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004 トクリ中尉の報告 続き

 沈黙が続く中、暫らくしてロアがトクリ中尉に話しかける。


 「すまんな。避難船団と艦隊の現状はどうなっている?」

 「はい、現在避難船団の護衛については、駆け付けたロイド様達の艦隊が引き継いでいます。

 我々の艦隊につては、損傷が少なく航行能力に問題の無い約500隻が生存者の救助と行方不明者の捜索を行い、派遣された病院船に収容しています。 又、司令を含む重傷者については、順次この中央病院に後送されています。

 中破判定の1200隻については、一番近い基地に向かっていますが、速度が出ず到着まで後一ヶ月は掛かるとの事です。

 撃沈及び大破破棄された艦艇数は艦隊の32%になります。又、長期の修理期間が必要となる艦艇数が艦隊の50%になるとの見込で、艦隊の残存戦力は2割を割りこみます。」


 「・・・そうか・・・」


 「その事について、王国軍統合参謀本部より非公式に情報がきています。」 黙り込むロア司令に気を使いながらも話を続ける。

 「艦隊を再建する場合、損傷艦の修理や新造艦の編入及び乗員の訓練に1年以上掛かるだろうとの試算が出ているそうです。

 それに、ロア司令の再生治療はそれ以上の期間が必要になるとの見込みからロア様の艦隊は部隊改編で解散し、ロア様を予備役に、残存艦艇を他の艦隊に編入する方向で話が進んでいるとの事です。」


 「・・・そうか・・・」


 「・・・」 さらに表情を暗くするロア司令に何も言えなくなるトクリ中尉。


 その時、「失礼します。」ノックと共に新たな人物が病室に入ってくる。

 「王室典礼局から来ました。執務官のヤト鈴木です。 国王陛下からの内示をお伝えしにきました。」

 「艦隊の解散と私の予備役編入の話なら聞いている。」 ロアがヤト執務官に話す。

 ヤトが一瞬驚いた顔をしながらも、トクリ中尉を見て納得するようにうなずきながら話を続ける。

 「艦隊の解散についてはその通りですが、ロア様については昇進とともに王国海軍長官に任命するとの仰せです。」

 「・・・艦隊を壊滅させた私が昇進だと? 何故だ?」

 「申し訳あませんが、私は理由を聞かされておりません。」

 「ここだけの話として執務官の見解を聞かせてもらいたいが・・・」 ロアがヤト執務官をじっと見つめる。

 「・・・私見ですが、今回の敗戦と撤退により、また人類の生存圏が敵に奪われました。 王宮は、ロア司令が退避中の民間人に1人の被害も出さずに敵艦隊を撃退した英雄として、国内外に広く喧伝し、国民の目を敗戦から逸らそうと考えているのではないかと・・・」

 「そうか、理屈では納得できるが・・・ 感情では納得できないな・・・」 ロアがヤト執務官にきつい目を向ける。

 「ロア様が今回の話を受ければ、亡くなられた方の名誉が守られるだけでなく、報奨金の金額が上がるため、遺族たちへの支援にもなりますが・・・」ヤト執務官が若干目をそらしながらも言ってくる。

 「・・・なるほど、海軍長官の任を受けるしかないようだな。 しかし、なぜ海軍なんだ?」

 「その事ですが、手足の再生治療を行うのに本星にいた方が都合がいいのと、三神公爵家が元々は海軍卿と言われるほどの海軍畑の家系との事から陛下がお決めになりました。 では、一週間後に王宮で国王陛下に謁見となりますので、宜しくお願いします。」ヤト執務官がさらに目をそらしながら言ってくる。

 「・・・すまないがもう一回言ってくれるか?」

 「一週間後に謁見してもらいます。」

 「無茶を言うな、そんなすぐでは義手や義足の用意どころか、退院すらできないだろう。」 ロアが呆れながら言う。

 「王宮からは、車椅子でもいいから早くお連れしろと言われています。」

 「なるほど・・・ 私の名誉より、敗戦から目をそらす事の方が大事と言うことだな。」 前世と違い、この世界では人前で車椅子等で介助を受けるのは、貴族としての誇りに関わるし、公爵家の跡取りとして相応しくないと言い出す輩がいる。

 「色々と問題がありそうだな。」

 「申し訳ありませんが、典礼局としてもできる限りの支援をお約束しますので、よろしくお願いします。」ヤト執務官が頭を下げる。

 ロアが考えながらヤトに話しかける。

 「幸い、右腕は肘下まで残っているので、動かす事が出来ない形だけの義手でも誤魔化す事が可能だろう。

 問題なのは右脚だな、太腿の半ばから下を失ったからな・・・ 形だけの義足では国王の前で膝を着く事が出来ない・・・ やはりアシスト機能付の義足が必要だ。

 少しでも長く義足のリハビリ時間を確保できるように、すぐにでも義足を用意する必要があるな・・・ こちらでも伝手をあたって見るが、典礼局の方でも動いてくれ。」

 「分かりました。 義肢については、典礼局の方で責任を持って用意させていただきます。

 早速、義肢の手配をしてきますのでこれで失礼させていただきます。」 ヤト執務官が敬礼をし、病室の扉に手をかける。

 「それと、謁見についての細かい内容は、決まり次第お知らせします。」 ヤト執務官がせわしなく退室して行く。


 「・・・聞いての通りだ。 医者の許可が取れ次第本星の屋敷に移動する。 事情が事情だからな、医者もダメとは言えないだろう。」 ロアがトクリ中尉に言う。


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