第1話 パーティー追放からの、いざ、里帰り
※はじまりの話を同時に更新しています
酒場の楽しげなにぎやかさがどこか白々しく聞こえる。
一緒に飲もうとかけられる声に手を挙げるだけで返し、レオは酒場のカウンターへと向かう。
「個室でお待ちですよ」
レオに気が付いたマスターの言葉に頷いて返し、カウンターのその奥にある個室へと向かう。
ドアを開ければ、居心地の良さそうなソファセットが置かれた部屋に、四人の待ち人がいた。
人族の剣士・ルディ、同じく人族の魔法使い・ララ、狐系獣人族の弓術士・ガアデ。
この三人は、五人組の冒険者パーティー「金の鉄槌」のメンバーだ。
そしてもうひとり。王都ヴェリオの冒険者ギルド中央本部のギルドマスター・ケロース。彼は、サイ系の獣人族だ。
「……まあ、座れよ」
ルディがそう言って自分の向かいのソファを顎でしゃくった。
レオは無言でそのソファに腰を落とす。
ルディの隣に座っていたケロースが、難しい顔で一枚の紙を取り出して、ソファの間に置かれたローテーブルの上に置いた。
『昇級試験結果
レオ Bランク冒険者
種族 獅子系獣人族
剣士
受験ランク A
上記の者、厳正な審査の結果
不合格
冒険者ギルド・ヴェリオ中央本部
マスター ケロース』
レオはゆっくりと目を閉じた。数瞬の間をおいて、目を開けてルディを見つめる。
憧れと親愛を向けてくれていたはずのアイスグリーンの瞳は、ただただ蔑むような色だけが浮かび上がっている。
「約束は、約束だ。お前はリーダー失格だ。パーティーからも出て行ってもらう」
ルディが冷たく告げる。
ケロースが、机の上に書類とペンを置いた。
そこには「パーティー脱退書」と書かれていた。
「ここに署名を」
そう書かれたそれにレオは躊躇いなく署名をした。
ルディの座るソファのひじ掛けに寄りかかるララが、にこにこと笑いながら細い腕を持ち上げ、赤い爪紅の塗られた指をレオに突きつける。
「じゃあ、ちゃーんと、置いて行ってねぇ。お金とぉ、素材とぉ、お薬!」
赤い爪紅に飾られた指が二つに結ばれた赤いくせ毛を指先でいじれば、ぴょんと揺れた。
「……どうして? パーティー内の報酬は特別エンチャントアイテム以外は、全て平等に分配している。つまり俺のものは俺個人の資産だ。パーティー内でもそういう取り決めになっている」
レオの返しにララが、ぐっと言葉を詰まらせた。
ルディは呆れたように溜息を零し、ケロースはパーティー内のことなので興味もないのだろう。黙って成り行きを見守っていた。
「じゃあ、慰謝料寄越せよ」
そう言いだしたのは、壁際のカウチに寝そべって話を聞いていたガアデだった。
「慰謝料?」
「お前みたいな何度試験に挑んでもAランクになれないやつをリーダーにしていたせいで、オレたちが得られるはずだった報酬分だ」
ガアデが体を起こしてカウチに腰かける。彼の背後でふさふさの狐の尻尾が揺れている。
「あれもだめ、これもだめ。オレたちの意見何て無視してクエストを受けてよ、もっと高い報酬のクエストを受けてりゃ、今頃もっと金持ちだったのに。その慰謝料だよ」
レオを馬鹿にしたような顔でガアデが言い捨てる。
「そうそう、じゃあ、その慰謝料? っていうの? ちょーだい!」
ララが無邪気に両手を出してくる。
「……ロザリーは?」
ここにいない仲間の女性魔法士の名前を出す。
「ロザリーはねぇ、もう知らないって言ってたよぉ」
ララがつまらなさそうに言った。
「ずっと、Aランクになれないあんたを庇ってくれてたのにね、疲れちゃったんだって。だからぁ、今日はねぇ、朝から遠くのほうにクエストこなしに出かけたよぉ」
「…………そうか」
今から十年前、二十五歳だったレオと十八歳だったルディ、そして、十五歳のロザリーと結成したのが「金の鉄槌」という冒険者パーティーだった。ガアデとララが加わったのは、ほんの二年ほど前のことだった。
冒険者には、強さを表すランクがある。
冒険者は、Gランクから始まり、最高はSランクだ。とはいえ、Sランクは国に一人いるかいないかの存在なので、Aランクが実質、確実に目指すことのできる最高位だった。
GとFランクは見習い、Eランクで半人前、D、Cランクで一人前、Bランクはなかなかの実力者となり、Aランクは相当の実力者とみなされている。
CからB、BからAランクに上がるには昇級試験を受けなければならない。それは普段の実力に加えて、人柄や素行なども加味され、ギルドマスターにより出されたお題(主に高難易度の討伐クエストか高難易度の採取クエスト)をクリアする必要がある。
ララたちが加わってすぐルディがともに受けた昇級試験で一足先にAランクとなった。レオはその時も不合格。だが、ルディは絶対に受かると信じてくれた。
だが、それから二回受けた昇級試験、どちらも不合格。
最初は応援してくれていたルディもだんだんと焦り始め、いつしかレオの実力に対する不信感へとそれは変わっていった。
その中でロザリーだけが、ずっとレオを信じて、リーダーをルディに譲れと言う仲間たちからかばい続けてくれていた。
「早く出すもん出して、とっとといなくなれ」
ガアデが小ばかにしたように、しっしと手を振った。
「…………分かった」
レオは、テーブルの上に腰のポーチ――魔法収納機能付き――から、金の入った布袋と数本のポーション、そして、最近、狩ったワイバーンの牙を置く。
ララが布袋をひっくり返すと、テーブルの上にいくらかの硬貨が転がるが、金貨はぱっと見て数えられる三枚。銀貨はなく、残りは銅貨と錫貨だ。
「は? これだけ?」
ララが眉をよせた。
「ああ、これだけだ。『収納リスト開示』」
魔力を込めて言葉を口にすれば、ポーチの中身を示すリストが書かれた羊皮紙が宙に現れる。
そこにはもう「剣」と皿やカトラリーと言った金にはならない日用品ぐらいしか書かれていない。
「なっ、ありえないでしょ!?」
「どこに隠してやがるんだ!」
ララとガアデが声を荒げるが、ないものはないのだ。
「前回のワイバーン討伐、俺が誰を庇って、俺の剣に修繕が必要な状態になったのか、もう忘れたのか?」
レオは半笑いで告げる。
ワイバーンは、討伐が基本的に困難であるドラゴン系の中では比較的低級の種だが、それでも個人もパーティーランクもBランク以上の冒険者でなければ挑むことはできない。
その状況の中、あの時はまだCランクだったガアデとララが、手柄を焦ってレオの制止も聞かずに飛び出していき、ワイバーンにやられそうになった。
結果レオは、愛剣をワイバーンとララの間に投げつけ、なんとかワイバーンの気をそらし、その隙にルディとロザリーがそのワイバーンを仕留めてくれた。
だが、レオの剣はララが無茶苦茶に放った魔法とワイバーンの吐き出した炎によって、修繕が必要な状態になった。
その上、ガアデは重傷でレオが手持ちのポーションで彼の治療をしたのだ。
「俺の剣は特殊で修繕に金がかかる。お前の魔法とワイバーンの炎のおかげで俺の貯金はすっからかんだ。保管していた素材を売り払って、ようやくなんとかなった。上級ポーションの類は、ガアデ、あの時重傷だったお前が使い果たしたんだ」
そう告げれば、ララとガアデが顔を赤くし、眉を吊り
上げた。
「な、なら、剣を寄越せ! お前みたいなやつには、もったいねぇから、オレがっ」
レオは一足飛びにルディたちを飛び越えて、ガアデの胸倉を掴んでカウチに押し付ける。
ガアデの顔が一瞬で恐怖に染まる。
「おい、狐風情があまり舐めたことを言ってんじゃねぇぞ」
牙をむき出しにして唸れば、ガアデの尻尾が丸まり、三角の耳が伏せられる。
「いいか、魔獣にも、物にも、人にも、手を出していいもんと悪いもんがある。それを間違えんな。……長生きしてぇならな」
こくこくとガアデが必死に頷く。
レオはぱっと手を離して体を起こす。ガアデは無様にカウチの上に転がったままだ。
「……ルディ。今までありがとう。二度と会うことはねぇだろうが……達者でな」
そう告げて振り返りもせず部屋を出る。
少し驚いたようにこちらを振り返ったマスターに目礼だけして、レオは店を出る。
まだこれから酒を飲んで盛り上がる夜の町は賑やかで、レオはその喧噪の合間を縫うように歩いていく。
たどり着いたのは路地裏のさびれた宿だ。ルディたちにもどこに泊まっているかは告げていなかった。
ただ、ロザリーにだけは伝えてあった。
狭いロビーはカウンターしかない。昼間はそのカウンターに小柄な老婆が座っていて、宿泊客の相手をしているが、夜は無人だ。
薄暗い階段を上がって、部屋へ行く。中へ入って、ベッドの上に脱ぎ捨てたままだった服をポーチにしまう。他に物などなにもない。宿代は先払いで払ってある。一週間ごとに払っていたので、あと二日ほどはここを使えるが、もうここに、王都にとどまるつもりはなかった。
荷物をまとめて、ポーチから紙とペンを取り出す。
『急用のため出立する。世話になった レオ』
財布から金貨を一枚取り出して、重石代わりに部屋の鍵と一緒に紙の上に置いて、テーブルの上に置いておく。この宿には三か月ほど世話になっていた。
ポーチからマントを取り出して着込み、部屋を出る。
高い宿だと魔力を登録して使う鍵がついていることもあるが、このさびれた宿にそんな高価な鍵はついていない。あの昔ながらの鍵で開閉するのみなので、あそこに置いていけば問題ないだろう。明日、掃除に入った宿の誰かが気づくはずだ。
階段を降りて、誰もいないロビーを横切り外へ出る。フードを深々と被り門を目指して歩いていく。
王都は基本的に庶民が暮らす区画は出入りは自由だ。出入りが制限されるのは貴族や金持ちの暮らす、もっと中心部に近い区画だった。
王都は夜間も人が多い。これからクエストに向かう者、どこかの商人、重そうな荷物をつけた馬に旅姿の家族連れ。あらゆる人々が門の周辺にはあふれている。
レオは人波の中を縫うように歩いていく。
門の外、王都を出て、ひたすらに歩いていく。どこへ向かうかなんて決めていなかった。
街道をそれて森の中へ入る。腕に覚えのある者しか、夜の森に入るなんて馬鹿な真似はしないので、人の気配はなくなって、かわりに森に生きるものたちの命の気配がそこかしこで感じられる。
ただただひたすらにレオは歩いていく。
そうしていつの間にか森を抜けて、レオは小高い丘の上に立っていた。
眼下に遠く離れた王都が朝陽に照らされている。どうやら驚いたことにレオは、一晩中歩いていたらしい。
「……ロザリー」
白銀の髪に紫の瞳、白薔薇をまとう美しい人だった。
出会った頃はあどけない少女だったのに、この十年でずいぶんと大人びた落ち着いた女性になった。いつもレオを助けてくれて、レオを支えてくれた優しい人。
そして、レオが愛するただ一人の女性だった。
「ごめんな、ロザリー」
どうか、どうか、幸せに。
まばゆい朝陽にそう祈りながら、レオはしばらくの間、そこで王都を見つめていたのだった。
*・*・*
長閑な景色に囲まれた道を藁をたんまりと乗せた荷馬車がのんびりと進んで行く。林の間を通る道は、木漏れ日が心地よい。
その荷台の藁の上に寝ころぶレオは、くぁ、とあくびを零す。
一緒に乗っていた少年が「牙、すっげー」と横からつついてくるのに苦笑を零す。
「おじちゃんは、獅子の獣人なんだろ?」
「そうだぜ。かっけーだろ」
「うん! 髪もたてがみみたい!」
黒い目をキラキラと輝かせて、頷いた。小さな手がレオの黄金色の髪をわしゃわしゃする。何分、獅子系獣人族の雄は、髪が分厚い。たてがみのようなその髪をレオはいつも高い位置でなんとか一つにくくっていた。
レオは今、小さな町で受けた依頼を遂行中だ。報酬はミルクとバター。現地受け取りで町から村へ帰るこの荷馬車の護衛である。
「おじちゃんの髪はなんで半分が黒いの?」
「これも俺が獅子の獣人だからだな。雄の獅子ってぇのは、ある程度大人になるとたてがみが黒くなんだよ」
「染めてるんじゃないんだ」
「勝手に染まるんだ。俺も十八ぐらいからだったな。だんだんと髪がたてがみみたいに分厚くなって、毛先も黒くなり始めたのは」
「へえ、おじちゃん、今何歳?」
「三十五」
「俺のお父さんと同じ年じゃん!」
レオにももしかしたらこれくらいの息子がいたかと思うとなんだか面白く思えた。
依頼人であり馬の手綱を握っている父親が気まずそうに振り返るので、レオは笑って気にしていないと手を振った。
早いものでレオが王都を出て三か月が経った。
できるだけ小さな町や村を経由して、レオは王都から見て東の国境にある町・エンドを目指していた。あと二日ほどでようやく到着する予定である。
旅の目的は、つまるところ「実家に帰る」だ。
レオは養護院で育った。なので、そこの院長はレオが「親父」と呼ぶ人で、そこで暮らす子どもたちは血縁関係はないが、皆、レオの兄弟姉妹だった。
レオの生まれ故郷は、このアルト王国からいくつもの国を経た先にあるとある小さな王国だ。この十年、手紙のやりとりと、冒険者として稼げるようになってからは仕送りしかしていなかった。どうせもう縛るものもないし、国に帰ろうと思ったのだ。
「ねえ、おじちゃん、今までどんな魔物を倒した? ドラゴンは?」
「ドラゴンもあれこれ戦ったぜ。一番厄介だったのは、ヴュステ種のデザートドラゴンだな。あいつらはさ、四つん這いで蜥蜴みてぇなんだけど、住んでる場所が厄介でな」
「どこに住んでるの? 水の中?」
「んにゃ、正反対の場所だ」
「水の中の正反対……陸、水がない……あ! 砂漠!」
「おう、正解。砂漠はとにかく昼間は暑いんだが、夜になると尋常じゃなくて寒い。んで、そいつらは砂の中にもぐって移動すっから、見つけるのも苦労したし、戦うのも大変だしで、まあ大変だったわ」
「他は? ワイバーンは?」
「ワイバーンは、ありゃドラゴンの中じゃ弱いんだけど、群れてる上に空飛んでるからな。それにあいつらの吐く炎には毒がある。それが厄介だった」
「すっげぇー……」
少年のキラキラした眼差しがくすぐったくて、レオは肩を竦めた。
それからもねだられるままにこれまで対峙してきた魔物や魔獣とのあれこれを話していると「もうそろそろですよ」と父親が言った。
「この林を抜けたらすぐか?」
「うん、そうだよ。俺んちのミルクとバターはめちゃくちゃうまいから、おじちゃん、楽しみにしててよ!」
「そうか」
自信満々に言う少年が可愛くて、レオはその小さな頭をぐしゃぐしゃと撫でたのだった。
それから魔物が飛び出してくることも、盗賊に狙われることもなく、夕暮れに村に無事到着し、親子の家の前で馬が止まった。
レオは荷馬車を降りて、ぐーっと伸びをする。
「ありがとうございました」
父親が深々と頭を下げる。レオは「仕事だ」と苦笑交じりに言って、「おろして!」と甘える少年を荷車から降ろした。
「お礼の品を持ってきますね」
そう言って父親が家の中に入っていき、ミルクの大瓶と同じく瓶に入ったバターを持ってきた。それ以外に塊のチーズも差し出される。
「どうぞ」
「いいのか? チーズまで」
「貴方の冒険譚、とても面白かったですから。僕も子どもが生まれるまでは冒険者だったんですが、まあ弱くて。でもあの頃のあれこれは良い思い出です」
「そうか。ならありがたくもらっておく」
レオはそれらをポーチに入れる。
「夕暮れですが、行かれるんですか?」
「ああ。もとから今日は森の中で過ごすつもりだったんだ。エンドの町になるべく早く行きたくてよ」
「エンドの町、ですか……」
父親が難しい顔になり、首をかしげる。
「なんかあるのか?」
「私の妻の弟は、まだ独身で、彼がうちのミルクやバターをエンドの町までいつも売りに行ってくれているんです。大体、町での滞在を含めて一週間くらいの旅程ですね。半月に一回ですから、月に二回。でもこの二カ月、エンドの町やその近いところで、地鳴りが起こって、それがだんだん大きくなっていると」
「地鳴り? ここら一帯には山もねぇのに?」
父親が「そうなんです」と頷く。
「エンドの町は平原にある町で、国境は山ではなく大きな河です。でも、義弟は四回とも夜に地鳴りが、しかも一昨日帰ってきたんですが、今回は何度も地鳴りが起きて眠れなかったそうで、随分と疲れた顔をしていました」
「きな臭いな。何かあんのかね」
「それは僕らには……」
父親は困ったように眉を下げた。それもそうだろう。彼はこの長閑な村の酪農家だ。
「まあ、危ないようならさっさと次の町へ行ってみる。じゃあ、世話になったな。坊主も」
「おじちゃん、もう行っちゃうの?」
別れの言葉を遮るように少年の手がレオのズボンを掴んだ。父親が「こら」とたしなめようとするのを止めて、レオは少年の前にしゃがみこんだ。
レオはポーチから小さな牙を取り出す。それには革ひもがついていて、ネックレスになっている。それを少年の細い首にかけた。
「これ、なんの牙?」
「さっき話したワイバーンの、前歯」
「え!」
少年が目を丸くする。父親もその後ろで目を丸くしていて、その顔があまりにそっくりでレオは親子だなぁと笑ってしまう。
「ワイバーンってのは、牙に毒があるって話したろ? 毒交じりの厄介な炎を吐く。でも牙のすべてに毒があるわけじゃねえ、この犬歯にだけ毒を出す器官があんだ」
レオは自分の犬歯を指さす。
「んで、ギルドで金になるのはこの毒の出る大きな牙と下あごの一番デカい牙。あとは、金にならねえんだわ。だから俺ぁ、こうやってネックレスを作ってみたんだが……どうだ、売れそうか?」
「俺だったら絶対買う!」
「僕もです!」
なぜか父親が力強く頷いたので、レオはもう二つ取り出して、父親の手にも乗せてやる。
「やるよ。記念だ。仲間外れはよくねぇから奥さんの分もな」
「あ、ありがとうございます!」
「おじちゃん、俺、弟もいる」
「こら!」
「ははっ、そりゃ大事なことだな」
レオは少年の首にもう一つ牙のネックレスをかけた。
「やったね、父ちゃん! 母ちゃんともネッドとも一緒にお揃いだ!」
嬉しそうな息子に父親も笑顔で頷く。微笑ましい親子だな、と笑いながら立ち上がる。
「ドラゴンの牙は、魔除けのお守りなる。大事にしろよ」
「うん! ありがとう、おじちゃん!」
「じゃあ、元気でな。あばよ」
レオは手を振って背を向ける。
「おじちゃん、またねー!」
「おー」
レオは呼ばれるたびに振り返って手を振りながら、長閑な村を後にしたのだった。
※今夜19時に第2話、更新予定です^^