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日常2.異世界からのご来店

ここは魔王城と人間の町の間にある、森の中に建てられた喫茶「ゆずみち」。

この喫茶には人間、魔族問わず様々なお客がやってくる。

ただ今日はカウンターを見ると、勇者も魔王もいない。

店もひと段落ついたのか、柚乃はマスターに話しかける。


「マスター。今日は珍しく勇者さんも魔王さんも来ないですね~」

「まぁ、普通に二人はお互いの種族の長だから忙しいはずでしょ」

「確かに~。あまりにもこの店に入り浸ってるので、偉い二人であること忘れていました~」

「入り浸ってるって……」


マスターは苦笑する。

すると、店の扉が開く。


これまで見たことのない男女3人が入ってくる。


一人は8~9歳ぐらいの人間の少女なのに、凄く少し落ち着いているように見える。

一人は25歳ぐらいで頭に立派な角が2本ついている女性、こちらは年齢相応。

一人は、18歳ぐらい顔は割と整っている男性、ただ、あくびをしながらめんどくさそうに歩いている。

パッとみた限り、親子と言われても不思議ではないように見える。


ただ3人は初めての店だからか、周りを驚いた眼をしながらキョロキョロしつつ、唯一空いているカウンター席に座った。

そして、少女はマスターに話しかけた。


「お主……すまぬがここは一体どこじゃ?」

「ここは異世界喫茶、ゆずみちという喫茶店となります」


少女が年寄りくさい言葉遣いをすることに少し驚きつつもマスターは答えた。

すると、マスターの驚き顔以上に3人は驚いた顔をする。

そして横に座っていた頭に角のある女性が話しかけた。


「異世界喫茶……つまりここは異世界ということですか!?」


その言葉の圧にマスターは少し驚きつつも答える。


「一応そうですね。とはいっても、料理が少しこちらの世界と異なるぐらいですが」


その答えに、3人はお互いの顔を見ながら話し合う。

「いや、明らかに自分がいた世界とも、今いる世界と全く違う……何なら俺はこっちに住みたいなぁ」

「儂もそう思う。理想的な世界じゃな」

「そうですね。私たちもいつかはこうなるといいですが……」


マスターは頭の上にハテナマークを浮かべているようだ。

すると、横で話を聞いていた柚乃が3人に声をかけた。


「すみません~。皆さん何かご注文はありますか~」


その声に少女が答える。


「おぉ。それでは何かつまめるものとかあるかのぉ」

「サンドイッチとかいかがでしょうか~」

「なら、それを頼む」

「わかりました~。マスター、サンドイッチ一つお願いします~」

「はいよ」


マスターは短い言葉で返事をして、サンドイッチを作り始めた。

その間に柚乃は3人に声をかける。


「皆さん、お名前お聞きしてもいいですか~?」

「あぁ。儂はアクア。そこの頭に角が生えた奴がルヴィラ。

で、そこのめんどくさそうな顔をしている奴がライルだ」

「誰がめんどくさそうな顔だ」


ライルと呼ばれた男性は眉をひそめながら返事をする。

アクアと名乗った少女はその返事を聞いてゲラゲラ笑っている。

その様子を見ていた柚乃はさらに尋ねる。


「皆さんはどういう関係なのですか~?もしかして親子~?」


その質問にルヴィラと呼ばれた女性が反論する。

「親子なわけがないでしょ!つい数か月前まで敵同士だったわ!」

「そうなんですか~。それにしてはとても仲良く見えますが」

「……」


ルヴィラは何とも言えない複雑な顔をする。

逆に、ライルは笑顔になる。


「やっぱりそう見える?ここまでホント大変だったんだよねー」

「見えますよ~仲良し!!」


柚乃もライルの笑顔につられて笑顔で答える。

その様子を横で見ていたアクアとルヴィラは冷たい目でライルを見ていた。


「サンドイッチお待ち!」


マスターがサンドイッチを作り終えて、持って来た。

サンドイッチは一口大に切られており、各々がパッとつかめる大きさになっている。

具材としては、たまご、ポテトサラダなどがあるように見える。

そして三人のカウンターの真ん中に座っていたアクアの前に置く。


「なかなかに旨そうじゃ。ほれ、みんなで食うぞ」

「俺の分はこれ!」

「私も一つ頂こうかしら」


三人は一つずつサンドイッチを手に取り、声を合わせた。


「「「頂きます!!!」」」


そして口に放り込む。


「うむ……ミントが作ってくれたサンドイッチとは違うが、なかなかうまいのぉ」

「そうですね。ミントちゃんのサンドイッチは卵が固く焼かれていましたが、こっちのはふわふわです」

「俺はミントの奴よりこっちの方が好きかも」


3人ともどんどん手が進み、気が付けば皿の上は無くなっていた。


「お腹いっぱいじゃ!ありがとう!!」

「いえ、どういたしまして」


アクアはマスターと柚乃に声をかけ、マスターが返事をする。

その声を聞いた柚乃は3人に話しかける。


「お会計、銀貨3枚となります~」

「……銀貨?そんなの持ってる?」

「儂は持ってない」

「俺も」


ルヴィラはアクアとライルに声をかけるが、即答が帰って来た。

マスターはその話を苦笑しながら聞きつつ、話しかける。


「そうだろうと思った。いいよ、今日は僕のおごりということで」

「すまない。お言葉に甘えさせてもらうのじゃ」


アクアは頭を下げる。

それに合わせてルヴィラとライルも頭を下げた。


「次回からは何か物々交換できる物でもいいので持ってきてくださいね。では」

「そうだな。俺が持ってくるよ」


マスターのお願いにライルは返事をした。

そして3人は喫茶店を出るため立ち上がり、扉に向かった。


「またのご来店を」

「また来てね~」

「ごちそうさまでした」


マスターと柚乃の声にルヴィラは深々と頭を下げる。

そして3人が扉に向かいながら話す。


「それにしても、この世界は色々羨ましいものだな」

「そうじゃな。儂らの世界も色々考えて、がんばるとするかのぉ」

「そうですね。私たちで帰って考えましょう」

「まぁ正直、儂はどうにかなると思うが……魔王、お前のところの奴はヤバイじゃろ。前も城で暴れとったしのぉ」

「あれは仕方ないでしょ。そもそも人間側が原因なんだから、勇者が何とかしなさいよ」

「まぁ、どっちもどっちだね」


3人は色々言い争いながら、扉から帰っていった。

その言葉を着ていた柚乃はぽつりと言った。


「やっぱり勇者と魔王って暇なのかなぁ~」


ここは他の世界ともつながってしまう喫茶「ゆずみち」

さて、このあと3人は帰った世界でどのようなことをするのでしょうか。

次回作:極秘会談は異世界中立城で!

10月1日の7:20~、12:20~、21:20~にて各一話ずつ公開しますのでご覧くださいませ!!


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