果だった。ナツメが性別を公表した後に参加する初のコンペティションで、権威を損なうような事態は避けたかったが、将来的に世間に受け入れられることを想定すると、全面的な参加拒否は得策ではなかった。


そこで「立会人」という立場が生まれた。これならナツメのメンツを保ちつつ、男性のタイトルホルダーという話題性を宣伝だけに利用できる。運営側からすれば、ローリスク・ハイリターンな選択と言えるだろう。


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そんな中、英国行きまであと数日と迫った夜、ナツメのデバイスが着信を知らせて震えた。画面に表示されたのは「シオリ」の名前。少しの戸惑いの後、ナツメは通話ボタンを押した。


「はい、ナツメです」


「そっちだと、こんばんはになるのかな? シオリだよ。元気にしてる?」


シオリの優しい声が耳に届き、ナツメは安堵の息をつく。


「はい。いろいろと大変なことはありましたが、周りの友人たちが支えてくれたおかげで、何とかやっています」


「それを聞いて少し安心した。正直、私が想像していたよりもずっと大きなことになってしまって驚いたよ。それも、君がすごいことを成し遂げたかっていう証明なんだろうね」


「そう、なのでしょうか。自分としては、あまり実感が湧かなくて」


「君は実行部隊から選手になったんだもんね。ちょうど私と反対だ。ずっと裏方として戦ってきたなら、自分の戦果が急にもてはやされることには違和感があるよね」


「以前は選手だったんですか?」


「そう。だから、君が活躍することが自分のこと以上に嬉しくてね。変だよね」


「いえ、私が頑張ることで貴方が喜んでくれるなら、とても嬉しいです」


「うふふ。ああ、いけない。本題を忘れるところだった。ザ・キングス・テスタメントなんだけど、私も行くよ。君の護衛として」


シオリの言葉に、ナツメは眉をひそめた。


「護衛、ですか?」


「うん。私も上の人たちが何を考えているのかはっきりとはわからないけど、何か起こるかもしれないと警戒しているのは間違いないだろうね」


「……雲行きが怪しいですね」


「でも安心して。君のことは絶対に守るから!」


その力強い言葉に、ナツメの心に温かいものが広がる。


「あなたに言われると、とても心強いです」


「そうでしょう? でも、そういう事情だから君も最大限に準備しておいてね」


「わかりました。ありがとうございます」


「それじゃあ、また」


「ええ。また」


母のような存在であるシオリの声を聞けて嬉しい反面、立ち込める暗雲に一抹の不安を覚えた。しかし、それを打ち消すように、ナツメの胸に闘志が湧き上がる。これは、自分のためだけではない。大切な仲間たちが立つ晴れ舞台を、何があっても守り抜くために。

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