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008 救難艦運用研究所(旧王国海軍司令部)

【ダケタ王国 救難艦運用研究所(旧王国海軍司令部) 会議室】


 あれから一週間、ロアは頑張った。 本当によく頑張った。


 人材確保のため人事局に行っても、人員不足を理由に断られる。 場所を確保しようにも、予算不足を理由に話が進まない。

 結局、唯一問題の無かった三神公爵領海軍を中心に改編を行う事になった。 王国海軍の実働部隊(艦艇群)を公爵領海軍基地へ移動させ公爵領海軍司令部を中心に合同運用(通常であれば、決して認められることは無いが、深刻な人員不足の宇宙軍に人員を移動させるために、海軍の人員を削減するという理由を付けることで認められた。)する事に、王国海軍司令部の陸上基地と周辺部隊(船の修理ドックや警備、通信、補給等)の人員と施設を救難艦運用研究所とその職員として流用した。(申し訳程度に数名が宇宙軍に転属した。)


 会議室に集まった幹部達を前にアリスティア王女が研究所の運用開始の挨拶をしているのを聞きながら、忙しかった一週間を思い返しているといつの間にか挨拶も終わり、今後の研究所の予定や計画についての話し合いが始まっていた。

 「それでは、どのような救難艦を建造するか、忌憚のない意見を聞かせてほしい」開発課長のドン村上中佐(旧王国海軍、造船修理補給施設長)が周りに話しかける。

 「救助が目的ですので、敵の攻撃に耐える重装甲や病院並みの医療施設が必要なのでは?」

 「現場に早く駆け付ける為に高出力の推進器や、発生する高Gを打ち消すための慣性制御装置も必要なのでは?」

 「それなら、既存の病院船を基に重装甲や推進器を取り付ければいいのではないか」

 「否、それだと艦の基本構造体の強度が不足している。 病院船は元々民間船を基に作られていて軍用艦より華奢だからな、船体が折れるぞ」

 「なら、重装甲の戦艦から武装を撤去して医療機器と推進器を増設すればよいのではないか?」

 「悪くないと思うが、それだと建造期間や建造費が凄いことにならないか?」

 話がまとまらないまま時間だけが過ぎていく。

 

 その中でロアは、会議の話を聞きつつも別の事を考えていた。 前世のゲームには病院船や救難艦などの支援艦艇が出てきたりしなかったな・・・  違うか、開発された技術で設計するとき戦闘艦しか作らなかっただけか。 デフォルトで出てくる艦艇も戦闘艦しかなかったけど、ゲームの売りの一つとして自分の宇宙船を好きに作れる仕様だったから、何でもありなのかな・・・  しかし、確認できた軍艦や敵艦はゲームと完全に一致している・・・  戦闘艦艇だけに何かしらの強制力が働いているのか?

 ロアが考え込んでいると、アリスティア王女から意見を求められた。

 「副所長、さっきから何か考え込んでいるみたいですが、意見はありませんか?」


 ロアは、まだ考えが纏まっていませんがと一言入れつつ意見を話し始めた。

 「戦域が拡大傾向にあり、早期配備を目指すために生産性の良さを第一として、民間の小型船をベースにして推進器を構造限界まで増設、装甲は必要最低限とし軽量化、敵からは優速を活かした離脱を基本とします。 又、医療機器については、価格も高く必要な専門職員が多数必要になることから、救難艦への搭載は無しとします。 その代わり、負傷者の現状維持を目的としてコールドスリープポットを多数搭載、治療は後方に下がってからすればよいかと。」

 「なるほど、重装甲の大型艦をどうやって早く安く作るかを考えるのではなく、早く作れる小型艦に必要最低限何がいるかを考えるということですね。」 アリスティア王女が素晴らしい考えですねと言うと、周りからも賛同の声が上がる。

 「この艦なら、重装甲の大型艦に比べ建造に掛かる工期は10分の1以下、費用については100分の1位になりそうですね。」開発課長のドン中佐も良さそうですと言い出し、気味が悪いほどあっさりと開発計画の基本方針が決まってしまう。

 「そう言えば、副所長が考えがまとまっていないと言っていたのはどの部分だったのですか? 全く問題無かったようですが。」会議参加者から声が上がる。 そういえばと周りの視線も集まる。

 「そうですね・・・  この救助艦が完成すれば駆逐艦よりも速力の速い船になると考えています。 それでも十分に速いとは思いますが、将来的に敵の高速艦出現の可能性や、少しでも早く現場へ進出する事を考えて、圧倒的な速力を誇る高性能艦を建造したいと考えています。

 しかし、高性能な推進装置や慣性制御装置をどうやって開発するか、その予算がどれだけ膨大なものになるか・・・  その辺を考えていました。」 ロアは、そう答えながらも一つの思いつきがあった。

 それは、前世のゲームの場合はスタートの時に選んだ国の技術(国によって、攻撃力が高いとか、防御力に特化しているとか、速力に優れているとか等の違いがある。)しか使えなかったが、この世界なら他国の技術を使うことが可能かも知れないということだ。 ポーカーフェイスで誤魔化しながらも、チートっぽくなってきたと少し興奮しながら話を続ける。

 「私としては、推進装置等の機関関係の技術力が高いギリスンド連邦国との共同開発が出来れば技術力や予算の問題を早期に解決できるのではないか? と考えています。」

 そんな事が可能なのか? 周りが騒めきだす(この世界では、国家規模で他国との共同開発の実績がいままで一つもない)。

 「それは・・・」所長のアリスティア王女が思案顔で続ける。

 「この話は研究所だけで結論がだせる問題ではありませんね。 持ち帰って王宮で検討することとします。」

 この日の会議は、高速小型艦救難艦の設計と建造を最優先目標とし、高性能艦については後日検討という結論でおわった。

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