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007 問題だらけ

【三神公爵家本邸 領主執務室】


 昔は、王都から三神公爵領まで馬車で1週間程度かかっていたが、現在では専用機で1時間もかからない事から、バルコニーに寄り道していたロアが公爵邸に着いた時には、すでに話し合いに参加可能な家族がすべて揃っていた。

 「遅くなりました。 申し訳ございません。」ロアは部屋に入るなり父ロイドの方を向き頭を下げる。

 「問題無い、そこに座れ。 さて、皆に集まってもらったのは陛下との話し合いで当家の立場が変わる事になったためだ。

 今までは、宇宙開発反対派による混乱を防ぐため、三神家は反国王派のふりをして国内の安定に尽力してきたが、既に反対派の貴族達は力を無くした。 又、宇宙には人類の敵と言える正体不明の連中が居る事から、王家と三神家の関係を良好なものとし協力体制をとることになった。

 但し、私は国王と仲が悪いという演技を長く続けていたから、いきなり関係が変わると怪しまれる可能性がある。 王家と三神家が裏で繋がって貴族達を誘導していた事が露見したら非常に不味い事となる。

 そこで、次期公爵のロアに王家と仲良くしてもらい、現公爵の私が嫌々それを黙認していることにする。

 頼むぞ、ロア。」

 ロアは両家の関係改善について、陛下からの話ではそれなりに時間をかけていくものと思っていたので、父が関係改善を急いでいるように感じられてこの違いは何だろう? と考えながらも「はい、お任せ下さい。」と返事をする。

 「うむ」ロイドが頷きながら話を続ける。

 「それと、ロアは男爵になったことだし、海運都市コスカの代官を任せる。 コスカには、王国海軍司令部もあるし、海軍長官になったお前には丁度いいだろう。

 後、コスカには三神領軍の海軍基地と艦隊もあるが、それもお前に預ける。 三神公爵領軍海軍長官も兼務するように。」

 いやいやそれはないだろう。 ダケタ王国の貴族で軍規模の海軍を持っているのは三神家のみ、その三神領の海軍と王国軍の海軍を両方指揮するという事は、王国にあるほぼ全ての海軍戦力を掌握する事になってしまう・・・ いくら軍の主戦場が宇宙に変わったと言ってもそれはまずくないかな・・・  頭の片隅でそんな事を考えながらも「はい、分かりました。」ロアは了解してしまう。


 「私とリラは基本的に宇宙に居ることになるだろうから、 領地全体については、引き続きエリナに任す事とするので、宜しく頼む。」ロイドのこの言葉をもって堅苦しい話が終わり、家族の他愛のない会話が始まった。



【海運都市コスカ 王国海軍司令部 長官執務室】


 ロアは。昨日の今日で海軍長官として赴任し、業務の引継ぎに苦労していた。

 「まさか、前長官が司令部の幕僚をそっくりそのまま全員連れて行くとは・・・」

 海軍中枢の司令系統の再構築に頭を悩ませていると、突然執務室の扉が開かれ、アリスティア王女がお付と共に現れた。

 「ロア様、救難艦運用研究所の開設について相談しに参りました。」

 それもあったか・・・ 心の中で面倒だなと思いながらも、ポーカーフェイスでロアが対応すると。アリスティア王女にそんなに嫌がるなんてとなじられた。

 「嫌がるなんてとんでもありません。」ポーカーフェイスを続けながら席を立ち、必死に誤魔化しながら、会議室へと促す。



【同上 第一会議室】


 皆が席について自己紹介が始まったが、たった3人(所長のアリスティア王女、副所長のロア大将、総務課長のリイナ山下少佐)なのですぐに終わってしまう。

 そのまま総務課長のリイナ少佐による研究所の現状説明が始まる。

 「今のところ、王城の一画に救難艦運用研究所開設準備室が作られており、準備室長の私と総務課に配置予定の準備室員三名が着隊しています。

 研究所の開設及び、所長と副所長の辞令交付は一週間後の予定になっています。」以上ですと言ってリイナ少佐の説明が終わる。

 ロアは、頭をひねりながらリイナ少佐に視線を向け訊ねる。

 「救難艦の開発研究について訊ねるが、人員や場所はどうなっている? 後、運用についての研究員は誰になる予定だ?」

 「未定です。」リイナ少佐の返答に思わず固まると、ギギギとアリスティア王女に顔を向ける。

 王女と視線が合うとにっこりと微笑まれ、その可憐な唇から「ロア様に全てお任せします。」悪魔の様な言葉が・・・


 ロアは、心の中で罵倒しながらポーカーフェイスを続け訊ねる。

 「後、一週間しかありませんが?」「ロア様にお任せします。」速攻で王女に返される。

 冷や汗を掻きながら王女と見つめ合っていると、リイナ少佐が言いにくそうに口をはさんでくる。

 「技術者や幹部の内定者はいたのですが、全部宇宙軍に持っていかれました。 大量の損傷艦の修理や戦死者による人員不足が深刻との事で・・・」

 「そうですか・・・」ロアは、俺のせいか・・・ 皆死んじゃったからな等と考えながら落ち込んでいく。 ゲームならただの数字だったけど、知り合いを含め大勢の人が簡単に死んでいくこの世界に恐怖すら感じる。


 「分かりました。 こちらで対応します。」途方に暮れながらも最後までポーカーフェイスを続け会議を終え、王女達が帰るのを見送った。


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