第9話 読みもしねえのに、俺ってやつは
レオは、ルイと手をつないで商店街を進んで行く。
ルイが、字を覚えたい、と言ったので教材になりそうなものを探しに来たのだ。
「お、古書店だ。ここに入ってみよう」
雑貨屋とパン屋の間にひっそりとたたずむ本と羽ペンの看板が下げられた店のドアを開けて中へ入る。
塗装が剥げた本棚には所狭しと本が並んでいる。埃と紙とインクの匂いがする店内は、外の世界から切り離されてしまったかのように静かだ。レオは、書店や図書館特有のこの静寂があまり得意ではない。なんだかむずむずするのだ。
「いらっしゃい」
声の聞こえたほうに顔を向ければ、カウンターに小柄なじいさんが座っていた。真っ白な長い髭が特徴的で、鉤鼻の下の唇は柔らかな弧を描いている。
「子どもに字を教えたいんだが、幼児向けのものはあるか?」
「それなら、こっちの棚に絵本がある。どれ、案内しよう」
そう言って、じいさんが立ち上がった。
とても小柄でレオの胸よりも頭が低い位置にあったが、背筋はしゃんとしている。
じいさんの背に続いて、店の奥へ向かう。
やや埃っぽい店内は、二階もあって、吹き抜けになっている。二階も天井まで届く背の高い本棚が壁を埋めていて、そこにも本がぎっしりと詰まっている。
天井はドーム型になっていて、真ん中に丸いガラス窓があり、そこから光が差し込んでいる。
「ここじゃ。ネイション語でいいのかい? それともアルト国語か、お隣のペーシ公国語?」
「とりあえずネイション語でいいんだが……」
「では、この辺がそうじゃ。手に取って、好きに見るといい」
じいさんが棚の一角を指さした。
「好きな動物とか魔物とか、食べ物とか、何かあるか?」
レオはルイに問いかける。
「いぬ、すき」
「犬か……何か気になるものがあったら、手に取ってみていいぞ。ただし、破ったり、壊したりしないように、優しくな?」
「うん、わかった」
レオはルイが届かない上の棚を、ルイは自分の手の届く範囲で絵本を見ている。
「おじさん、これなに?」
「これはドラゴンだ」
「……ドラゴン……かっこいい」
ルイの黒い瞳がきらきらと輝く。
ルイが手に持っている絵本はどうやら少年がドラゴンとともに冒険に出る話のようだ。
「じゃあ、一冊目はそれだな。こっちの本は、どうだ? 犬と冒険する話だ」
「いぬ」
ルイが手を伸ばしたので、ドラゴンの絵本を代わりに受け取る。
「なあ、ちょっとここで絵本見ててくれ。俺も欲しい本があってな」
「おいてかない?」
「置いてかない」
レオが笑うと、ルイはほっとしたように頷いた。
「じゃあ、絵本をあと二冊選んでくれ。二つだぞ、分かるか?」
「うん。ふたつ」
そう言ってルイは短い指を二本立てた。
「正解。何かあったら、呼んでくれればすぐに駆け付けるからな。ポンタ、頼んだぞ」
腰の袋からポンタを出して、ルイの足元に置く。
「わん!」
小声で器用に鳴いたポンタの頭を撫でて、レオは先ほど通った時に見つけた棚の前に行く。
そこには魔法に関する様々な専門書が並んでいた。
「……魔法を教えるって難しいもんだな」
レオは養護院に来てくれていた教師に教わった。彼女の教え方は、確かに上手だったはずなのだが、細かいところを一切覚えていない。実技は楽しかった記憶だけ残っている。座学はあまり好きではなかったのだ。
「つか、魔法なんて当たり前に使い過ぎてなぁ……」
レオにしてみると呼吸の仕方を教えてほしいと頼まれるようなものだ。
きっとその辺にいるルイと同い年の子に教えるならそこまで難しくない。彼らは一番身近に魔法を使っている大人がいるので、当たり前に魔法を知っているからだ。
だがルイは、魔法について何も知らない。真っ新なノートのような状態なのだ。
レオは「こどもとあそぶまほう」と背表紙に書かれた本を手に取る。
絵図付きで、分かりやすいような気がする
「とりあえずこれを……お?」
本棚の一番上に分厚くて大きくて、重そうな本に目が留まる。
『五大属性魔法 その発展と謎 ケイトリン・レイ著』
「ケイトリン・レイ……」
確かロザリーが敬愛する偉大な魔法使いの名前だ。あまりに熱弁するものだから、覚えてしまっていた。
ケイトリン・レイは今から三百年ほど前に存在した魔法使いで、魔道具という魔力を使う道具を最初に生み出した発明家でもある。彼女が魔道具を作り出した結果、今の便利な世の中になったというわけだ。
だが彼女が生きていた時代が大分昔であるため、彼女の本は非常に希少価値が高く手に入らない。ロザリーはいつか彼女の本を見つけるのだと訪れた町の古書店や魔術書店、骨董店などで探し回っていた。それでもこの十年、偽物しか見つからなかった。
「あるところには、あるもんだな……重っ」
手に取ってみると確実にポンタより重かった。ルイぐらいはあるかもしれない、と真剣に考えながら、そっと表紙をめくる。
正直、レオは魔法というものは本能的に使っているので、理論などはあまり考えたことはない。
一方、ロザリーは魔法士という職業を選ぶだけあってこういった理論がどうのという本を読み、勉強していた。レオとルディにはさっぱりだったが、彼女の魔法の精度は本当に素晴らしいものだった。
「おやおや、お目が高い」
足音は聞こえていたので、目だけを向ける。
「ケイトリン・レイの本に目をつけるとは、魔法使いか魔法士か、はたまた魔法研究家か」
「俺はただの剣士だ。……知り合いがこの本を欲しがっていたんだ。懐かしくて手に取っただけで」
戻そうとしたところで、しわの寄った骨ばった手がレオの腕を押さえた。
「迷っておるようじゃな」
じいさんの少し垂れた瞼の下の瞳は、まるで夜空のような不思議な色をしていた。何もかもを見透かすような色だ。
「迷っている時は、手放さないほうがいい。本も、愛も、あの、小さな手も」
じいさんが振り返った先で、真剣に本を選んでいたルイが顔を上げた。
二冊の絵本を抱えてこちらにやってくる。
「おじさん、これ……」
「これと、このドラゴンの本でいいか?」
小脇に挟んでいたそれを見せるとルイは頷いた。
「どれ、包んであげよう」
そう言って、じいさんが絵本を三冊、その腕に抱えた。
「その本は、金貨三十枚じゃ。絵本は錫貨三枚。古本じゃからな」
「さんじゅう」
今回の平原調査の報酬が全て吹っ飛ぶ額だ。
しかもロザリーはここにいない。今後、会うこともないだろう人が欲しがるものを持っていて何になるのだろう。レオには中身などさっぱりわからない。
「……これも、頼む」
だというのにレオは、その本をじいさんに差し出していた。
「重くてわしには無理じゃ。カウンターまで持って来ておくれ」
絵本を三冊抱えて歩き出したじいさんの背についていく。ルイとポンタもちょこちょこと歩き出す。
どすん、とカウンターに置いた本が重い音を立てた。
「これとこれと、これ……それと、魔法の本と、ケイトリン・レイの本。全部で金貨三十枚と銅貨一枚じゃ。絵本はおまけしてやろう」
「……ありがとさん」
金貨三十枚の枕にもなりそうにない大きな本を買うのだから、一冊錫貨一枚の絵本など可愛いものだ。
レオはポーチから金貨を三十枚と銅貨を一枚取り出す。
「おじさん……これ、おかね?」
「そうだ。今度、これについても教えてやるな」
「……おれ、そだてるの、おかねかかる。おかあさんとおとうさん、いつもそれでおこってた……だいじょうぶ?」
不安そうに問うルイに「大丈夫に決まってんだろ」と笑う。
「おじさんは稼ごうと思えばなんぼでも稼げるベテラン冒険者だからな」
「ほんと?」
「本当だ」
「ほれ、できた」
じいさんがそう言ってカウンターの上に本を押し出した。絵本と指導書、ケイトリン・レイの本で別々に羊皮紙が巻かれて、麻ひもで結ばれていた。
じいさんは、レオが置いた金貨の枚数を数えて、それをカウンターの下にしまった。
「確かにぴったり」
「ありがとさん」
レオは絵本と本をポーチにしまう。重さ何て感じないはずの魔法カバンなのに心なしか重くなった気がする。きっとこんなバカな買い物をしたせいだ。
相変わらず綿毛のように軽いポンタを腰の袋に入れる。
「じゃあ、世話になったな」
「毎度あり。当分、働かんでもよくなったのう」
ほくほく顔のじいさんにレオは毒気を抜かれ、気の抜けた笑みを浮かべて返した。
ルイの手を取り歩き出す。
「ルイ」
じいさんに呼び止められて足を止めた。
カウンターに両手を着いて、じいさんは何もかもを見透かす色の目を柔らかく細めた。
「繋いだ手を離さないこと。きっと近いうちにもう一つ増える。だが、その手を離さなければ、どんな困難も乗り越えられる。……幸せにおなり」
「……?」
ルイは戸惑いながら、とりあえず頷いている様子だった。
「レオ。お前さんなら、どのような大きな力も使いこなせる。お前さんが思うより、お前さんは強いのじゃ」
「はぁ?」
「はっはっはっ、じじいの戯言じゃ。気を付けてな」
カラカラと笑うじいさんが手を振った。ルイがすかさず手を振り返すと、じいさんは白く長い髭を撫でながら頷いて、レオたちが店を出るまで見送ってくれた。
背後でバタンとドアが閉まり、店内にカランカランとベルの音が響くのがぼんやりと聞こえた。
ルイの手を引き、宿へ向かって歩き出す。
商店街は賑やかで大勢の人々が行きかっている。
「…………おじさん」
「ん?」
「おじいさんは、なんでもしってるの?」
「どうしてだ?」
「オレのなまえ、しってた」
「……そういえば、そうだな」
じいさんは、ルイとレオの名前を確かに呼んだ。だが爺さんに自己紹介した覚えもなければ、ルイを紹介した記憶もない。店内でルイの名前を呼んだかどうかは記憶はないが、ルイがレオの名前を呼ぶことはない。ルイは「おじさん」と呼ぶからだ。
振り返ってみるが、もう店は見えない。
「ルイ、俺の名前、知ってるか?」
「レオ」
「そうだ。じいさんに言ったか?」
「オレ、おじいさんとおはなししてない」
「…………」
レオは首をひねるが、さっぱりと分からない。
だが、あのすべてを見透かすような不思議な色の瞳は、決して悪いものではなかったように思う。
「ま、考えてもしかたねぇ。俺ぁ、面倒くさいことは嫌いなんだ」
それにレオは今、読みもしない金貨三十枚の本に頭が痛いのだ。余計なことは考えたくない。できれば無心でポンタをこねくり回したい、そういう心境なのだ。
「帰ったら、美味いもん食って、風呂入って、寝ような」
「おふろ、きょうもはいる?」
「あんなでかい風呂、なかなか入れないから堪能できるうちは毎日、堪能しような」
「オレ、おふろすき」
「おじさんも好きだ」
そんな会話をしながら、古本屋のことはさっさと思考の外に追いやって、レオはルイとともにのんびりと宿を目指すのだった。
「おや、おかえり」
カウンターで何か書き物をしていたマージが顔を上げる。
「ただいま」
「ただいま?」
ルイがレオの真似をする。ポンタも腰の袋で「わん」と返事をした。
「なあ、昨日話した肉を渡したいんだが、どこで渡せばいい?」
「おお、牙猪の肉だね。旦那が今か今かと待ってるよ。厨房の方で頼みたいんだけど、さすがにポンタはお留守番だよ」
「じゃあ、先に部屋に置いてくる」
「なら、二階の食堂で待ってるよ」
おう、と返事をして、一度、部屋にポンタを置きに行く。
ルイと一緒に食堂へ行けば、マージが待っていた。こっちだよ、と彼女は食堂の片隅にあるドアを開けて中に入っていく。
厨房は広々としていて、数名のコックが忙しそうに夕食の準備をしているようだった。
「あんた、お肉が届いたよ」
マージが声をかけるとひょろりと細く背の高い男性がこちらにやってきた。
「ベノワ、レオだよ。レオ、私の旦那のベノワだ」
「初めまして。今回は牙猪の肉を持ち込んでもらえると聞いて、楽しみにしていたんです」
「ちっちっちっ、牙猪じゃねぇぜ」
レオは人差し指を立てて左右に振った。
「え? そんな……」
しゅんとしたベノワにマージも「違うのかい?」と眉を下げた。
「俺が討伐したのは、牙猪じゃなくて、大牙猪。ちゃんと昨日言ったぜ?」
「「「ええええ!?!?」」」
厨房全体に驚きの悲鳴が響き渡って、思わずレオはルイの手を離して両耳を押さえた。ルイもびっくりして目を白黒させている。
「お、おおきばいのしし……? 本当に?」
ベノワが呆然とつぶやく。
「ああ。大牙猪だ。こいつのせいで俺は色々と面倒くせぇことに巻き込まれてんだよ」
「ほ、本当の本当に?」
「本当の本当だ。どこに出す?」
「こ、こっち、こっちに」
挙動不審なベノワが広い作業台を指さしたので、そこに手をかざす。
「とりあえず半分でいいか?」
レオは、ひれ、ロース、スペアリブとあらゆる部位を猪の右側の分だけ出す。
作業台の上にこんもりとした山ができた。
「ま」
「ま?」
「マージ! ど、どど、どうする!?」
「どうするったってあんた……どうしようか」
ベノワとマージが興奮に顔を赤くしながら、顔を見合わせる。他のコックたちは、こちらにやってきて、口をあんぐり開けたまま肉の山を見上げていた。
「こ、こんな……」
「足りなかったか?」
「ち、ちがいます、多すぎです……!」
ベノワがぶんぶんと首を横に振った。
「でもまだ半分あるぞ? 大牙猪はでけぇし、肉はほどんともらってきたからなぁ」
「待って、待ってください! マージ!」
なぜかマージと二人で肩を組み、レオに背を向けた。こしょこしょと何か話し合っている。聞き耳を立てれば、強化を使わずとも耳の良いレオには聞こえるが、まあいいか、と放置する。
「おじさん、おにく、おいしいの?」
「この肉はなぁ、別格のうまさだ。脂が甘くて、肉も部位によっては柔らかくてな。煮てよし、焼いてよしだ。おじさんも大牙猪は久しぶりだなぁ」
「おじさんがいちばん、おいしかったおにくは?」
「そうさなぁ……」
レオは顎を撫でながら記憶のページをめぐる。
「肉はやっぱり……凍雪牛だな」
「とうせつぎゅう?」
「雪山にいるどでかい牛だな。この牛はさ、霜降りって言われるくらいに赤身と脂ののり具合がすごくてな。本当に……うまかった」
「オレもたべれる?」
「あれは冬がいいんだ。もう春だからなぁ……春は、冬眠明けで魔物も動物も痩せてるからな。今回の大牙猪はなんでか肥ってるけど、やっぱり野生の肉は、基本、秋が一番だな」
「はるは、おいしいものないの?」
「春かぁ、春はそうさなぁ……」
「レオさん!」
春の美味しいものについて頭を悩ませ始めたところでベノワに呼ばれて顔を上げる。
なぜかベノワが思いつめたような顔をしてレオを見上げている。
「ん? どうした?」
「あの、買い取り価格は、いかほどで……!」
「買い取りぃ? こりゃ持ち込みだから、俺が払う側だろ。調理代金はいくらだ?」
「いやいやいやいや!」
ベノワが首がもげそうなほど激しく顔を横に振った。
「大牙猪なんて作る側にとっても、食べる側にとっても憧れの超高級食材です。とてもじゃないですが無償でもらうわけにも、ましてや金をもらうわけにもいきません。でも、宿泊客分だとこっちが払いきれなくて。宿泊客に特別料金の案内は出してみますが……」
「じゃあ、俺の宿泊代だけ無料にしてくれ。しばらくこの町にいなけりゃならなくてよ。その代わりルイとポンタの宿泊代と洗濯代だとか昼食代だとかそういう別料金は払う。宿泊客への特別料金はまあ大人は一人銅貨一枚ぐれぇでどうだ? その方が特別感があっていいだろ? つってももし、調理にかかる費用の問題でもっと取らなきゃならねぇなら、俺ァ何も言わねえが」
「馬鹿な! このひと固まりで金貨十枚は固いんですよ!?」
ベノワが素っ頓狂な声を上げて、肉を指さした。
「だってよ、でかいから魔法カバンの容量取るんだよ。つか、これでようやっと半分だ。まだ同じだけの肉がある」
皆の視線が肉の山に向けられた。正直、ちょっとは売ってしまえばよかったなと思わないでもないのだが、美味い肉を手放したくなかった。
「だが、さすがにこんなになんて……!」
「いいじゃねぇか、それぞれに調理法ってのがあんだろ? 俺ァよ、皆で仲良く食えりゃ、そのほうが俺も楽しいし、うまいもんはより美味くなると思ってんだ。単純だからよ。って言ってもさすがに毎日こいつばっかりじゃ飽きちまうかな? ルイには色々と食わせてやりてぇし」
レオは横で大人たちのやりとりを黙って聞いているルイを見ながら言った。
「……本当にいいのかい? あんたの宿泊費をタダにしたって、これじゃあもらいすぎなのに」
マージが肉の山とレオを交互に見ながら言った。
「いいよ、別に。食いたきゃ俺ァ自分で狩りに行けばいんだからよ」
ベノワとマージが顔を見合わせた後、頷き合った。
「なら有難く頂戴するよ」
ベノワの言葉にコックたちが、おお、と歓声を上げた。
「うわぁ、これから来るお客さんたちは、幸運だな。大牙猪の肉なんて、一般庶民が早々食べられるもんじゃないのに」
コックの青年が興奮した様子で言った。周りのコックたちもうんうんと頷く。
「明日にゃ、食えるか?」
「うーん……それは難しいかもしれません。大牙猪は臭いの処理を丁寧にしないと台無しになってしまいますし、とれたて新鮮の様子ですから少し熟成もさせたいところです……数日頂けると。できそうな日は、朝にお伝えします」
「そうかい、じゃあ、数日後の楽しみだ。ルイ、部屋で少し昼寝でもしようぜ」
ルイがやけに静かだなと思ったらあくびをこぼしている。
よっと抱き上げると素直にレオによりかかった。手で目をこする仕草はあどけなくて、レオはふっと笑みをこぼす。
「俺たちは部屋に戻るな。また何かあったら言ってくれ。それと、マージ。もしも冒険者ギルドから誰か来たら、すまんが呼んでくれ。俺が下に降りる」
「分かったよ。おやすみ、ルイ」
もうだいぶ、眠りの世界に入り込んでいるルイにマージが笑いながら声をかけて小さな頭を撫でた。
レオは、頼むなと告げて厨房を後にする。
小さな体は綿毛のように軽くて頼りない。風が吹けば飛んで行ってしまいそうだ。その代わり、子どもしい高めの体温が心地良い。
「おじさんも一緒に昼寝でもするかな」
そう零しながら、すっかり眠ってしまったルイを抱えなおして階段を上がって行くのだった。
※明日は、1日2回更新です!
朝7時 → 幕間 その2
夜19時 → 第10話




