061 艦隊編成会議
【敵領域宙域 囮(子爵)艦隊旗艦『あまつかぜ』】
王国軍統合参謀本部の決定を受け、子爵領艦隊はより多くの敵艦隊を誘引するべく挑発行動を強化した。
「『あまつかぜ』、本部の決定に従い敵艦隊の誘引を最重要目標とする。 エネルギー消費を1.5倍まで上げる事を許可するので敵艦への攻撃を強化し注意を引け。
捜索・索敵に付いては、現状維持とするので無理の無い範囲で実施せよ。」
「了解しました。 ロア様。」
そのままロアは考え込んでいた。
『あまつかぜ』達AIは敵艦隊の行動を学習し対応を最適化している。 少なくともこの敵に対してはAIだけで十分に対応できると言っていいだろう。
試しに3個戦隊36隻を『あまつかぜ』の制御から外して独立運用を1週間程試したが全く問題無かった。
遺跡戦艦が大量生産出来れば正面から敵を叩き潰せるが、遺跡基地に備蓄されていたパーツの量では後100隻も建造したら終わってしまう。
いくら高性能でも全部で250隻にも届かない数では勝てない。 勿論遺跡基地の生産設備をフル稼働させているが、10日で1隻分のパーツをつくるのがやっとだ。
子爵領宙域外縁部に建設した三神関連企業による自動化造船所を始めとする生産拠点も拡大を続けているが、三神公爵家や近衛艦隊への各パーツの供給もしなければならず思うように建造が進んでいない。(王国宇宙軍へのパーツ供給についてはライセンス生産の契約がなされた王国の軍事企業体が間もなく生産を開始予定。 但し生産されるのは高性能推進機関や慣性制御装置、長距離重レーザー砲などで三神コアやそれに付随する拡張パック等制御系は生産されない。)
それに、三神関連企業生産のパーツは従来の物と比べれば高性能だが、遺跡技術で造られた物と比べれはその性能は数十分の一に過ぎない。
他にも存在するはずの遺跡の確認や、存在するかも知れない前世のゲーム内に作っていた自分の基地を探しに行きたいが、海軍長官等の重責を担う立場では簡単には出歩けない。
今回の作戦が上手く行っても数か月~数年後には100万隻を超える敵の大艦隊が現れる可能性もあり、もしそうなったら、大量の囮艦隊を編成して敵艦隊の目を逸らすしかなくなる。
正面決戦しようにも此方の生産能力、人的資源では消耗についていけない。 1度でも正面決戦を行えば後はズルズルと負け続けるだろう。
敵の本拠地を叩けば終わるだろうけど、何処に有るか分からない(前世のゲームでも出てこなかった。)し、何百万光年も先に有ったらたどり着く前に寿命が尽きて死んでしまう・・・ どう考えても今のままだと無理ゲーの様な・・・ ロアの思索は尽きることがなかった。
【王国軍月面基地 三神公爵領軍専用エリア 作戦指揮室】
そこではロイド公爵とリラが幕僚を集め話し合っていた。
「皆も渡した資料に目を通したと思うが、王宮からロアの艦隊への増援依頼が来ている。 増援艦隊の派出は既に決定事項だが、艦隊編成についての皆の意見が聞きたい。」
早速幕僚達から意見が出される。
「ここは高加速可能な全艦を出すべきです。 修理等の不稼働艦が1500隻程いますが、8500隻は出撃出来ます。」
「いや、それでは何かあった時に残された従来型の艦5000隻で戦う事になる。 敵艦隊が此方に出現した場合、敵を誘導し時間稼ぎする為に高加速艦をある程度残しておく必要がある。」
「補給の問題もある。 我々の艦艇は元々省人力化が進んでいるが、それでもそれなりの物資が必要になる。 任務の性質上補給艦を同道する訳にもいかない・・・ 従来艦を改装して高加速艦に仕立てた船では難しいだろう。
ただ、新型艦なら整備等も完全自動化されており、長期間ドック艦等の支援なしで稼働し続けられるうえに、乗員を1直1名の3直にすれば1艦あたり3名で出撃させられる。 そうすれば艦内スペースに積み込む分の補給物資だけでも、かなりの長期行動が望めるだろう・・・」
「しかし、新型艦だけでは・・・」
などと話合いが進み、最終的には・・・
「よし、皆の考えは分かった。 増援として5000隻の艦を出す。 指揮官はリラだ。
内訳は新型艦1000隻と改装高加速艦4000隻だ。(三神公爵領に有る新型艦は1000隻で全部である。)
ロアの艦隊に合流する前に、ルコール殿下の本隊に合うはずだ。 そこで改装型の4000隻は整備補給を受け、行けそうならロアの艦隊を目指せ、無理と判断したらルコール殿下の指揮下に入れ。 判断は指揮官に一任する。
最悪、新型艦1000隻をロアの下に届けられれば良い。」
「「はっ」」
増援艦隊の出撃準備が始まった。




