第3話 新しい生活の始まり
[騎士団本部]
「イグムノフよ。ルイナ・ジェンテーレが作成した報告書に間違いは無いのだな?」
「はい。報告書通りになります。団長。」
アランに団長と呼ばれた男は大きな椅子に腰掛け、机の上で報告書を読んでいる。
「イグムノフよ。1000年ぶりの炎の剣守かもしれん。慎重に事を進めていくぞ。」
団長の男の青い瞳がアランをギョロッと見つめる。
「承知いたしました...。団長...。」
アランの返事が静寂の空間に響いた。
[診療所]
トントンと病室のドアをノックする音が聞こえる。
「どうぞー。」
「失礼します。」
ガイトの出迎えで入ってきたのは、アランの部下のルイナ・ジェンテーレだった。
「ガイト君。体の方は大丈夫ですか?」
「おかげさまで。大丈夫です。」
笑顔で返すガイトとは裏腹に、ルイナは無表情のままだ。
「ガイト君。今回は見舞いに来たのでは無く、報告しに来ました。」
「報告?」
首を傾げるガイトの前でルイナは、懐から報告内容が書かれた書類を出し始めた。
「今回の事を受け、我々は騎士団の団長に報告しました。」
彼女達が騎士であることは、ここに来るまでに教えてもらっていた。
団長に報告するレベルの事なのかとガイトは、身震いした。
「あの、ルイナさん。おっ俺は罰せられるのですか?」
青ざめるガイトにルイナは答える。
「罰せられる事は無いですが、ガイト君。あのエルフ様と契約しましたよね?」
「契約...。」
あの戦場での事が思い出される。
たしかに、あの時、ミラは契約と言っていた。そしてガイトも契約すると言った。
「契約しました。だけど、それ以降は覚えてなくて。」
俯いたガイトを見て、ルイナはそうですかと小さく返事する。
[診療所 ミラの部屋]
「う、ここは...?」
目を開けると知らない天井が広がっている。
「目が覚めたんだね。良かった。」
声の方向に顔を向けると、白髪の少年。ガイトが座っていた。
ガイトはこの部屋にいることを許可されたらしい。
「ここは...どこだ。」
「騎士団が運営してる診療所だって。俺達、助けられたんだ。」
「そうか。」
呟き、天井に向けて腕を伸ばし、手を開く。
少女の腕には包帯が巻かれていた。
「たった一回の共命で...。」
少女の言葉でガイトが何か思い出した様子を示す。
「ねぇ。ミラだっけ?その共命ってなんなの?」
「共命はな...。」
ミラの小さな口が開く。
「魔王に対抗するための力だ。」
「――――――魔王...?」
現実味のないワードだが、ミラの声色から魔王というワードが現実味を帯びて、ガイトに伝えられた。




