49.プレトリウス領と三兄妹
雪が積もる森の中、その日私は兄二人と魔物討伐しようと朝から走り回っていた。
夏からずっと忙しかった私は、夏休みをとるのを忘れ、ギルベルト様の温情で年明け休暇と繋げて約二週間、領地に戻っていた。
私が仕事を休むと言ったら兄達も休暇を使い、年明けからみんなでずっと領地過ごしている。なんだかんだで優しい兄達である。
「でっかい魔石がほしいんだ、オスカー兄さん」
「任しとけ。妹の頼みだ、殺ってやるよ」
「今年はなんかびっくりするような魔物と会いたいな」
「俺が誘きだしてやるよ、クリスティーナ」
長兄のダニエルが、私では持ちきれないようなでっかい剣をブンブン振り回した。
今日は私の誕生日だ。何がしたいか聞かれた時に、例年どおり魔物狩りを挙げた。
このところ、柄にもなく乙女チックなイベント続きで、正直私はあっぷあっぷしていた。ストレス解消には討伐が一番である。
「兄さん達、頭巾は被らないの?」
「おい、俺は五歳の子供か?」
オスカー兄さんが口角をあげた。
私達プレトリウス三兄妹は昔から年明けの私の誕生日を魔物狩りで祝ってくれた。寒い時期なので、お母様が毎年手作りの頭巾を毛糸で編んでくれた。
私の頭巾はいつもくまさん、オスカー兄さんはニワトリ、ダニエル兄さんはインコだ。今年は私以外誰も被っていない。せっかくお母様が三人分編んでくれたのにもったいない。
「そもそもなんで俺とオスカーは鳥なんだ?」
ダニエル兄さんが訝しむ。
「すぐ忘れる鳥頭だからってお母様が言ってた」
兄達は、とにかく頭が悪い。
わいわいと喋りながら歩いていたら、ちょうど10メートルくらい向こうに、マッドリザードの大群を発見した。
体長3メートル近くのマッドリザードがうようよいる。放っておくと人間を襲うため、早めに退治しなくてはいけない。3兄妹は狂喜乱舞していた。
「あーっはっは!!楽しいな!!」
ダニエル兄さんはズバッと胸元から刃を下ろし、ブシャっと飛び出る青い血を浴び喜んだ。
「もっとカッコよく剣を振るわないと女の子にもてないよ、ダニエル兄さん!」
華麗な剣技でドシュっと敵の首をはね、オスカー兄さんは返り血の雨に打たれた。
「きゃあ♡魔石いっぱいだ~!!」
私はニメートルくらいの中型のマッドリザードに次々に剣を振るう。
兄達が大型のを仕留める間に、魔物の体からずぶずぶと魔石を取り出した。一応手が汚れないようにグローブはしたけど、兄達がアホみたいに血を撒き散らすものだから、私のコートも血だらけになってしまった。
「あーあ、くまさんの頭巾にも血がついちゃった······」
私はお母様に心の中で謝罪しつつ、たくさん魔石も取れたしそろそろ帰ろうかなあと思って、オスカー兄さんに声を掛けようと振り向いた。
「オスカー兄さん、そろそろ······兄さん後ろ!!」
オスカー兄さんの背後に、見たことも無いような大きな魔物がいた。
すぐに気づいたオスカー兄さんが魔物に剣を向け、ダニエル兄さんが助けに入る。
ガキィィイン······っ!!と嫌な音がなった。
「刃が、入らない······」
なにこの魔物、どうなってるの。
「オスカー!記録水晶で撮影しろ!騎士団本部へ報告するぞ!」
「りょーかい!ダニエル兄さん!どのぐらいで弾き返されるか、試してみて!」
「私も写真に写りたい!!」
三人三様に魔物に対して動き回る。ダニエル兄さんとオスカー兄さんが、何度試しても剣は魔物の肉に入る前にバリアのように跳ね返された。
見たこと無い魔物は、私達が狩ったマッドリザードを食べ始めていた。勝算が見当たらない私達は、結局この隙にとばかりに魔石を持って逃げ出した。
この日、血みどろになって帰ってきた三兄妹は、母親に説教されつつも、休暇を繰り上げ急いで王都へ戻った。




