027 センサーに感あり
今日の投稿は此処までです。 よろしくお願いします。
【B-17宙域 王国宇宙軍 駆逐艦ケヤキ】
その日、ケヤキは哨戒任務に就いていた。
オペレーターが少し興奮気味に報告してくる。「センサーに感あり。 この目標、アルファと呼称します。 アルファの方位、左75度、仰角5度。 距離25宇宙マイル。 敵味方識別信号なし。」
それを聞いた艦長が直ちにレットアラートを発令させ、全乗員が戦闘配置につく。
「アルファ目標の精密観測を行う。 艦正面をアルファ目標に向けセンサー出力を上げろ!」
少しして、オペレーターが、「アルファ目標、艦艇数20000隻前後と思われます。 識別信号なし。 こちらからの呼びかけに応答ありません。」
「敵だな・・・ 旗艦ランサーズに敵発見の一報を入れろ。 相対距離を維持したまま後進加速開始、この艦隊に張り付くぞ。」
【B-17宙域 王国宇宙軍 主力艦隊集結ポイント】
旗艦ランサーズの司令部区画、当直幕僚がオペレーターから報告を受けていた。
「哨戒任務中のケヤキから、緊急通報『0200 敵艦隊発見。 艦艇数約20000。 敵艦隊進路275度、俯角30度。 速力30宇宙ノット、加減速なし、慣性航行中。 継続観測実施中』 以上です。」
当直幕僚は、「了解」と答え、艦内電話を手に取る。
睡眠中のプロン大将は、艦内電話のコール音で起こされた。
「プロンだ。 どうかしたか?」
「はっ、敵が現れました。 艦艇数、約20000隻。 今の進路、速力だと最接近ポイントは当艦隊の右70度、俯角15度、距離700宇宙ヤード。 最接近時間は27時間後になります。」
「そうか・・・ 時間はあるな・・・ 0600の総員起こしと共にイエローアラートを発令。 移動を開始する。 各艦への通達は任せる。」 ・・・20000隻か、ロア大将の忠告通り、新型艦の別動隊がいそうだな。
「敵艦隊の数が予想より少なすぎる。 別動隊がいる可能性が高い、哨戒中の各艦に敵別動隊発見に全力を尽くすよう指示を出せ。」
【B-17宙域 王国宇宙軍 後方支援ポイント】
ランサーズからの情報で、救難艦隊も俄かに活気づく。
「各艦、出港準備急げ。 主力艦隊は0600に動き出すぞ。 それまでに主力艦隊集結ポイントに移動する。」 ロアからの指示が各艦に出される。
「幕僚長、向こうで乗り換えられるか分からない。 今のうちに分艦隊旗艦に移乗しておいてくれ。」
「はっ、失礼します。」 幕僚長が司令部区画から出ていく。(結局、司令官権限で前線の100隻をロアが指揮し、後方の900隻を幕僚長が指揮することになった。 後方の方が艦数は多いが、分艦隊になる。)
少しして、次席幕僚から、「司令、全艦出港準備よし。」 報告を受け、出港を命じる。
「各艦、主力艦隊後方5宇宙マイル地点に向け、逐次出港せよ。」
ロアの指示のもと、救難艦隊1000隻が動き出した。
救難艦隊が主力艦隊の集結ポイントに着くと、ちょうど主力艦隊が動き出したので、主力艦隊の後方2宇宙マイルまで距離を詰めて続航した。
【B-17宙域 戦闘宙域】
主力艦隊が会敵してから1時間、王国艦隊は優勢に戦いを進めていた。 敵艦隊は既に2割の艦を失い16000隻に減ったのに比べ、王国艦隊の損害は軽微であった。
元々、敵艦隊の2倍の戦力という事もあったが、救難艦隊が素早く損傷艦を後方に下がらせた事も損害を減らす事に繋がった。
(戦闘宙域に突入した救難艦100隻は、船体の左右に『護衛型オプション艦』と『作業型オプション艦』を一隻ずつ連結しており、損傷艦を 救難艦と分離した『作業型オプション艦』の二隻でえい航しながら、同じく分離した『護衛型オプション艦』で防御しながら、押すことで素早く安全な後方に移動させる事が出来た。)
更に1時間が経ち、敵艦隊が11000隻に数が減った時、王国艦隊の動きが変わった。 直接攻撃を止め、ミサイルの迎撃等防御のみ行い、少しづつ後退を始めた。