2.クリスティーナの毎日
騎士団は、いままで男性に限られていたが、近年その門戸は女性にも解放され、女性団員の数は少しずつではあるが増えていた。
でも内部事務がほとんどで、配属が東部事務所の内勤だと知った私は、しばらく拗ねていた。
私はバリバリの前線希望だった。ワクワクしていた。兄達とともに剣を振るって国中走り回れると思った。夢は辞令とともに秒で壊れた。
「所長、私も外の仕事いきたいです」
「馬鹿いうな。嫁入り前の女の子に傷でもついたらどうする!」
上司であるアーウィン所長に、今月10回目のお願いをした。まるで、娘のように私を扱う所長は、私を決して外の仕事には付かせてはくれない。
「警備でもいいから」
「ばか野郎、不審者がきたらどうする!」
「倒します」
「へんな男に誑かされたらどうする!」
「殴ります」
今日も私の希望は通りそうにない。
「だいたい、内勤だからお前の好きな正装が着られるんだぞ。外のやつらは、ただの隊服なんだからな」
「正装が汚れないようにちゃんと始末しますよぅ」
「剣を使うこと前提に喋るな!」
まったく、この子は······なんてぶつくさ呟く所長はやはり父親感が否めない。
私が内勤でもやっていられる唯一の救いは隊服の正装が着られることだった。騎士団の正装は、「誠実であれ」の理念が込められた真っ白な制服なのである。とにかくかっこいいのである。もちろん私の薄紫のロングヘアーにもバッチリ映える。
飾緒が右肩から真鍮色の組み紐のように胸元に流れ、肩章はその階級により、様々なデザインでかっちりとはめられ、そこから煌めくようにフリンジが施されている。
真鍮のダブルボタンの上着を羽織り、真っ白なズボンと固くて長い編み上げの軍靴を履けば、あら不思議。どんな馬鹿も誠実な騎士に見えるのだ。ちなみに、普通の隊服は濃紺のダブルボタンタイプだ。肩章も飾緒もなんにもない。
お偉いさんがたまにくるので事務所の一応事務方トップであるアーウィン所長とその補佐数人は常時正装をきているのだ。
「そもそもお前、スカートはどうした!」
「自宅で静かに眠ってますね」
女性用の隊服の下は本来スカートなのだか、私は断固として履かなかった。
「いつ悪者に剣を振るうか、わかりませんからね」
そんな日はこないぞと、隣でアーウィン所長は項垂れていた。
そんな生活を3年続けたある日。
唯一外のメンバーと接触のある朝練の最中に、就業時間前にも関わらずアーウィン所長が、真っ青な顔して鍛練所に入ってきた。
「クリスティーナ!お前、一体何やらかした!」
アーウィン所長の叫びとともに、私は事務室に連行された。