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4話 エクリプス

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シェリー・ブロウニングが加わり、ナツメ、エリ、シェリーの三人のチームとしての活動が本格的に始まった。時期は初夏を迎え、学園内では新人戦「ニューオーダー」の話題でもちきりだった。彼らのチームは、まず予選リーグを勝ち抜き、本戦のトーナメントへと駒を進めることを目標とした。



ある日のチームミーティング。テーブルを囲む三人の中で、ナツメが不意に思い出したかのように口を開いた。


「そういえば、チーム名が仮称のままだったね。案はあるかな?」


ナツメの言葉に、エリは少し考え込んだ。これまでのシミュレーションや訓練を通して、三人それぞれの役割が明確になり、互いの信頼も芽生え始めていた。その中で、漠然と彼女の頭の中に浮かんでいた言葉があった。


「……『エクリプス』、というのはどうでしょう?」


エリの提案に、シェリーが訝しげな顔をした。


「エクリプス? 日食、か。何故またそんな名を?」


「日食というよりも、今の私たちが自分達やライバルを凌駕して成長していけたらなと思って……」


エリは少し目を泳がせながらも、懸命に説明した。


それは、奇しくも女尊男卑の世界でアクトレスが持つ栄光という名の光をナツメが覆い隠していくことを暗示しているようだった。「男性復権」という目的を無意識に象徴するような単語にナツメの内心がわずかに波打つ。


その瞬間、ナツメの表情に微かな動揺が走ったのを、エリは見逃さなかった。しかし、ナツメはすぐにいつもの涼やかな笑みを浮かべ、その動揺を悟らせない。


「なるほど。なかなかに深遠な名前だ。……シェリーが良ければチーム名は『エクリプス』にしよう」


ナツメはそう宣言し、チーム名をタブレット端末に入力した。シェリーは少しひっかかるものを感じたが、代案もなかったので口をつぐんだ。


「新人戦予選リーグ、全勝突破だ。よくやった、二人とも」


ナツメは、予選最終戦を終え、汗を拭うエリとシェリーに労いの言葉をかけた。シミュレーターのデータは、彼らの完璧な連携を示している。クルセイダーが敵を引きつけ、ドレッドノートが突貫し、そしてミラージュが要所を的確に射抜く。三者三様の役割が、見事に機能していた。


「ふん、『実戦経験もない輩』に遅れはとらぬさ。当然の結果だろう」


シェリーはそう言いながらも、その口元にはかすかな笑みが浮かんでいた。彼女の言う「実戦経験もない輩」というものからナツメが除外されているのは明らかだった。公式な経歴では、ナツメの経歴は何の変哲もない競技者のものとなっている。しかし、その圧倒的な実力は、訓練だけでは培えないものであることをシェリーは確信していた。


シェリーの言葉を聞いたエリも、ハッとした。確かに、ナツメの実力は突出している。まるで長年の実戦で磨き上げられたかのような動き。シェリーの指摘を聞いて、エリの中で漠然とした疑問が、確信へと変わっていくのを感じた

予選を突破し、本戦への期待が高まるにつれて、チーム「エクリプス」の結束は徐々に強まっていった。ナツメの指揮の下、エリのデータ分析と狙撃、シェリーの近接戦闘と突破力が互いを補完し合い、強力なチームへと成長していく。放課後だけでなく、休日にも三人で外出したり、食事を共にしたりすることも増えた。


しかし、エリにはナツメに対し、わずかな引っかかりを感じていた。どんなに誘っても、ナツメは日曜日には決して自室から出ようとしなかったのだ。

いつも涼しい顔で「すまないが、その日は予定があるんだ」と断る。その表情には何の不自然さもない。だが、学園内で過ごすエリは、その予定とやらでナツメが外出する様子を見たことがなかった。

ナツメは、一体何をしているのだろう。エリの心に、小さな疑問が芽生えた。

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