019 捜索救助活動と招集会議
【救難艦運用研究所 会議室】
会議室には幹部達が集まり、今後の救難艦の行動についての話し合いが行われていた。
ロアは、「すいません。 遅くなりました。」と言いながら会議室に入ってきた。 が、皆ロアが海軍長官の仕事を優先する事が当たり前と思っていたので、誰からも文句は出ない。
「さて、副所長も来ましたところで、一度情報を纏めましょう。」 アリスティア王女が皆に言い、ロアに席に着くよう促す。
「では、当直士官状況説明をお願いします。」
「了解しました。
本日1100に我が王国艦隊と敵艦隊が戦闘を開始。 1315王国艦隊が勝利し、敵艦隊が撤退しました。 王国艦隊は、約10000隻の艦が損傷ないし撃沈されており、まだ詳細は分かっていませんが、1万名程が戦死もしくは行方不明と見られております。 又、負傷者数は3万前後に上ると見られ、人員確認を実施中との事です。
捜索救助活動については、現場の艦隊によって始められています。 が、共に戦闘に参加した『タリヤイツ国』の艦隊については、当方からの捜索救助活動の支援要請を無視し、既に当宙域を離脱しています。
『ROY-X01』(試作救難艦)については、約24時間後に現場宙域に到着予定です。 到着後は、高速性を活かし、拡散を始めている周辺の残骸から捜索、人命救助を優先的に行う予定です。
病院船も現場に向かっていますが、到着は40時間後になる見込みです。 病院船には護衛を兼ねて1個艦隊が同行しており、現場に到着後は捜索救助活動を交代する事になっています。
現場の7個艦隊については、損傷艦が多い3個艦隊が間もなく後退を開始します。 残りの4個艦隊は、交代の1個艦隊が来てから帰投、整備補給作業を行います。」
当直士官の報告が終わり、話し合いが再開される中、ロアから提案がなされた。
「破壊された艦艇についてですが、船体が原型を留めて漂ってている場合、それほど元の場所から動いていませんが、船体が爆散した場合、急速に残骸が周辺に拡散してしまいます。
後日、再捜索が行われる可能性が無いとは言えません。 大きい残骸だけでも、進路速力を記録しておくべきと考えます。」
「分かりました。 私もその提案が有用であると考えます。 『ROY-X01』に各記録を取るように指示を出しましょう。
それに、記録は多い方が良いですよね。 王国軍宇宙艦隊司令部に救難艦運用研究所からの依頼事項として、爆散した残骸の記録を此方に回してもらいましょう。」
その後も会議が続けられ、終わる頃には日が暮れていた。
【ダケタ王国 王宮 大会議室】
先の戦闘から1週間が過ぎ、国王が招集した会議が行われていた。
「さて、今回集まってもらったのは、極めて重大な事実が判明したため、どう対応するかを話し合うためだ。
そして国王の口から驚愕の事実が次々語られる。 敵艦隊の出現頻度の上昇について・・・ 敵戦力の増加の法則・・・ 」
それは、このままでは人類に先が無い事を示していた。
皆が言葉を無くしている中、国王陛下の言葉が続く「先の戦闘で追撃をしなかった理由がこれだ。 敵艦隊を殲滅してしまえば、次は10倍の数で敵が攻めてくる。 そうなれば我々は終わりだ。
それでも今回は、敵を撤退に追い込んだからな。 3ヶ月後に3万隻を超える敵と戦わなければならないだろう。」
場が静まり返る中、会議参加者から発言が・・・ 「成程、追撃しなかった事については納得出来ました。 しかし、このままでは我々に先が無いことに変わりないのでは?」
「そう、このままではだめなのだ。 だからこの会議を開催した・・・ このまま黙って滅びるわけにはいかん、何をしてでも・・・ 我々は人類の未来を守らなければならない!。 皆の知恵を貸してほしい。」
議論が白熱する中、昼飯も取らず会議を続けていたが、疲れが見え始めたため。 1時間程、夕飯・シャワー休憩をとることになった。
その後、会議は再開されたが、終わりが見えずいつの間にか日付が変わっていた。