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009 海運都市コスカで

【三神公爵領 海運都市コスカ 行政庁舎】


 「赴任が遅くなってすまないな。」 ロアは、領主である父からコスカの代官に任命されながらも1週間以上もほったらかしにしていた行政庁舎に顔を出した。

 「いえいえ、赴任が遅れるとの連絡は受けておりましたので何も問題ございません。 それに、ご領主様から代官職をロア様に引き継いだ後は、そのまま副代官としてロア様の補佐をするよう言われております。

 それと、代官邸を引き続き私が使っていいと言われましたが、本当に宜しいのでしょうか?」 今まで代官をしていたララタ上級執政官が聞いてくる。

 「ああ、それでかまわない。 思ったよりも軍の仕事が忙しく、あまりこちらに顔を出せない。 領軍海軍基地の長官用の官舎に寝泊まりするつもりだ。

 後、通常業務の決済権も与えるので、処理しておいてくれ。 業務報告は、私の携帯情報端末に送っておいてくれれば後で目を通しておくが、秘匿レベル4以上の情報を含む場合は暗号回線で軍司令部の長官執務室の専用端末に送っておいてくれ。」

 「分かりました。 全てお任せください。」

 「それにしても、代官がそのまま補佐として残ってくれて本当に助かった。 王国海軍の方は酷いありさまでな、苦労させられた。

 それと、庁舎にある代官執務室だが、十分な広さがあるようだな、私と君の相部屋で良いだろう。 後で机等一式、手配しておいてくれ。」

 「お任せ下さい。 しかし、本当にお疲れの様ですね。 顔色が優れないようですが大丈夫ですか?」 ララタ副代官が気遣うように聞いてくる。

 「そうか・・・  否、問題ない。 気遣いに感謝する。」 実際のところ、慣れない義肢や王軍関係のごたごたでかなりのストレスを受けており、体調が良くなかったが、貴族として弱い姿を見せる訳にはいかない事から無理をしていた。

 前世の自分だったらとっくに寝込んでいただろうが、こちらの世界での貴族としての21年の人生経験が今の自分を支えているのだろうな・・・ ロアはそう思いながらも業務の引継ぎを続けていった。



【三神公爵領軍コスカ海軍基地 王国海軍・公爵領海軍合同司令部 長官執務室】


 行政庁舎での業務引継ぎに思った以上に時間がかかり、海軍司令部に戻って来たときには既に日が暮れていた。

 「流石にきついな・・・   明日にしよう。」執務机の上に積み重なった書類を見てロアの心が折れた。

 その日はそのまま官舎に帰って休むことにしたのだが、ざっと急ぎの書類が無いかだけ確認しようと椅子に座り書類を見始めた。 そして、何で軍関係の書類は電子データにしないで紙に印刷するのかな等と思いながら寝落ちしてしまう。


 「ファイエル・・・  夢か・・・」 体のあちこちに痛みを感じながら目を覚ますと、すかさず時計に目を向ける。

 「0630・・・ もう朝か、失敗したな・・・」 疲れがとれるどころか、余計に疲れが溜まった気がする。


 午前中はうとうとしながらもなんとか仕事を片付け、昼休みに1時間ほと仮眠(有事の際に司令部に泊まり込む事があるので、折り畳み式の簡易ベットが置いてある。)をとった。

 午後からある程度調子が良くなったロアは、伸びを一つしてから部屋を出て行った。



【同基地内 司令部作戦指揮室】


 ロアが作戦室に入室すると、それに気が付いた近くの隊員が「長官が入られます。」と声を上げた。


 室内に居た隊員が全員姿勢を正しロアの方を向くが、ロアが軽く顎を引いて答えるとすぐさま元の作業に戻っていく。 少しの間その様子を眺めた後、作戦室の後方にある指揮卓に向かい、幕僚達に声をかける。

 「王国海軍と三神領海軍の統合運用を開始して数日経ったが、何か問題はないか?」

 「若様に報告するほどの大きな問題は起きておりません。」 皆を代表して幕僚長が答える。

 「了解した。 ・・・いい加減、若様呼びを止めないか?」 ロアが顔をしかめながら言うが、領軍の高官は、ほとんどがロアが小さな子供の時からの付き合いなので、微笑ましそうな表情を見せるだけで改めようとしない。

 「若様は若様ですからな、ご領主をお継になったら呼び方を改めさせていただきます。」

 「その頃にはお前達全員、定年退職して居なくなっているだろうが・・・」 ロアがため息をつきながら答えると、そう言えば大きな問題ではないですが、気になる事が一つありますな、と幕僚長が話を進めてしまう。

 「元々、王国海軍と三神領海軍は合同訓練を実施していたので、共通の指揮マニュアルや運用マニュアルがあります。 少数部隊の直接指揮なら問題ありませんが、指揮支援システムの電子リンクを使って多数の部隊運用を実施すると、王国海軍と三神領海軍の使用コアやOSの規格が違うためデータのコンバートに時間が取られ、陣形に乱れが出ます。」

 「それは・・・  全艦艇のシステムを換装するわけにもいかないし、そのままだな。 今時、大規模な艦隊戦が起こる事も無いだろう。」 ロアはそう言いながらも心の中で愚痴ってしまう。

 OSが違うって何だよ、前世のゲームにOSなんてパラメーター存在しなかったよ・・・ そもそも宇宙で戦うゲームだから、海で使う戦闘艦艇とか出てこなかったよ・・・  

 この後、幕僚達と話を続けながらも心の中では愚痴が止まらなかった。


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