59.懲罰
ウンゲテュームの討伐遠征からしばらく経ち、少しばかりの落ち着いた日々を過ごしていた統括司令官執務室では、毎日私の懲罰が行われていた。
懲罰内容は、私への女性用隊服の着用。つまりスカート着用を義務付けられたのである。
「もぉ、これ止めませんか。足がスースーするんですよぉ······」
「何言ってるの。どんな罰でも受け入れるって言ったのクリスティーナだよ」
「······でも」
「何。また俺との約束破る気?」
「約束って言うか、私は罰則を受けるつもりだっただけで」
「じゃあちゃんと受けてよ」
「······くっ」
全く反論できない。何せ、この罰則の全ての原因は私なのだ。受け入れるより他はない。
女性用の隊服は上は男性とほぼ同じなのだが、下はスカートと決まっている。しかもスカートも2種類あり、タイトスカートとプリーツスカートがわざわざ用意されている。
これを作った当時の団員に問いたい。男ならズボン一択なのに、何故女性用に2種類作った。その余計な熱意は討伐に向けろと言いたい。
今回の懲罰にあたり、ギルベルト様はわざわざ騎士団本部に出向き隊服作成をしている業者を突き止め、嫌がる私を連行し、採寸させてオーダーによる隊服を作らせたのだ。
結果、本来膝丈であったスカートはなぜかミニスカートに代わり、ボディラインが見えないはずの上着すら、何故か胸元が分かりやすいラインに変わり、完全にギルベルト様好みの仕様に早変わりしたのだ。
ちなみに、業者突き止め後の一連の作業にはニコラウス様も深く関わっていたようで、採寸時にはエルナちゃんも連行されて、二人して隊服を無理やりアイドル仕様にさせられたのだ。
ニコラウス様はエルナちゃんに「こういう仕様の隊服もあるから気が向いたら着てね」と優しく隊服を渡していた。
その傍らで、ギルベルト様は私に日替わりでスカートの種類を替えること、ガーターベルトやニーハイの着用をすること、何故か軍靴ではなくヒールを履く日を週一回設けるよう事細かに指定してきた。
「ギルベルト様は変態ですか」
苦い顔で思わず上司の悪口を本人に対して言う。
「ああ、変態で結構。クリスティーナも女らしくしていたら、むやみやたらに剣を振るわないでしょ?」
ギルベルト様はウンゲテュームの討伐時、彼の承諾なしに勝手に敵に突っ込んでいったのが、未だに許せないらしい。
「スカート履いてても剣は振るえなくはないですけど」
「ふぅん。クリスティーナはさ、例えば頭のおかしな男を目の前にしてスカートの中見せながら闘うんだ。すごいね」
「······ちょっ······!」
「あーあ。相手には見えちゃうよね。クリスティーナがガーターベルトしてるとことか、可愛いフリルの下着着けてるとことか、紐パン弛んじゃってるとことか」
「紐パン弛んだのは、あれ1回だけです!!」
私は以前、執務室内で紐パンの紐が外れ、大号泣したことがある。
ギルベルト様はニヤニヤと笑い、私の腰に手を回しながら耳元で囁いた。
「今度、紐が外れたらすぐに言ってね?俺がスカートの中で結び直してあげるから」
そのまま、手をスルスルと太股に延ばし、中指の先で、つぅっと下から上に触りスカートの中に手を入れようとした。
「職権乱用です!」
「ただの懲罰だよ」
プンプン怒る私に、コロコロと楽しそうにギルベルト様は笑った。




