083 トクリ司令の苦悩
【辺境宙域 辺境軍司令部 指揮卓周辺】
遂に我慢出来なくなったアリスティア王女が供回りを連れ辺境軍司令部にやってきていた。
第2特務艦隊の指揮代行に来ていたリラ男爵の乗艦『礼文』と辺境軍司令部は通信回線を確立させており、リラ男爵はロアについてアリスティア王女から怒涛の質問攻めにあっていた。
「どういう事か説明して頂けますか? 辺境軍司令部にロア様につていの艦隊行動記録を開示するよう求めても機密情報という事で教えてもらえません。
そこで軍トップの統合本部長から辺境軍司令部に艦隊行動記録の提出を命じてもらったところ、軍事機密ではなく、三神家としての機密情報との事で断られたのですが?」
「それについては・・・ 三神家の利益を守るためというか・・・ 」リラは本当の事を言うわけにもいかず言葉を濁す。
「ロア様を探すために必要な情報を隠すの事が、三神家の利益になるとはどういう事でしょうか?
まさかとは思いますが三神家にとってロア様が邪魔になった・・・ いえ、三神家はロア様を見つけられると困る事でもあると言うのですか? それで情報を・・・」
「待って下さい。 我々は兄上を全力で捜しています。 しかし、場所に問題が・・・ 三神うんぬんではなく、人類の未来に影響が・・・ 通信回線などで話す事柄ではないのです。 それに私の判断で言う訳には・・・ 父上の許可が必要です。」
しかし、そんな事でアリスティア王女が納得する訳もなく、直接『礼文』に乗り込んできた。
結局、根負けしたリラが艦隊行動記録を見せたが、ロアが消息不明になったポジションが余りにも遠方であり、なおかつ単独ワープが出来る事を隠しているため納得してもらえずにいた。
結果、その後もアリスティア王女を中心に騒ぎが拡大していった。
しばらくすると、貴族達にもロアの消息不明と三神家の不自然な対応が噂になり、中には反国王派の三神公爵家現当主のロイド公爵が親国王派の三神公爵家次期当主のロア伯爵を亡き者にしたのでは? などというデマまで流れ始めていた。
他にも、辺境宙域偵察中に消息を絶ったという話から、約1年後にやって来るはずの敵侵略艦隊が早くも現れ、偵察艦隊が撃沈されたのでは? 迎撃のためすぐにでも艦隊を集結させなければ等、無責任な噂話が増えるにつれ、ロアの消息不明についての騒ぎは国民達の間にも広まっていった。
【ロア消息不明ポイント 王国海軍第2特務艦隊旗艦『久須見』及び第102戦隊】
『久須見』率いる第102戦隊は無事目的地へとたどり着いた。
トクリ司令は早速とばかりに全艦を散開させ、センサー出力最大でロアを探し始め、通信による呼びかけや、偵察機による目視による捜索も同時に行い徹底的に調べ上げた。
結果、数百隻分のワープの残滓と思われるエネルギー反応以外何も見つからず手詰まりとなり、今後についての話し合いがおこなわれていた。
するとアラームが鳴り響き、オペレーターからの報告が、「艦隊正面、距離4000、ワープに酷似した正体不明のエネルギー反応を確認。」
報告を聞いたトクリ司令はすぐさま艦隊に密集隊形を取らせると共に、シールドを重ねた。
皆が見守る中、光と共に1隻の宇宙船が現れ、レーザー通信に反応が・・・
「こちらはB-SBA07所属、04A1です。 貴艦隊はロア様配下の第2特務艦隊でしょうか?」
予想外の事態に一瞬ボーゼンとするが、慌ててトクリ司令が、
「はい、第2特務艦隊で間違いありません。 が、なぜそれを・・・」
「我々は、『あまつかぜ』と情報連結を行い其方についてのデータを得ています。 それで、来訪の理由は何でしょうか?」
「我が艦隊の任務は、連絡を絶ったロア様の捜索救助活動です。 もし居場所を知っているなら教えて頂きたい。」
「了解しました。 ロア様はB-SBA07基地を経由してSBA00基地へ向かっています。 詳細情報を送りますので、情報連結をお願いします。」
「分かりました。 回線開きます。」
ひと通りのやり取りを経てロアの情報を得たはいいが、これからどうしたらいいか・・・
ボーゼンとして言葉を無くしている部下達を見ながらトクリ司令は頭を悩ますのだった。




