058 既に敵艦45万隻がロアの艦隊を
【敵領域宙域 囮(子爵)艦隊旗艦『あまつかぜ』】
当初、敵艦隊の追撃を振り切るため最大加速を続けていた囮艦隊だが、敵の領域に入ると共に加速を抑えた。
今回の行動は、わざと敵に発見され惹き付ける必要がある事から、通信や索敵の為のセンサー類を最大出力で使用し、なおかつ敵を振り切らない様にする必要があった。
更に広範囲の敵艦を集める為、12隻を1つの戦隊として11個戦隊を編成し、それぞれに分かれながら進軍した。
(編成の内訳 子爵第1戦隊:海軍第1特務艦隊の12隻。
子爵第2~11戦隊:子爵領遺跡戦艦を12隻づつ)
今回の行動においては、『あまつかぜ』にオペレーターは1人も乗り込んでおらず、司令のロアだけがこの艦どころか、艦隊全てを見渡してもただ1人存在する人間であった。
「『あまつかぜ』、各戦隊が戦術リンクの範囲内で行動するよう調整を任せる。 以前、第1特務艦隊で敵大艦隊を誘導した時と違って、今回は敵の勢力圏内だ。 我々の後方から追って来るだけでなく、前後左右あらゆる方角から現れる。 戦隊同士で上手く味方をカバーしてくれ。」
「了解しました。ロア様。 ところでワープはし使用しないのでしょうか? 全艦艇単独ワープが可能なので、敵に包囲されてもショートワープで簡単に抜け出せますが?」
「出来るだけ、単独ワープを見せたくない。 単独ワープという発想自体を隠したいと考えている。 敵に知られたら、いずれ開発してくるかも知れない。
この技術を敵が使用しだしたら、敵の艦隊が留まることなく現れ、此方は簡単に飲み込まれていくだろう。 それだけは避けたい。」
ロアは自分の考えを『あまつかぜ』に伝へ、艦隊運用を任せた。
それから一ケ月、包囲されそうになった戦隊が出たり、それを別の戦隊が包囲網の外側から敵に近づき誘引する事で包囲網を崩したりと、順調に敵を引き付けていた。(他にもデコイを使ったり、機雷を撒いたり遠距離からの砲撃をしたりした。)
たった1人で乗り込んでいて暇になるかと思われたロアだが、身を隠す必要のない囮艦隊は大出力通信を盛大に行っており。 遠距離の為、多少のタイムラグは出るものの本星との連絡が出来る事から、代官や海軍長官としての業務用データが山のように送られてきており、忙しい毎日を送っていた。(嫌々な仕事関係だけでなく、王女や家族からの嬉しい私信なども送られている。)
そして日々の業務をこなしながも囮として動き回り、既に敵艦45万隻がロアの艦隊を追いかけて来ていた。
これにより、主隊である攻略艦隊から上手く敵を引き離すことに成功し、進軍を続けていた。
更に数日経ち、そろそろ敵の前線基地が存在すると思われるポイントに達したロアの艦隊は、無人偵察機等も活用して敵基地の捜索を開始した。
「『あまつかぜ』、予定ポイントに達した。 無人偵察機隊を発進させ付近一帯の捜索を開始せよ。
編成は『MQ-787E無人偵察機』と『MQ-801A無人偵察機』ペアとし、787型を先行、新型のステルス機801型は距離を開けこれを追尾、先行の機体が破壊されても必ず情報を持ち帰れるよう慎重に行動せよ。」
「了解しました。 偵察機隊の編成及び発艦を開始します。」
【B-17宙域 攻略艦隊集結ポイント 総旗艦『黒虎』作戦室】
時は少し遡り、囮(子爵)艦隊が敵領有宙域に侵入を始めてから2日程たった頃の攻略艦隊。
『特務艇83号』の敵艦隊発見報告から始まり、敵侵攻艦隊の殲滅、囮艦隊の敵領有宙域への侵入開始と作戦は順調に進んでいた。
ルコール殿下と近衛艦隊司令のティ大将は主だった幕僚を集め、作戦計画の最終確認をしていた。
「さて、始めよう。」 ルコール殿下のこの一言から会議は始まった。
幕僚による状況報告から、「一連の作戦は予定通りに進んでいます。 囮艦隊が敵領有宙域に侵入して48時間が過ぎました。
我々攻略艦隊は、2時間後の1200をもって作戦行動を開始、敵前線基地を目指し進撃します。」
次に別の幕僚による部隊編成報告、「攻略部隊はお大きく分けて4つの集団になります。 先ずは中央の主力艦隊、『黒虎』を旗艦として近衛艦隊と王国宇宙軍50個艦隊を併せて艦艇数130000隻。
右翼に各諸侯の艦隊を集めた諸侯艦隊85000隻、指揮は白井侯爵が行います。
左翼に各国から参集した連合国艦隊50000隻、暫定指揮官はギリスンド連邦国のトリル大将ですが、司令部は各国の人員を集めた合議制だそうです。
最後に、艦隊後方に補給艦30000隻、救難艦5000隻、工作艦や病院船等の特務艦艇1000隻、護衛戦力として5個艦隊、各艦併せて総艦艇数約50000隻、指揮官はプロン大将です。」
「今回我々は30万隻という前例のない大艦隊を持って敵前線基地の攻略に当たりますが。 それでも敵の戦力がこちらを遥かに凌駕しているだろう事は想像に難くなく、まともに戦っては勝ち目が無いでしょう。 囮として先行突入する三神子爵領艦隊が、どれだけの敵防衛戦力を引き付けられるかが作戦の要となります。
もっとも、囮作戦が失敗したとしても後が有りません。 作戦中止という選択肢は取れないでしょう・・・
その場合、強行突入となりますが敵のゲートだけでも破壊しなければ、我々人類に未来は無いでしょう。」 最後に幕僚長が締めくくった。
(ダケタ王国軍の宇宙艦隊は全部で70個艦隊だが、欠番や再編成中などの艦隊がおり、実働可能な艦隊は60個艦隊程、侵攻作戦に55個艦隊が参加しているため余力は無い。 今次侵攻作戦にやり直しは効かない。)
次回の投稿は週末になります。




