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003 トクリ中尉の報告

トクリ中尉は、扉が閉まるのを待ってから情報端末を取り出しベットへ近づく。

 「司令、報告に来るのが遅くなって申し訳ありません。」

 「かまわない。 ところで怪我のせいか、小惑星帯に入るあたりからの記憶がないのだが・・・ 報告の前に事態の推移を教えてほしい。」


 トクリ中尉は、ロア司令の記憶が無い事に驚きながらも説明を始める。

 「それでは、小惑星帯に入った所から説明します。」

 「ちょっと待ってくれ」 ロアが話に割り込む。

 「病室の外に誰かいたか?」

 「いえ、誰も居ませんでしたが・・・」 トクリ中尉が疑問に思いながらも答える。

 「そうか・・・ どうやら母上がまた護衛を撒いて1人で出歩いているようだな、後で侯爵家に連絡し、病院に来た後そちらに向かったと伝えてくれ。」

 「は、了解しました。」

 「たのむ。 報告の続きをしてくれ。」

 「は、続けます。 小惑星帯に入り各艦が停止し、デコイを直上方向に放出後、艦隊旗艦1隻のみ囮としてデコイに混じって直上方向に進出。 同時に残した艦隊の先任艦長であるハル田中大佐に、敵艦隊が去った後で艦隊を率いて避難船団に合流するよう指示し、艦隊の指揮権を委譲しました。 が、ここで予定外の事態が起きました。

 司令が旗艦1隻のみで囮になる計画が、三神公爵領出身の艦長達を中心に知られていました。 おそらく、三神公爵領出身の旗艦乗員が次期領主であるロア司令を心配して情報をリークしたものと思われます。

 結果、旗艦の後を追って約300隻の艦が司令の盾となるべく集まりました。」

 トクリ中尉がちらりとロア司令を見ると「そうか、しょうのない奴らだな・・・」とつぶやいているのが聞こえてくる。

 「続けます。 敵艦、約14000隻は計画通りにデコイに食いつき味方艦隊から引き離すことに成功しましたが、敵艦隊の攻撃凄まじく、デコイと囮として付いてきた艦艇が次々と撃破され、こちらが壊滅するのも時間の問題となりました。 しかしその時、ハル大佐が残りの艦隊を率いて敵艦隊の後方から攻撃を開始しました。」

 「我が艦隊は、命令違反する奴ばかりだな、軍法会議ものだ。」ロアが苦笑しながら言う。

 「続けます。 敵艦隊はデコイに集中していたため、ハル大佐達の後方からの攻撃に無防備でした。大佐達は、敵艦隊に突入し、至近距離からの全力攻撃を行い一気に敵艦隊を削りました。

 結果、何とか敵艦隊の過半数を撃破し、撤退させる事に成功しました。 しかし・・・」

 トクリ中尉が一瞬言いよどみながらも話を続ける。

 「しかし、こちらの被害も甚大なものになりました。 デコイと一緒に囮になった300隻は、そのほとんどが撃沈され、僅かに残った艦も大破し自力航行可能な艦は1隻もありません。 又、ハル大佐達の被害も大きく、約500隻が撃沈ないし大破、約1200隻が中破、残りの500隻も全艦小破判定です。 無傷の艦は一隻もありません。」

 「そうか、敵を撃退できたはいいが、こちらは壊滅状態だな・・・ それで・・・ 人的被害の方はどうなっている?」

 「はい・・・  本日0800時点での集計では、艦隊総員11万8千256名中、戦死者数3万9千721名、所在不明者3千827名、負傷者(勤務不能重傷者)2万4千341名、現在員(勤務可能軽傷者含む)5万367名となります。」


 「そうか・・・」ロアがそうつぶやき黙り込む。 トクリ中尉もどう声をかければいいか分からず沈黙が続く。


 「貴官が報告に来たという事は、司令部要員はもしかして・・・」 ロアが訊ねると、「はい、私は応急指揮所で作業指示をしていて助かりましたが、我々以外全員が亡くなられました・・・」


 「・・・」

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