第1話 ムカつく上司は抉り込むように打つべし!
「てめぇ!誰がこんなことやれって言った!」
オフィスに怒号が響く
「誰って、部長が言ったんじゃなですか?」
朝から理不尽にアホな上司に叱られる俺は枝井 楠雄、25歳、独身だ。
「嘘つくな!俺が言ったなら証拠だせ!」
こう怒鳴り散らしているのは俺の上司だ、今時こんな奴いるの?って言う位清々しいパワハラの塊みたいな上司だ。
「ありますよ、証拠、毎度の事なので録音してあります」
「嘘つくな!仮に録音してたなら盗聴だ!」
「いやいや、この前同じようなやり取りで証拠に録音でもしろって言い出したの、部長ですよ?」
「うるさい!そんな事言ってない!ちょっとそれ貸せ!」
そういうと上司が俺から無理やりボイスレコーダーを取り上げると踏みつけ始めた。
「ちょっと!何するんですか!それこそ器物破損じゃないですか!止めて下さい!」
「うるさい!」
証拠隠滅を図ろうとする部長を止めようとすると、突然顔を殴られた。
「邪魔をするな!お前が悪い!」
一瞬目がチカチカするが直ぐに怒りが沸騰した、今まで溜まっていた感情が一気に溢れ出す。次に我に帰った時には部長の顔面に俺の右拳がめり込んでいた。あ、やばい、と思い腕を引こうかと思ったが、先に手を出したのは部長だし、ま、いっか!と、そのまま爽快に振り抜くことにした。
ガシャン!!ドッ!
部長がヒキガエルみたいに仰向けに倒れこんだ。
「う、ぐぐっ…」
意識はあるようだ、意外と大丈夫そうで安心した。丈夫に産んでくれた両親に感謝するといい。
あー、やっちゃったなーと、少し後悔の念が無いわけでは無いが、その数万スッキリ爽快!1週間分の便秘がスッキリ出た以上の快感!まっ、いっか!と思っている。
周りを見ると同じオフィスの女性社員はビックリした顔が殆どだが、男連中は半分は笑顔かサムズアップを送って来ている。それもそうか、女性社員には甘々だが、部下の男性にはみな同じよにパワハラをしていたのだからみな気持ちは分かるようだ。
「…き、貴様、こんなことして、タダで済むと…」
「思ってないです!でも先に手を出したのは部長ですしー、器物破損、いや、無理やり取り上げた上で手を挙げできたので強盗致傷ですか?僕のことよりご自身の心配をされた方がいいと思いますよ?」
「う、訴えてやる!!殺してやるからな!」
「ほうほう、望むところですよー、ちなみにボイスレコーダー、まだ録音中になってますよ?脅迫も追加ですね?訴訟案件盛モリじゃないですか?こんなに食べきれるかなー僕ー。」
「貴様ー!○×△!!」
もはや怒り狂い過ぎて呂律が回ってない、何を言ってるか分からない状態だ。
後日、部長は今までのパワハラやセクハラが上に公になり自主退職を進められ退職、大幅に退職金も削られたらしい。俺もさすがにお咎めなしとは行かず、アフリカに海外転勤を迫られ、退職する事にした。送迎会は同じ課の男性諸君から壮大に行って貰った
「よくやった!」
「お前は俺たちの英雄だ!」
「おお!我らの勇者よ!」
もう賛辞の声が凄かった、ほんとに英雄になった気分でとても気持ちよかった。そのままハシゴで朝までキャバクラでちょっとした英雄ハーレムごっこを堪能した。そう言えば昔はよく異世界転生もののアニメをよく見たものだ。とは言え、現実は甘くない。貯金はまあまああるが、直ぐにでも就職活動しないとなー、失業保険の手続きもしないと…。無職になっても色々とやることはあるのだ。
さて、何処に転職しようか?職種は?
「うーん、営業はもうやだなー、ノルマとかやだし、肉体労働も嫌いじゃないけど歳取った時の事を考えるとキツいしなー。」
因みに前職は医療機器の営業である。これでも成績はそこそこ優秀だった。
「お前は才能があるよ、営業、と言うより、詐欺師の」
と、新人の頃教育係の先輩によく言われたものだ。
さすがに詐欺師になる訳にはいかないので、明日にでもハローワークに行ってみよう。離職届けも届いたら直ぐに出さないと。
こうして俺の転職活動は幕をあけるのだった。




