005 戦勝パーティー
【ダケタ王国 王宮 謁見の間】
謁見が始まり、ロアが国王の前に膝まづくと、国王が集まった貴族達を見わたしながら声を張り上げる。
「此度の戦いにおいて、四倍を超える敵に怯むことなく戦い、撃退したこと誠に大義であった。又、民間人に1人の被害も出さなかった事は称賛にあたいする。
よって、ロア三神少将に対し金二種鳳凰勲章を授与するとともに、男爵位を授ける。
又、大将へ特進させ海軍長官へ任命する。」
「はっ、謹んでお受けいたします。」ロアは跪きながら頭をさげる。
「ふむ、ロアよ面を上げよ。」国王が張り上げていた声を普通の音量に戻しながらロアに語りかける。
「はっ」
「この後、本来なら王国軍統合本部において、貴官の第21宇宙艦隊司令解任式と海軍長官就任式が行われるのだが、今回各式典は省略とする。
この後、王宮の大広間で戦勝パーティーがおこなわれるので、これに出席するように。」 言い終わると国王が謁見の間から退室して行く。
【ダケタ王国 王宮 大広間】
パーティー会場の一角に三神公爵家の面々が集まっていた。
「将来公爵を継ぐにしても、この年齢で男爵として貴族当主となる事は大変名誉なことだ。おめでとう。」父である三神公爵がロアにお祝いを言うと家族も次々に「「おめでとう」」お祝いを言う。
「ありがとうございます。」ロアが微妙な顔をしながらもお礼を言うと、事情は知っているがもっと堂々としろと父に苦笑される。
「それにしても、よく義肢の用意が間に合ったな。 国の事情も分かるが、我が家の名誉にも配慮してほしいものだ。」
「それについては、王宮側も十分に理解していたのでしょう。 典礼局があちこちに手をまわしてすぐに義肢を用意してきました。 もっとも調整が不十分で動きがぎこちないので後で再調整が必要ですが・・・」
ロアがリハビリでの苦労を思い出しながら父に答える。(それでも元の世界では考えられない位、高性能でビックリしたがな。)
「そうか・・・ それと、今夜大事な話があるから夜は本宅の方に来てくれ。」 父ロイドは、そう言いながら知り合いを見つけ、挨拶の為離れていく。
「大事な話ですか・・・ 母上達はなにか聞いていますか?」 ロアが残った家族達に聞いてみるが、皆知らないと言いながら、それぞれの知り合いのもとに向かう。
「おやおや、英雄殿が壁の花とは・・・」 ロアが壁に寄りかかって考え事をしていると、取り巻きを連れた派手な男が話しかけてきた。
「久しぶりだなツツイ、半年ぶりくらいか?」 ロアが返事をする。彼はロアと同期の宇宙艦隊司令の1人で、仲は悪くないがライバル認定されていて、よく張り合うとしてくるのだ。
「取り敢えず昇進おめでとうと言わせてもらうよ。今回は君に先を越されてしまったが、直ぐに追いついて見せるさ。 何せ海に降りる君と違って僕は宇宙で敵と戦い続けるのだからね。
君も伝統だけの古臭い海軍にいつまでもいないで、早く宇宙に戻れるよう頑張ってくれたまえ。」 ツツイは、言いたいことだけ言って取り巻きと共に去っていく。
「なんだかなぁ・・・」 ロアは呟くと、先度までの考えに戻っていく。
転生したはいいが、前世の知識で何が出来るか・・・ 技術レベルなどは、こちらの世界の方が余程進んでいるしなぁ~ ダメだ、何も思いつかない・・・ 前世の知識役に立たないじゃん・・・
後は前世でやっていたゲームとこの世界の酷似性についてなんだが・・・ ゲームはスタートする国を選び、その国固有の技術開発をして宇宙戦艦を設計し、敵の艦隊と戦う事を基本とした。SF戦闘シュミレーションなんだよなぁ~ 国ごとの技術系統や特色、敵艦隊の艦型を全部知っているくらいしか役に立つ知識がないな・・・
はぁ~ どうせ転生するなら魔法のあるファンタジー世界が良かったな・・・ 魔法使ってみたいし、チートな生活とかしたかったな・・・
「・・・」「・・・ア」「・・・ロア」「ねえロアってば」肩をゆすられて目の前に人がいる事に気が付く。
「あっ、ちぃ姉さま」どうやら考え事に集中しすぎていたようだ。
「ちょっとロア大丈夫? ぼーとしてるけど、怪我のせいで熱でも出ているんじゃない?」
「心配をおかけして申し訳ありません。考え事をしていただけですので問題ありません。」 気が付けば目の前に、武藤伯爵一家(ロメル武藤伯爵:第13宇宙艦隊司令及び武藤伯爵家当主。 ライラ伯爵夫人:3年前、ロメル伯爵に嫁いだロアの姉。)が揃っている。 こんな所で考え込んで周りが見えなくなるなんて、なにをやっているんだ俺は・・・ 取り繕いながら自分のうっかり具合に呆れる。
「義兄上ご無沙汰しております。 姉上もお元気そうですね。」ロアがごまかしながら挨拶すると。 「クスクス」思わすといった感じでライラ夫人が笑う。
「えっ・・・」訳が分からずロアが目を丸くして夫人の方を見ると、更に笑みを深くしながらライラ夫人が笑うので憮然としてしまう。
「だってロアったら小さい頃みたいに私の事をちぃ姉って呼ぶから可笑しくて・・・ 10年ぶりくらいかしらね。」
「えっ・・・」いや本当に何やってるの俺。 自分のうっかりに呆れながら赤面するロア。
「実際に疲れているのだろう、少し休んだ方が良い。」武藤伯爵に言われ、ロアは休憩を取るため一旦大広間を出て行く。