5.ミッションスタート
お話を頂いてから、自宅に戻った私は一応ざっとしたプランを立てた。
翌日から騎士団員らしくない、謎の業務が始まった。
「おはようございます。アイレンベルク司令官、オーベルマイヤー補佐官」
「おはようございます。プレトリウスさん」
「··········」
張り切って登城した私だったが、笑顔で挨拶を返してくれた補佐官に対して、司令官にはガン無視された。
同じ執務室で勤務することになるので、今日からは事前に発言許可を頂いている。
「今日はどういった感じで進めるか、聞いてもいいですか?」
司令官が会話に参加拒否のため、補佐官と私で話を進めていく。
「はい。実は色々考えましたが、失礼ながらアイレンベルク司令官のこの件は、だいぶ根が深いと判断致しましたので、あまり性急に事を進めては逆効果になる可能性もあります」
「そうですね」
「まずは司令官の視界に常時私がフラフラ入りますから、今日はそれに慣れてもらおうかと思います」
「まぁ、無難でしょう」
「はい。ただ、私、これだと暇人になるので、そちらの守秘義務に当たらない範囲内でいいので、なんか仕事ください」
司令官が定期的に睨んでくる中、補佐官から簡単な事務仕事をもらい、お二人にお茶をご用意し、この日は終了した。
それからさらに、2週間が経過した。
司令官のガン無視は今日も徹底されていた。
前の勤務先の上司と仲間が心配してたらどうしようと悩む私に補佐官は、「ご心配には及びません。東部事務所には、王城内での女性警護のため、しばらく騎士団内から数人女性団員を集めて業務にあたらせたと伝えてあります」と教えてくれた。
司令官の評判に関わる業務のため安易に前の勤務先に連絡も出来ず困っていたので、少し安心した。
この2週間で、私はじりじりと司令官に近づき、いまは半径1メートルをウロウロするというミッションを遂行中だ。
また、進展もあった。勤務中のガン無視はともかく、司令官には、朝と帰りの挨拶をしてもらえるにようなった。最初のうちは、例のごとく「······お······っ!」と一語会話だったが、今では「······おは······う」となんとか挨拶らしき言葉を拾えるようになった。
勤務中、こちらの様子を慮ってくれた補佐官が話題を振って会話をしてくれるため、私と補佐官はだいぶ仲が良くなった。
最初のうちは、睨み付けていた司令官だったが、いまは私と補佐官の会話を少し不機嫌そうに見つめているだけになった。




