059 攻略艦隊
【敵領有宙域 攻略艦隊 総旗艦『黒虎』作戦室】
敵領有宙域に進撃を開始して早や一ケ月、囮艦隊と違い攻略艦隊は静謐を保っていた。
センサー類はパッシブのみの使用とし、通信系は無線封止を徹底、自分達の存在を徹底して隠していた。
(無線封止は電波の発信を止めるだけで、受信は出来るので、本星や子爵艦隊からの情報を入手可能。 又、艦隊内では電波を出さないレーザー通信(近距離の通信のみ)を使用して情報の共有と艦隊行動の統率をしている。)
その甲斐が有って敵に見つかることなく、囮艦隊の後方約1週間遅れで追尾出来ていた。(攻略艦隊の一般戦艦と囮艦隊の高性能戦艦には何倍もの速力差が有るため、本来ならもっと大きな差がつくが、今回囮艦隊は敵艦を振り切らないよう速力を落としている為、この程度の差で済んでいる。)
「さて、今の所作戦は上手く進んでいる。 正直、此処まで敵に気取られることなく来れるとは思っていなかった。」 ルコール殿下が言うと、近衛艦隊司令のティ大将が
「正に奇跡と言ってよいかと・・・ 願わくはこのまま戦力を減らす事無く敵前線基地までたどり着きたいところですが・・・ 敵基地の予想ポイントまで後10日ばかり、最後の踏ん張りどころです。」
「そうだな。 さて、始めよう。」
幕僚達からの報告が始まる。
「先ずは中央の主力艦隊ですが・・・ 人員機材異常無し、士気も高く問題ありません。
次に右翼の諸侯艦隊ですが・・・ こちらも人員機材異常無し、士気についても問題無しと白井侯爵から報告がありました。
次に左翼の各国連合国艦隊ですが・・・ 一部の艦艇が機関に不調をきたし、隊列から遅れ始めています。 国によっては、長期間の無寄港行動をした事も無いので無理もないかと・・・ トリル大将からは問題無いと報告が来ていますが、下手に爆発事故でも起きれば敵に所在がばれてしまいます。 何かしらの手立てを考える必要が有るかと・・・
最後に後方の支援艦隊ですが・・・ 人員機材異常無し、士気についても問題無しとプロン大将から報告が来ています。」
少し考えてから、ルコール殿下が「ここまで来て敵に見つかるなどあってはならない。 航行に不安のある艦艇を全て支援艦隊に配置転換する。
工作艦で修理なり改修なりをおこない、使えるようなら支援艦隊の護衛戦力に組み込む。 使い物にならない艦については予備品として主要パーツを外した後、破棄する。
破棄した艦艇の乗員については、予備人員として支援艦隊の各艦に振り分ける。 振り分け内容はプロン大将に一任する。」
「しかし、トリル大将が了承するでしょうか? 左翼艦隊は只でも戦力が少ないのに、更に減らすとなると・・・ 」
「トリル大将も此処で事故の1つも起きれば作戦全体が危ぶまれる事は承知だ。 嫌とは言うまい。 私から直接話すよ。
それでもとなれば支援艦隊の護衛に付いている5個王国艦隊から替わりの戦力を回すと言うさ。」
「はっ、了解しました。」
「後はロア大将の囮艦隊が上手く敵基地を発見できるかだが・・・ 状況はどうなっている?」
「1時間程前に受信した囮艦隊からの定時報告によりますと、予定宙域の約12パーセント捜索終了との事で、今のペースだと全ての捜索が終わるまで、後90時間程掛かる見込みです。」
ルコール殿下が考えながら、「囮艦隊は敵艦隊に追いかけられながらの行動だからな・・・ 途中で捜索できなくなる可能性もありそうだが・・・ どう思うか?」
「そうですな、その場合はこちらで捜索するしかないでしょう、囮艦隊には敵基地発見より敵艦隊の誘引を優先してもらわないとなりません。
ステルス性の高い艦艇で別動隊を作り先行させておき、囮艦隊が敵基地を発見出来なかった場合に捜索を引き継げるように準備しておいた方が良いと考えます。」
「分かった。 取り敢えず別動隊の編成案を作成してくれ。 問題が無ければ直ちに実行に移す。」
「はっ、了解しました。」
その後、細かい打ち合わせを行い会議は終了した。




