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015 『クローバー産業』『四つの葉エレクトロニクス』

【海運都市コスカ 救難艦運用研究所 所長執務室】


 ロアは、アリスティア王女と共に当直士官から報告を受けていた。


 「試作救難艦は、本日0800現在、軌道上のB-17宙域直通ゲートの使用順番待ちをしていますが、今回の行動については、王命によるものとして上位の優先権が与えられておりますので、間もなくゲートを通過すると思われます。

 又、王宮からゲート優先使用の他、王宮所属を示す識別コード『ROY』を臨時に付与され、試作救難艦は以後『ROY-X01』呼称されます。 これにより作戦行動終了まで、あらゆる面で優遇措置を受けられる事となります。」


 「了解しました。 以後、『ROY-X01』が作戦宙域に到着するまで口頭での報告は必要ありません。 行動報告のログを業務端末に転送しておいて下さい。」 

 アリスティア王女がそう言うと、「了解しました。」 と言って当直士官が退出していく。


 「ロア様、今のところ順調の様ですが何かありますか?」

 「いえ、私も問題ないと思いますが・・・  今後、広域での活動が増えていくであろう事から、それなりの護衛戦力を用意する必要があるかもしれないですね。」

 「そうすると、軍へ依頼をしなければなりませんね。」

 「それは少々問題が・・・ 救難艦はかなりの高速艦ですので、軍の戦闘艦ではついて行けないでしょう。 別の方法を考える必要が・・・ 造るか?しかし・・・ 」 ロアが考え込むと、アリスティア王女が

 「ロア様、救難艦運用研究所で戦闘艦を造るのですか? それは、名分が立たないかと・・・」


 ロアは、頷きながらも「そうですね。 戦闘艦は不味いですね・・・  オプションで戦闘ユニットを救難艦に付けるか? 否、それをすると艦が重くなって高速という優位性が無くなってしまう・・・  オプションを独立させて無人艦にし、オプションユニットの一つとして扱えば・・・ いけるな。」


 そこまで言ってから、「アーリ・・・  所長、あくまでも救難艦のオプションという事で高速戦闘艦を造りましょう。」

 「フフ、アーリスでいいんですよ・・・ 

 救難艦のオプションですか、あくまでもユニットの1つとしてなら、救難艦運用研究所の案件として認可されるでしょうが、それだと開発予算も建造費用もかなり抑えなければなりません。

 少なくとも本体の救難艦よりも安くしなければなりませんが、そもそもの救難艦が民生技術の転用で安価になっています。

 オプション無人艦の建造は不可能だと思われますが?」 アリスティア王女が否定的な考えを示す。

 「そうですね。 所長の考えに間違いはありません。 が、私に1つ考えがあります。

 今回、先行量産救難艦の建造を依頼した民間造船所の1つに『クローバー産業』という会社がありますが、ここは昔から三神公爵領海軍の軍艦を造ってきた企業で、軌道上に小さいながらもドックを所有し、数は少ないですが宇宙船の建造実績もあります。


 ここに、公爵領海軍がモスボール状態で保管してある旧式軍艦を払い下げます。 宇宙戦闘艦ではなく、海洋戦闘艦ですが、荒波や砲撃戦に耐えるため船体フレームは頑強です。 さらに、ジェネレーターも軍用規格の強力な物を搭載しています。

 推進装置は救難艦用を流用出来ますし、推進装置と対になる慣性制御装置については、積む必要がありません。 無人艦ですので、船内に高Gが発生しても問題無いし、更に生命維持装置も要りません。

 武器についても、ミサイルは発射管を小改修するだけで宇宙用ミサイルの使用が可能です。

 流石に主砲は発射の反動が強すぎて宇宙では使えないので、レーザー砲に搭載替えする必要がありますが、主砲用の弾薬を搭載しなくなる分、船体重量が軽くなります。

 後は、無人制御装置ですが、『四つの葉エレクトロニクス』という会社で対応可能と思われます。

 『四つの葉エレクトロニクス』は、元々『クローバー産業』の電子・通信部門だったのが独立し、『ヤパン皇国』の企業と合併して出来た会社で、『クローバー産業』の一部門だった時から一貫して公爵領海軍の仕事をしてきました。


 お蔭で、今の公爵領海軍の軍艦は、一人でも動かせられる程の自動化がなされています。 今回は、完全無人化を目指しますが、常に救難艦からの遠隔指示が出るので問題無いでしょう。

 但し、電波式だと位置を逆探知されたり、電波妨害で遠隔操作がジャミングされる危険があるので、レーザー光通信方式を採用する事になるでしょうが、この方式だと船の間に障害物(他艦艇など)があると通信が出来ませんので、一度に多数の無人艦運用は難しいでしょう。 しかし、1~3隻位なら問題無く運用できると考えます。」 


 ここまで一気に言い切ると、どうでしょう? と、アリスティア王女に問いかける。

 アリスティア王女が若干引きながら 「えーとですね・・・ ロア様の熱意はもの凄く伝わってきましたけど、改造艦の設計や建造費が実際問題として、本当に安くなるのかという心配が・・・ 新規の艦を造るよりは安いでしょうが、我々が求める水準に達するかどうか・・・  正直なところ、無理だと思うのですが・・・」 アリスティア王女が言いにくそうに答えると。


 ロアが「・・・そういえば今、この部屋に二人きりですね・・・ 大事な話をしても大丈夫そうだ。」と言って近づいてくる。

 王女が硬直し目を大きく見開く中、ロアが王女の耳元に・・・

 「これからのことは絶対に秘密ですよ」 王女が思わず息を呑む。

 「秘密を知っているのは、国王を始めとして極少数ですからね。」?思っていたことと違った内容に王女が混乱する。


 「『クローバー産業』も『四つの葉エレクトロニクス』も表向きのオーナーは別ですが、三神公爵家の持ち会社です。 この事は三神家が落目の貴族を装っているので絶対の秘密となっています。 そんな訳で無理がききますから、艦の設計はこちでやりますし、オプション艦の建造費も原価ギリギリまで安く出来ます。 全て此方に任せてください。」と、ロアが言うと、顔を真っ赤にした王女が執務室から出ていてしまった。


 「?」いくら待ってもアリスティア王女が戻ってこないので、ロアは次の職場へと向かった。



ーーージェネレーターの説明ーーー


 簡単に言えば発電機です。 転生前の世界では船舶の動力はディーゼルエンジン等の内燃機関でしたが、この世界では電気によるモーター駆動が一般常識となっています。


ーーーーーー

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