第2話 妹《まい》の助けになりたい
妹は生まれつき病弱で、幼い時からよく高熱に見舞われた。
原因が判然とせず、小学校に入る前に、父さんと母さんは大学病院へ連れて行き、検査を受けさせた。
結果は、『遺伝子にキズがあり、それによって引き起こされているのではないか、現状では発熱する程度だが、この先、命に係わる重大疾患が現れるかもしれない。その場合は対処療法しかない』と言うものだった。
つまり妹は、俺の目の前から、何時いなくなるか分からない。
父さんも母さんも俺も、何もできない。いや、正確には俺だけだった。
父さん、母さんは懸命に働き、食費を、家賃を、光熱費を、医療費を、税金を稼いだ。
生活は決して楽ではなく、いや、苦しかった。
父さん母さんは、朝早くから、夜遅くまで働いていた。
可愛い妹は俺が見ていた。
オムツを替えたり、パンツを替えたり、着替えをさせたり、小学校を抜け出して、幼稚園でいじめられていないか見に行ったり、小学校低学年の時は、休み時間毎に見に行ったり。
四年生の頃に妹が、『もう、友達に色々言われるから来ないでっ』て言うから、窓から見ていたり、壁越しに見ていたり、俺も何か助けになりたかった。
中学生になった俺は考えた。
一番良いのは妹の病を治してやる事だが、それが出来るならとっくにやっている。
ではお金を稼ぐのはどうか。
かなり昔なら、小中学生でもアルバイトが出来た時もあったらしいが、今は未成年が勤勉に働く事は許されていない。
ネットで検索をすると、FXの自動売買と言うものが目に留まった。
大きな利益を強調した、如何にも怪しげなホームページばかりだ。
しかし、海外の業者なら5千円から始められそうで、この額ならお年玉で何とかなりそうだった。
ネットでプログラムを勉強して、自作のプログラムを作り、過去データを使って試してみたが上手くいかなかった。
俺も妹の助けになりたい。どうすれば上手くゆくのか。
考えながら夜空を見上げていると、これが天啓と言うものだろうか。
誰かが、何かを、教えてくれている気がした。
そして俺が考えたものとは、とても思えないプログラムを作りあげた。
ソースコードを見直しても、何を書いているのか全く分からない。
しかし過去データを使い試してみると、どの通貨ペアでも恐ろしいほどの成績を出した。
俺は父さんに相談した。
「お前がここ数か月の間、一生懸命何かを作っているのは知っていた。まさかEAを作っていたとは、ほぉ~、しかしこれ凄いな」
父さんは5千円までと言う条件で、口座を開く事を承諾してくれた。
中学一年の冬休みに、父さんはお年玉をFXの口座に振り込んでくれた。
まさか一年後に、シュミレートと同等の結果をもたらすと誰が思うだろうか。
しかし、家族の誰も予想しなかった、2千万越えになっていた。
家族会議の結果、俺の思う様にして良いと言う事になった。
俺は税金の分1千万と、七百五十万を、自身の銀行口座へ振り込んだ。
業者を四つに増やし、各二百五十万づつに分散する為だ。
妹の助けになるには、まだ足りない。
中学二年の冬休みにレンタルサーバーを借り、4つの海外業者で、再度一年間の運用を行った。
その結果、なんと約四百二十億、ちょっとした有名人になった。
なぜなら中学三年にして、納税額二百十億。