081 音信不通
【王国軍月面基地 三神公爵領軍専用エリア 情報センター】
その部屋にはロイド公爵とリラ男爵がいた。 そして、正面の大型モニターには王国海軍第2特務艦隊司令のトクリ准将が映し出され状況説明をしていた。
「ロア伯爵との連絡が取れなくなって約120時間が経過しました。 伯爵家の執事と辺境軍司令部の幕僚長の二人は遺跡戦艦の事を事前に教えられており、ロア伯爵が周りに内緒で遺跡捜索をしている事を知っていたため王宮等からの問い合わせに対し、「通常任務実施中、異常なし。」でごまかしてきましたが、ここまで連絡がつかないのはどう考えてもおかしいとなり、同じ秘密を知る私にどうしたらよいだろうか? と、相談してきました。
しかし、私にも判断がつかなかったためお二人に連絡を入れさせて頂きました。 今後の対応について指示を仰ぎたいと思います。」
「「・・・」」
「 ・・・また厄介な・・・ しかし、120時間の音信不通は明らかに異常事態だ。 遺跡については秘密とし、それとなく事故の可能性を示唆して捜索部隊を出させろ。」
「 ・・・その事について問題が・・・ 通信の届かない遠方に行っていたため音信不通になるまではワープ機能搭載艦が伝令艦として定期的にワープして来て情報のやり取りをしていたのですが・・・ 最後に送られてきた艦隊ポジションがあまりに遠いのです。 王国軍艦より何倍も速いロア伯爵領軍の軍艦でも目的地に着くまで100年以上かかる計算です。 辺境軍には派遣できる艦がありません。」
「 ・・・何だってそんな遠くまで・・・ 単独ワープ機能を秘密にしている現状、ロアの消息不明ポイントについても表に出せんな。」
「「・・・」」
「だが、何もしないわけにもいかない・・・ 辺境軍へは消息不明ポイントを秘密にし、全周囲捜索を実施させろ。 捜索しているふりで時間を稼ぎ、ロアの帰還を待つ。
ところで、こちらに単独ワープのできる艦はあるのか?」
「はい、有ります。 時間稼ぎの件については辺境軍幕僚長に伝えます。 それと単独ワープ可能艦は、有人艦では補給艦『久須見』1隻、無人艦は第102戦隊の6隻が有りますが、『久須見』を動かすと第2特務艦隊の指揮が出来なくなります。」(第2特務艦隊は『久須見』以外全て無人艦。)
それを聞いてリラが、「では海軍長官の私が視察の名目で辺境宙域に出向いて第2特務艦隊の指揮を引き継ぎましょう。 トクリ准将には7隻を率いて兄上の捜索に出てもらいます。
何とか30時間でそちらに行きますので、そちらも補給等の準備をしておいて下さい。」
そう言いながら父の方を見るとロイド公爵が頷く。
「はっ、了解しました。 それでは失礼いたします。」 そう言い残しトクリ准将がモニターから消えた。
「 ・・・では父上、行ってまいります。」
「うむ。」 重々しく頷きながら退室するリラの後ろ姿を見送ったロイド公爵だが、心の中ではあの幼かったリラが随分立派になったと親バカ丸出しで悦に浸っていた。
【辺境宙域 敵ゲート前 王国海軍第2特務艦隊 旗艦『久須見』】
トクリ司令は全乗員を集め訓示を行っていた。
「辺境軍総司令官のロア伯爵との連絡が途絶えて120時間が過ぎた。 辺境軍では捜索が開始されているが、我々もそれに加わる事となった。 第2特務艦隊に交代の指揮官が着きしだい『久須見』は第102戦隊を伴って捜索活動を開始する。 各員は長期航海の準備にかかれ!」
「「はっ」」
そして時は過ぎ、リラ長官に指揮を引き継いだトクリ司令は『久須見』と第102戦隊を率いて最大加速で突き進んでいた。(単独ワープは味方にも秘密なので、各捜索部隊の索敵範囲の外に出る必要がある。)
「司令、我々は何処に向かうのでしょうか?」
「行先は、ロア様が最後に確認できたポイントだ! 但し、この事は最重要機密情報として他の捜索部隊は知らない。 諸君はこの事に関しては元より、今後見聞きする全ての事柄について一言でも外部に漏らせば、厳罰をもって対処するので気を付けてほしい。」
「「り、了解しました。」」
「よし、各艦のY-99システムを起動させろ。」
「了解、各艦システム起動しました。 って、何ですかこれは! 航法システムにワープ航法が追加されましたよ!」
「そうだ、この艦と第102戦隊にはロア様が用意したゲートを使わない単独ワープシステムが組み込まれている。 いざという時の緊急脱出用だったのだが・・・ ロア様の最終確認ポイントが余りにも遠いのでワープ以外では100年経ってもたどり着けない。 今回のみ、やむを得ず使用する。」
「「・・・」」
「言葉もないと言った感じだな・・・ いいか! 上層部が単独ワープを秘密にしているのにはちゃんとした訳がある。 一言でも漏らせば最悪の事態もあり得る。 肝に命じておけ!」
「「つっ ・・・了解しました。」」
「もう少し距離を稼いだらワープする。 オペレーターはワープ航法のマニュアルに目を通しておけ。」




