第6話 発熱と汗
「妹っ」しゅるしゅる、ドサッ。
「椅子から落ちたっ、妹っ、大丈夫かっ、何だっ、この光っ」
あー、妹を包み込んでいる光が、体の中に吸い込まれて行く。
がっがっがっがっ。くっそ、テーブルが邪魔だ。
「妹っ、大丈夫かっ」頭をぶつけたりしていないと良いが。
ドーーーーーン。衝撃波っ。びりびりびりびりびり。
窓がっ、妹っ、覆いかぶさるしかないっ。
「・・・・・・落ち着いたか、窓が割れなくて良かった」
どんだけピンポイントで来るんだよ。偶然なんだろうが、妹は。
「妹っ、妹っ、妹っ、意識がない」肩を軽く叩き、声をかけても反応がない。
・・・脈、脈はあるのか。手っ、手だ、手首っ。・・・、・・・、・・・脈はある。
息、息は、・・・息は、してるのか。
俺の頬を妹の鼻や口の付近に近づけて、息が頬に当たるかを確かめる。
びびるなっ、俺、妹はいなくなったりしない。
・・・目で胸の上下、お腹の上下を見るんだ。
・・・・・・・・・熱い息が当たる、息をしてる、胸も、・・・動いてる。
意識のないのは心配だが、多分これならこの場から動かしても大丈夫だ。
「妹、後で怒ってもいいから、今は触るっ、お姫様だっこするから」
俺は妹を抱き上げ、バルコニーの一番西側にある妹の部屋へ入る。
「しかし、キングサイズのベットって、本当におっきいなぁー、妹の寝相、全然治らないな。・・・落ち着け、俺。誤魔化すな、妹はいなくならない」
ベットの天蓋カーテンを押しのけて、妹を寝かせる。
ここへ運んでくるまでの僅かな時間に、妹の白い肌が、露出して見えてる所が、全部が、真っ赤かだ。
指先までもが赤くなっている。
何が起こったんだ、いっぱい汗を掻いているし、呼吸も乱れてる。体も凄い熱かった。
最近は無かったが、妹はこんな発熱を幼い頃から繰り返している。
こんな時の為に、妹の部屋には熱さましシートや解熱剤とか、薬剤がどこかに置いてあるはずだ。
何処だ、ウォクインクローゼット。がたがたがた、カサカサカサ。ここじゃない。
何処だ何処だよ、ミニキッチン。
ぱたん、ぱたん。ぱたん、ぱたん。がちゃん。がちゃん。じゃらじゃら。ない。
洗面。ぱたん、ぱたん。あったっ。救急箱、中は、熱さましシートがあった。よしっ。
戻ろう。ちょっと待て、汗をいっぱい掻いていたな。
このまま貼っても直ぐに剥がれる。このタオルを2~3枚持って行くか。
こんなに急速に発熱するのは久々だ。救急車を呼ぶ事も考えた方が良いか。
洗面の扉を開けてベットへ戻った。
ベットに横たわる妹は、長い髪が乱れ、荒い呼吸を繰り返している。
「えぇ~っと」出来れば、緊急時以外でお願いしたいなぁ~。
余程熱く不快だったのか、いつの間にか服を脱ぎ棄て、下着姿で横たわっている。
「あれっ、良かったぁ~」
先ほどまでの真っ赤かな肌は少し収まり、今は体全体が桜色に染まって、こうぅ、・・・何というか不謹慎だが、とっても妖艶だ。ごっくんだ、妹。
大量の汗が肌を濡らし、首、肩、腰、足、・・・胸とか、・・・内ももとか。
乱れて広がった銀髪、乱れた荒い息、苦しそうな表情、この場面だけ切り取ったら、・・・別の場面だよ妹、何て恰好するかなぁ~。
・・・固まってどうする、俺。
・・・まっ、まずは、この汗を拭かないと風邪をひいてしまう。
「妹、今汗を拭いて、熱さましを貼るからな、その後病院に行こう」「あついぃ~」
発した声につられて、唇を見てしまう。女の子はこんなに艶があるものなのか。
引き寄せられそうになるな、・・・ほっぺたとか、・・・馬鹿者、今緊急時だ。
「・・・おっ、・・・汗、拭くからな」俺はタオルを手に取る。
額、頬、首、肩、腕、手の平と汗を拭いた。
これより下の汗を拭くべきか戸惑っていると、妹がわずかに目を開け意識を取り戻した。